まもなくこの4月2日にも、半世紀ぶりに月上空に男女4名の宇宙飛行士が到達します。それを担うロケットが「SLS(スペース・ローンチ・システム)」でございます。

といっても、は? なにそれ? な感じが強いですよね。わたくしもそうでございます。SLSとか聞いたことがないなとか、あのZOZOの社長がスペースXのロケットで行くとかいってなかったっけとか、ムニャムニャするのでちょっと書いてみますな。

万博ロスからの~月ロケットSLS

あの大阪・関西万博が終わって4カ月あまりですな。

私もそこそこ関わったし、何回か行って楽しかったので、プチ万博ロスです。アフター万博とかいって、関連するイベントが方々で行われており、気分を慰めているところです。体験できなかったパビリオンの体験をあとからさせてくれるところもあるし、NTTのPerfumeは見られなかったけどさー。

さて、そんな中で「アメリカパビリオンのロケット模型が大阪市立科学館で常設展示になる」というニュースを目にしました。

アメリカパビリオンは私も2回ばかり行きましたが、最初のお兄さん|お姉さんの「いくぜー!」みたいなのと、最後の大型映像のロケット打ち上げシーンばかりが記憶に残り、はて、そんなんあったっけと思ったのですが、しっかり写真に写していました。これかあ。

  • アメリカパビリオンのロケット模型

うむ、じっくりこれは見られるな、大阪に行くときにと思ったのでございます。

SLSが月にもう向かう予定ってマジ?

ところで、そのロケットについて、「いや、もう月に向けて人乗せて打ち上げるんだけど」というニュースがでてきて、ワタワタとなってしまいました。え、あれ将来計画じゃなく、ライブなの。宇宙ニュースをやっていてこれです。こういう時に頼りになるのが鳥嶋真也さんの記事でございます。

アルテミスIIは認識していたけど、そのロケットがSLS(スペース・ローンチ・システム)なのか。いや、「スペースシャトル」の名前もたいがいだったけど(バトミントンのシャトル・コックの意味をこれで覚えた。)、輪をかけてわかりにくい名前ですな。

さて、そのスペース……まあ、SLSですが、史上最強のロケットということでございます。SLSは半世紀前のアポロ計画の月ロケット、サターンV型よりもちょい小さく、しかも2段式ロケット(サターンは3段式)なのですが、スペースシャトルの技術を応用した固体ロケットブースターを追加することで、サターンV型より2割ばかりパワーが上回るのだそうです。

そして、アポロ計画では3人の宇宙飛行士が月へ向かいましたが、今回のSLSを使うアルテミス計画のアルテミスII号(でいいのかな、ミッション名ですが)は4人が向かい、宇宙にいる時間はだいたい同じ(6~12日)です。月着陸はいまのSLSブロック1クルー単独では行わないということなので、いろいろ拡大した内容ということがわかりますな。

打ち上げられるのはオリオン宇宙船+ヨーロッパサービスモジュールのセットで、帰還はオリオン宇宙船のカプセル部分だけだそうです。ちなみに直径は5mで、アポロが3.9mでした。居住スペースはオリオンは9.5m2で、まあ6畳間くらい。アポロはダブルベッドくらい(司令船もいれるともうチョイ広い)ですから、多少広い感じです。ちなみにスペースシャトルは三層構造で30m2ほどで、最大7人が搭乗・活動していました。なお、宇宙では天井も床も壁も同じように使えるので、感覚的には12畳以上なのかもしれませんね。また、ヨーロッパサービスモジュールには動力源のほか、水や酸素の共有システムもあるので、オリオン宇宙船部分で完結するわけでもありません。

  • オリオン宇宙船

    オリオン宇宙船(カプセル)+ヨーロッパサービスモジュール(羽のような太陽電池パネルがついているところ) (C)NASA

うーん、ついつい快適なのかなーとそればかり考えてしまいます。あ、NASAも船内での様子について紹介していますね。ハンモック的なものを使って、結構ゆとりがある感じですな。ちなみに50年前のアポロ宇宙船はこちらの動画がわかりやすいです。

乗り込む4人は多様性

鳥嶋さんの記事にもあるのですが、今回の乗組員4人は、アメリカ国籍3名、カナダ国籍1名(バックアップはそれぞれアメリカとカナダ1名ずつ)です。さらに女性もいますので、初めての月圏に向かう女性とアメリカ人以外が乗り込むことになります。アメリカ人の中でもビクターは有色人種なのでそこも多様性といえばそうですが、取材した人の話だと当人はそこはあまり強調してほしくないなあと思っているらしいです。

いずれにせよ、白人・アメリカ・男性ばかりだったアポロ計画より、宇宙の幅が広くなったことはまちがいないですね。月に向かうオリオン宇宙船をサポートするヨーロッパサービスモジュールもその名の通り、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の開発によるものですし、日本ほか、非常に多くの国が参加しています。

アルテミス計画では、SLSで月着陸まで行くの?

さて、月神アルテミスは、太陽神アポロの双子のきょうだいです。が、プロジェクトとして月の有人着陸を目指したアポロに対し、アルテミスは月の着陸だけでなく月の恒久的な基地の設立、さらに遠い火星などを目指すベースキャンプとしても活躍する月軌道ステーションの設置なども予定されている遠大な計画でございます。

SLSは、この計画のために開発された……というか、いや最初は別のロケット(アレスI)が作られかけたのですが、スペースシャトルの技術を転用して無理くり作った大型ロケットのようでございます。エンジンにしてもRS-25というスペースシャトル(最初に飛んだのは1980年代ですよ)に使うために製作したのを保管していたのを利用する! ということで進められています。ちなみに計画が進めば、さすがに新規製作をする予定ですが、設計は同じですね。これを4基使うことで(スペースシャトルは3基)月まで人間を送り出すパワーを発揮するわけです。

しかし、はたから見るとマジかと思うのですが、安定して動くロケットエンジンの製造は相当難しいらしく、実績があるエンジンを使うのはまあ当然のことのようです。日本のH3ロケットも2段目にはH2Aロケットに開発したエンジンを再利用していますしね。

ということで、ともかく作ったSLSですが、無理やり作ったため、また月ロケットというレアなミッションのため、さらにエンジンは在庫を使うため、2022年の1号機打ち上げの次が2026年の有人ミッションということにあいなりました。そして、費用も莫大なものになったために、これ不経済じゃないの? ということになり、そこにスペースXやらブルーオリジンやらの民間ロケット会社が「うちらにやらせて」という話をしはじめて混迷しています。

最近のニュースではアルテミスIIのあとアルテミスIIIで月着陸を目指す予定が、着陸機が確立しておらず、アルテミスIVで行うことになりました。打ち上げはSLSで行うものの、着陸機は別途打ち上げて月上空で合体し、月におろすという計画になっています。それにはSLSの貨物型が使われる予定だったのですが、どうもSLSで行わないようなんですな。

また、SLSは強化型が予定されていますが、どうもそこまでいかずに終わりそうで、あだ花になりそうでございます。とはいえ、スペースXもまだ月ロケットの成功までは難しそうですし、ブルーオリジンも同様で開発中です。どうなりますことやらというところです。

とりあえず4月最初に予定されている月への半世紀ぶりの人類の往還飛行。注目いたしましょう。