予定を考えるのに欠かせないカレンダー。「月が見えるぞ、月始めだぞ:カレンダエ」という古代ローマの言葉が語源でございます。予定を決めるのに天文現象(新月)が基準になっているわけでございます。現在でも一年の定義は太陽の動きによっており、何年も先の日食が秒単位で予測できたり、人間の一生を遙かに超える億年単位の天体の寿命を推定できたりします。
ということで、精密に予測できることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察または参加できる」宇宙に関わるあれこれを、サクっと紹介する恒例の「宇宙、どうでしょう」。2022年7月からの後半の分をば。
なお、天文現象を一年分紹介している年鑑の類が、毎年刊行されています。本連載の第223回に紹介がございますのでご参照くださいませー。
7月~10月 定番は、やはりわかりやすいから <夏の大三角>をチェック
<夏の大三角>は、「3つの白い1等星」で作る大きな三角形でございます。七夕の星の織り姫&彦星と、はくちょう座のデネブがメンバーですな。
1等星は空全体で5~7個程度なので、そうは間違いません。天文業界では定番のアストロアーツ社のプラネタリウムソフト「ステラナビゲータ」で、7月7日の東京の夜9時をしますとこんな感じです。
これが、9~10月だと頭の真上になって参ります(9月7日の夜9時の様子)。
7月~11月 土星のシーズンがやってくる~ 9月からは木星も
7月まで夜9時の空には何も惑星が見えなかったのですが、7月の下旬から土星が次第に見頃になってきます。そして見やすい時期は半年近く続きます。で、空に見えているドレが土星なのかというと、夏の大三角がわかれば、その南東がわって感じですな。
また、月と並ぶ日がわかりやすくなります。
チャンスは8月12日、9月8日、10月5日、11月2日でございますな。
さらに9月からは木星も加わってきますな。木星は圧倒的な輝きで間違うことはまあないのですが、一応、月と並ぶ日を示しますと、
チャンスは9月11日、10月8日、11月5日、12月2日でございます。
11月8日は月食もあるでよ 午後6時すぎ~午後10時前
11月8日には月食が見られます。夕方の観察しやすい時間にあります。これは近づいたらこの連載で強めにご紹介いたします。楽しみにしておいてくださいませ。
なお、小笠原などをのぞき、同時に天王星が月に隠される天王星食があります。これが重なるのは珍しいです。ただ、天王星の観察には双眼鏡か、できれば小型の望遠鏡が必要ですので、ちょっと上級編ですかね。各地の科学館やプラネタリウム、天文台でオンラインやリアルの観察会も開かれると思いますのでそちらを利用するのもよいかと。
年末には火星の接近
地球のすぐ外側をめぐる惑星、火星。年末に地球に追い越されます。そのさいに接近となります。2年2か月ぶりのことでございます。
最接近は12月1日ですが、そのさいは、深夜0時に南の空に見えます。夜9時だと東から昇ってきたばかりという感じです。どちらかというと、接近のあとの1月や2月の方が観察しやすいですな。
これまた、時期になったらご紹介いたしますねー。
宇宙開発はどうなってるの?
おなじみSpaceFlight Nowから拾ってみましょう。
7月7日 宇宙のミラーボール LARES2衛星が打ち上げ
イタリアの人工衛星「LARES2 Home - Lares Mission」は、全体が鏡ばりという衛星です。光を受けた方向に反射するコーナーレフレクタが四方八方に100近くも取り付けられており、レーザーを衛星に照射することで正確な距離が測定できます。地球の形状を測定をするためのターゲットとして使われる予定です。また精密測定をすることで一般相対性理論の検証にも使わるとされています。
なお、ナンバリングで2とあることからわかるとおり、これはLAGEOSというプロジェクトの衛星のひとつで、4番目にあたります。LARESとしては2つ目ですな。
7月11日ごろ 国際宇宙ステーションへの補給船打ち上げ
なにかと物議を醸している国際宇宙ステーション(ISS)ですが、宇宙飛行士も滞在していますし、補給物資は必要です。これまた色々話題がつきない世界1の資産家、イーロン・マスクのスペースXのファルコンロケットで届けられる予定です。10月にも予定されています。
まあ、この前後にも「どこでもインターネット」を実現する同社のスターリンク衛星がばかすか打ち上げられ続けております。
あ、そうそう、空飛ぶイカめしこと、スターシップの地球一周フライトも予定されていますな。
7月、10月 中国の宇宙ステーション「天宮」のパーツの打ち上げ
いまや、アメリカと並ぶ宇宙大国、中国も独自の宇宙ステーションを建造中で、そのパーツの2つ目と3つ目が打ち上げられます。低軌道に22トンの物体を打ち上げられる長征5Bロケットが使われます。
インドが小型ロケットSSLVのテスト
インドは火星まで宇宙機を飛ばせる実力を持っていますが、小型のロケットSSLVのテストも行う予定です。目的にあわせてロケットを選択できるようにするということですな。
8月15日 国際宇宙ステーション補給機シグナス打ち上げ
こちらはノースロップ・グラマン社のアンタレスロケットによる打ち上げです。
8月下旬 月への第一歩 アルテミス1打ち上げ
50年ぶりの有人月探査を目指す、アメリカのアルテミス計画で巨大ロケットのスペースローンチシステム(SLS)を使い、有人宇宙機のオリオンの地球周回テストを行います(無人でのテスト)。アルテミス1という名称で呼ばれますが、このアルテミスがそのうち月に人間を送りとどけることになります。2024年に月周回、2026年ごろから月軌道に宇宙ステーションゲートウェイを建設します。
なお、アルテミスはギリシア神話の狩猟と月の女神の名前ですが、最初の有人月プロジェクトのアポロ(太陽の神)との対になった名称でございますな。なお、月の女神はローマ神話ではダイアナとなります。なんかそんなブランドありましたなー。
9月1日、11月 クルードラゴンの国際宇宙ステーションへの旅
スペースXの有人宇宙機、クルードラゴンが国際宇宙ステーションに向かいます。もう安定していますなー。イーロン・マスクおそるべし。
9月20日 小惑星探査機「Psyche(プシケー)」打ち上げ
多数の小惑星を順に巡るNASAの探査機「Psyche Asteroid Mission」でございます。開発は、NASAとなにかと話題のリモートセンシング衛星のマクサー社ですな。
9月21日 ロシアのソユーズ宇宙船 国際宇宙ステーションへ
なんだかんだいっても、宇宙ではロシアと日本と欧米との協力は続いています。10月26日には貨物船のプログレスの打ち上げが予定されています。
11月15日 NASAの地球観測衛星「SWOT」打ち上げ
NASAとフランスとの共同事業で、地球上の水の分布を調べます
年末 ケンタウルスロケット 月面へ
米国のユナイテッド・ローンチ・アライアンスのバルカン・ケンタウルスロケットが、月面にアストロボティックのペレグリン着陸機を運びます。無人機ですが、民間による月面着陸になりますな。
忘れてはいけない日本の月面着陸機
X線分光撮像衛星(XRISM)の相乗りの形で日本の月面着陸機「SLIM」も2022年度中の打ち上げが予定されています。SLIMに搭載される変形月面ロボット(LEV-2、愛称:SORA-Q)は、2022年末に打ち上げが予定されているispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1にも同型機が搭載されますな。詳細が発表されたらおっかけますねー。
ということで、今年後半も宇宙を楽しんで参りましょー。