進化したEMIBとFoverosを投入

Intel Foundryは、前工程であるウェハプロセス技術だけでなく、後工程のパッケージ技術も同時に顧客に提供することにしており、先端プロセスだけではなくパッケージ技術でもライバルに差異化を図ろうとしている。

すでに以前から量産現場で使われてきたパッケージング技術として2次元構成の「FCBGA (Flip Chip Ball Grid Array)」に加えて先端パッケージングとして2.5次元の 「EMIB (Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)」、さらには3次元チップレット技術となる「Foveros-S (従来型のFoverosを改称)」が用意されている。

  • Intelが活用している既存の量産向け先端パッケージング技術

    Intelが活用している既存の量産向け先端パッケージング技術 (出所:Intel Foundry Direct Connectイベントで著者撮影、以下すべて)

将来の高帯域幅メモリのニーズに対応するために、これらの技術に新たに次世代の先端パッケジング技術が今回、新たに追加された。

  • 新たに追加された先端パッケージング技術

    新たに追加された先端パッケージング技術 (従来技術は薄い色で図示)

その1つがEMIBにTSV(Through Silicon Via)とMIM(Matal Insulator Metal)を付加した「EMIB-T」となる。TSVを採用することで、電力を直接チップに供給できるようになり、電気特性を改善して、複数のチップを接続することが可能になる。HBMやUCIeなどをチップレットで構成するのに適しているという。

  • TSVとMIMを採用したEMIB-Tの模式図

    TSVとMIMを採用したEMIB-Tの模式図

Foveroにも新たに2つのバリエーション(「Foveros-R」と「Foveros-B」)が追加された。これにより効率的で柔軟なオプションが顧客に提供されるようになる。2027年に量産開始される予定だという。

Foveros-RはRDLインターポーザーを採用した廉価版、Foveros-Bは、SiブリッジやIVR(Integrated Voltage Regulator)を追加した高付加価値版という位置づけである。なお従来のEMIBとFoverosは、これらの新たなバリエーションと区別するために、今後はそれぞれ「EMIB-M」、「Foveros-S」と改称されるとする。

Intel Foundryでは、さらなる将来の技術として5μmのバンプピッチを実現した「Foveros Direct」も投入する。Foveros Direct(3Dスタッキング) および組み込みマルチダイ相互接続ブリッジング(2.5Dブリッジング)を介して接続されたIntel 18A-PT上にIntel 14Aを用いるなど、システムレベルの統合を提供することを意図している。

  • 従来のFoverosに新たに2つのバリエーションが追加される

    従来のFoverosに新たに2つのバリエーションであるFoberos-RとFoberos-Bが2027年より追加される予定

光学回路も同一パッケージに実装

Intelは以前からシリコンフォト二クス(日本では光電融合と呼ばれることが多い)の開発に注力してきており、2024年には、Co-packaged Optics(電子回路チップと光学回路チップを同一パッケージに実装)を実用化したが、2027年の3次元フォトニクス実装に向けて、ショアライン帯域幅密度(二次元的な配線基板に境界線を定義し、そこを通過可能な全信号容量を境界線長で割った指標)を増加させていくことを計画している。

  • 集積電子回路チップと光学回路チップの同一パッケージ実装の変遷

    集積電子回路チップと光学回路チップの同一パッケージ実装の変遷

Intel上級副社長 兼 ファウンドリサービス事業本部長のケビン・オバックレー氏は、先端ウェハ製造だけではなく先端パッケージング分野でもエコシステムを充実させて、顧客へのサービスに徹すると述べており、EDA、UCle、HBM IP、EMIB基板およびバンプ、商用ATE(自動試験装置)、メモリ分野のエコシステムパートナーの名前を明らかにした。日本企業としては、イビデン、新光電気、アドバンテストの名前が挙がっている。

  • 先端パッケージング分野のエコシステムパートナー

    先端パッケージング分野のエコシステムパートナー

先端パッケージングのみの提供も

Intelは、ファウンドリ事業への本格参入に際して、自社の保有する各種の先端パッケージ技術の提供を、Intel Foundryに前工程の製造委託をしていない顧客にも提供するとしている。

このため、ほかのファウンドリやIDMで生産したチップをIntel Foundryに後工程だけ生産委託してIntel独自の先端パッケージ技術を利用して製品の組立を行なうことが可能になる。これはIntelがOSATサービスにも参入するということを意味する。

オバックレー氏は「当初はOSATサービスは必要だとは思っていなかった。しかし、顧客と話しているうちに、そうしたニーズが強いことが分かってきた。そのため、後工程だけの顧客を受け入れる決断をした。ファウンドリ事業はサービス業であり、サービス業は顧客が求めることを提供するビジネスだ」と述べ、後工程を開放するのは、Intel Foundryが顧客の声に耳を傾けて要望に応える「カスタマファースト」を新たな重要指針にしているからであることを強調した。

他社で製造したチップもIntel独自のEMIBやFoverosを組み合わせることで、チップレット技術を駆使し、アクセラレーターやGPUなど、顧客の希望通りの集積システムを構築することができるとオバックレー氏は述べている。

アセンブリをAmkorに委託することも可能

後工程サービスを提供する一方で、IntelはOSATであるAmkor Technologyとの提携も発表している。これにより、Intel Foundryにウェハの製造委託した顧客がAmkorの後工程技術を活用して最先端パッケージを構築する選択肢を用意されたこととなる。

  • Amkor CEOのKevin Engel氏

    IntelとAmkor Technologyとの後工程についての提携で登壇したAmkor CEOのKevin Engel氏

成熟プロセスの拡充によるポートフォリオ拡充も推進

Intel Foundryのビジネスというと、Intel 18AやEMIB、Foverosのような先端プロセスや先端パッケージング技術に注力するような印象だが、実は、ファウンドリビジネスを拡大させることを目指したポートフォリオの拡充も図られている。

特に成熟プロセスについての取り組みとしては、Intel Foundry初となる16nmプロセス(Intel 16)は、すでにテープアウトが完了し、アリゾナ工場のレガシーラインでの製造が開始されている。また、12nmプロセスについては、UMCと共同でプラットフォームの開発を行っている。モバイルや通信インフラ、ネットワーキングなどの高成長市場からの顧客獲得を狙った取り組みで、すでに主要顧客との連携が進んでいるとのことで、こちらは2026年より量産が開始される予定だという。この取り組みにより、「Intelの米国での生産能力とUMCの成熟ノードでの豊富なファウンドリとしての経験を統合し、プロセスポートフォリオの拡充が可能になり、地理的に多様なサプライチェーンへの顧客のアクセスが広がる」とIntelでは説明している。

なお、同イベントでは四つ足歩行ロボット(愛称「Chip」)が披露された。Intelでは、半導体製造現場における半導体製造装置の付帯設備の保守点検に、多種のセンサを搭載したこのロボットを活用するとしている。イベント会場では、CHIPが歩き回って製造装置の付帯設備に搭載されているモーターの異常な過熱状況を検出し管理部署に連絡する実演が行われてた。工場の安全確保と人件費削減に貢献することが期待されている。なお、ロボットの胴体には、IntelとロボットメーカーであるBoston Dynamicsのロゴが入っていることが確認された。

  • Intelの半導体製造工場で床下の付帯設備の保守点検に活躍する4足歩行ロボット

    Intelの半導体製造工場で床下の付帯設備の保守点検に活躍する4足歩行ロボット