情報収集のために記事を読んだり、アクションプランを作るために議事録を確認したり、プレゼン資料に流用するために英文資料を翻訳する、といった作業は日常的に発生しますが、時間を大きく取られてしまうのがネックです。簡潔に要点だけ把握できるようになれば、大きな時短になります。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
ChatGPTを活用して要約する
そんな時に活躍してくれるのがChatGPT。こちらから提示する情報を瞬時に理解し、要約してくれます。現在は、利用できるトークン数に制限があるので、何十ページにもなる文書の要約はできませんが、Web記事くらいであればサクッとまとめてくれます。
では、まず基本技から。記事を要約してもらいたい場合、「以下の原稿を要約してください」と入力し、その下に記事をコピペします。今回は、本連載第1回の原稿を要約してもらいました。
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プロンプト
以下の原稿を要約してください。
柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」~……。
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出力
「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」は、ITライターの柳谷智宣による連載記事であり、第1回の記事では~……。
800文字でしっかりと要約してくれたのですが、それでも長い、ということもあるでしょう。そんな時は、短く要約してもらうようにお願いしましょう。
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プロンプト
もう少し簡潔にまとめてください
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出力
「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」は、ITライター柳谷智宣による連載記事であり、第1回の記事では「ChatGPT」についての基本を紹介しています。ChatGPTはチャット型のテキスト生成AIであり、大量のテキストデータを学習して文脈を理解する能力があると説明されています。プロンプト作成のコツや注意点、有料プランの利用方法なども解説されています。記事の結びでは、ChatGPTのスキルを身に着ける重要性が強調されています。
簡潔に要約してくれました。最初から「以下の原稿を簡潔に要約してください」というプロンプトにするのもありでしょう。もし、原稿の内容が難しいようであれば、「高校生にもわかるように要約してください」と指示すると噛み砕いてくれます。
次は、Web記事のURLを直接指定して、ChatGPTに要約してもらいましょう。有料のChatGPT Plusユーザーは「Browse with Bing」機能を利用でき、Bing検索をしたり、リアルタイムにWebサイトを読み込んでもらうことができるのです。
ChatGPT Plusの上部にある「GPT-4」をクリックし、「Browse with Bing」にチェックを入れ、プロンプトを入力しましょう。
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プロンプト
https://news.mynavi.jp/techplus/article/chatgpt_prompt-2/の記事を簡潔に要約してください
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出力
この記事は、AIモデルのChatGPTが資料作成にどのように使用できるか、そしてそれがどのように問題を引き起こす可能性があるかについて説明しています。アメリカの弁護士がChatGPTを使って民事裁判の資料を作成したところ、その内容には虚偽が多数含まれており、今後この行為に対する懲戒処分の有無が審議されることになったと述べています そのうえで、ChatGPTの出力をそのまま使うと、誤情報が混じる可能性があるため、注意が必要であると指摘しています。
それでも、記事はChatGPTが有用なツールであると認識しています。特に、新しい資料やプレゼンテーションの初期ドラフト(たたき台)を作る際には、ChatGPTは時間を大幅に節約でき、予想外の視点を提供することで資料のクオリティを向上させる可能性があると述べています。
問題なく、Webページを読み込み、原稿を要約してくれました。ChatGPTは最新情報を網羅していないのがネックですが、Webにアクセスできる機能を搭載したことで、可能性がさらに広がります。
海外のWebページもChatGPTにまとめてもらいましょう。筆者は普段、海外のWebサイトで情報収集しているのですが、翻訳プラグインだときちんと翻訳できないことが多く、翻訳サイトにコピー&ペーストして翻訳しています。しかし、直訳だと読みづらく、文章量が多いと手間がかかってしまいます。
そんな時もURLを指定し、簡潔に要約してとお願いするだけで読みやすくしてくれます。
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プロンプト
https://www.ic3.gov/Media/Y2023/PSA230609の内容を簡潔に要約してください。
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出力
この公共サービスアナウンスメントは、ビジネスメール妨害(BEC)という詐欺について更新し、説明しています。BECは~……。
もはや海外のサイトだからとしり込みすることなく、最新の情報収集が可能になるのです。
ChatGPTに文字起こしから議事録を作成してもらう
最近、AI文字起こしツールの性能向上が目覚ましく、会議などを録音した音声データからテキストデータを作成できるようになっています。
とは言え、話し言葉は元より正確ではありませんし「えー」とか「あー」といったバリも含まれています。そのため、最終的には人の手でバリ取りをして修正し、議事録のフォーマットに合わせて仕上げる必要がありました。そう、これまでは。ChatGPTなら、この仕上げの作業も代行してくれます。
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プロンプト
以下の文字起こしテキストを整形してください。日本語も修正し、ばり取りもしてください。読みやすく改行も入れてください。
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出力
皆さん、お疲れ様です。今日は7月の定例会議です。アジェンダを共有し、進めていきましょう。
まず最初の項目は、前回の会議の議事録の確認です。皆さん、議事録は事前に確認していただけましたか?
はい、確認しました。特に修正はありません。
私も特に問題ありません。
とても読みやすく整形できたので、そこから議事録を作ってもらいます。フォーマットは自社のスタイルに合わせて調整しましょう。具体的に、数字や記号で区切って指示するのがコツです。
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プロンプト
整形されたテキストから、以下のフォーマットに従って、議事録を作成してください。
1.会議名
2.議題
議題を箇条書きする
3.内容
議論の内容を箇条書きする
4.決定事項
決定事項を箇条書きする -
出力
【議事録】
1.会議名
7月の定例会議
2.議題
・前回の会議の議事録の確認
・進行中のプロジェクトの進捗報告
・新しいプロジェクトの提案
・次回の会議の日程とアジェンダの確定
3.内容
・進行中のプロジェクトの進捗報告
五反田店のリニューアルが完了
看板の作成が進行中
防音レベルの低さに課題あり
・新しいプロジェクトの提案
夏に向けた特別なプロジェクトの提案
当社独自のカレンダーを作成し、お得意様に配布
AIを活用して写真を自動生成するアイデア
課題として品質とバリエーションの確保があり
プリントや製作のスケジュールも検討
4.決定事項
・進行中のプロジェクト
防音工事や窓の二重サッシなどの解決策を検討
見積もりを2つ取得
いかがでしょうか。まったく問題のない議事録ですね。唯一、「課題として品質とバリエーションの確保があり」のところの日本語が変ですが、許容範囲内でしょう。
人間でも、文字起こしのテキストからこの議事録を作るのはなかなか難しいのではないでしょうか。ChatGPTなら瞬時に無料で作ってくれるのです。
OpenAIは音声認識モデル「Whisper API」を提供しており、音声の文字起こしが可能です。複数のSaaS(Software as a Service)を連携させるiPaas(Integration Platform as a Service)サービス「Make」などを利用すると、非エンジニアでも議事録の自動システムを簡単に作ることができます。
筆者の会社ではグループウェアとしてkintoneを導入しているのですが、ここにZoom会議の録音データ(.m4a)ファイルをアップロードすると、「Whisper」で自動的に文字起こしをして、ChatGPTで議事録を作成し、kintoneに登録してくれるシステムを構築しています。まだ、テスト運用ですが、問題なく稼働しています。
1回のプロンプトで入力しきれない長文を要約してもらう方法
要約してもらいたい文章が長すぎて、ChatGPTに入力するとエラーになる場合、分割する手があります。分割した文章を入力して記憶させ、残りの文章を入力していく、というテクニックです。試しに、本連載の1回目と2回目の本文、約7000文字を読み込ませてみましょう。
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プロンプト
以下の原稿を記憶したら、はいとだけ答えてください。
以下、繰り返し。
2回とも問題なく「はい」と答えたので、1回目の記事の内容を尋ねたところ、問題なく回答してくれました。そこで、「1回目と2回目の記事をまとめて簡潔に要約してください」と入力してみると、きちんと要約できました。
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プロンプト
1回目と2回目の記事をまとめて簡潔に要約してください。
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出力
1回目の記事では、「ChatGPTを活用したプレゼン資料の作成について」が紹介されています。プレゼン資料の作成は時間のかかる作業であり、ChatGPTを利用することで効率化できるが、出力はファクトチェックや改変が必要であることが強調されています。
2回目の記事では、「ChatGPTでプレゼン資料のたたき台を作る方法」が紹介されています。プレゼン資料のたたき台作成~……。
分割は素晴らしいテクニックに見えますが、実は落とし穴があります。分割できるからと言って、どんどん覚えさせようとすると、最初に入力した文章を忘れてしまうのです。そうすると、要約も無茶苦茶になってしまいます。あまり、過信しないようにしましょう。
そして、もう1つ。1回目と2回目の原稿を一発で入力し、要約してもらうテクニックがあります。
それは、英語にすることです。約7000文字の原稿を「DeepL翻訳ツール」で翻訳したところ、1万6708文字になりました。しかし、英語は日本語よりも2~3倍多く入力できるので、分割せずとも要約してくれるのです。
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プロンプト
以下の原稿を簡潔に要約してください
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出力
「ChatGPT」は、OpenAIが開発した大規模な言語モデルであり、テキストによる指示を入力することで対話型のテキスト生成を行います。プロンプトとは、子供が入力するテキストのことであり、文章やキーワードのリストなどが使われます。ChatGPTは無料プランでも利用可能であり、有料プランも低価格ですが、入力した情報はAIのトレーニングに使用されることに注意が必要です。プロンプトをトレーニングに使用しないように希望する場合は、OpenAIの「User Content Opt Out Request」ページを利用してリクエストを送信することができます。
プロンプトを作成する際には~……。
問題なく要約できました。ChatGPTは英語で利用すると精度もスピードも扱える文章量も向上するのです。
「プロンプトとは、子供が入力するテキスト」と出力されたので、精度はイマイチかな、と思いきや筆者の元原稿が「子の入力するテキストのことをプロンプトと呼びます」と誤字になっていたためでした。
英語に正確に翻訳されたため、このような内容になったのでしょう。ちなみに、ChatGPTは誤字脱字も理解してくれるので、日本語で入力する場合は、このような要約ミスは起きません。
以上が、ChatGPTに記事・議事録・音声を要約してもらう方法となります。要約はChatGPTが得意とするところなので、ぜひビジネスシーンで使い倒してください。