今回はChatGPTで言葉を扱う、というテーマでプロンプトを考えてみましょう。新しい概念などの言葉の意味を知る、英語を学びなおす、新語を生み出す、という言葉に関わる3テーマについて紹介します。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

新しい概念やキーワードを勉強するならChatGPTが便利

ChatGPTを検索エンジンのように使う際は、ピントが外れていたり、間違った内容が混じることがあるので注意が必要です。

ただし、大規模言語モデルではよくあることなので、それをもってChatGPTを馬鹿にしたりしてはいけません。何か、ピンポイントで知りたいことがあるなら、検索エンジンを使いましょう。

とはいえ、それでも調べものをする際、ChatGPTを使った方が便利なこともあります。例えば、リサーチ&アドバイザリー業務を手掛けるガートナーは未来のトレンドになるような単語を発表しています。

しかし、あまりに先進的な単語だと、そもそも日本の記事が少なかったり、具体的なソリューションが世に出ていなかったりして、検索してもわかりやすい解説記事が見つからないことがあります。

そんな時は、ChatGPTに「○○について、詳細かつ高校生にもわかるように解説してください」と入力します。

長めの文章で紹介して欲しい時は「詳細に」噛み砕いて教えて欲しい時は「高校生にもわかりやすいように」とプロンプトを追加します。例えば、ここではガートナーが2023年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンドとして公開した「アダプティブAIシステム」を入力してみましょう。

  • プロンプト

    アダプティブAIシステムについて、詳細かつ高校生にもわかるように解説してください。

  • 出力

    アダプティブAIシステムは、人工知能(AI)の一種であり、その動作やパフォーマンスを絶えず変化させながら学習し、自己改善する能力を持っています。このシステムは、データと経験から知識を獲得し、その知識を使用して問題を解決したり、タスクを実行したりすることができます。
    アダプティブAIシステムは、まず~……。

としっかり解説してくれました。もし、これでも理解できなければ、小学生にもわかるように、とプロンプトを変更しましょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    アダプティブAI関する回答

  • プロンプト

    アダプティブAIシステムについて、詳細かつ小学生にもわかるように解説してください。

  • 出力

    例えば、システムに「2+2はいくつ?」と尋ねると、最初は正しい答えを知りません。しかし、ユーザーが「4」と答えると、システムはその情報を使って自分の知識を更新します。次に同じ質問をすると、システムは「2+2は4です」と正しい答えを返すことができるようになります。

と、さらに噛み砕いて解説してくれます。小学生向けを読んでから高校生向けを読むとさらに理解が深まります。

次に、同じトレンドで紹介されていた「AI Trism」を解説してもらおうと思ったら、ChatGPTに情報がありませんでした。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    最新の単語に関してはChatGPTに情報がないこともあります

そんな時は、大本であるガートナーが公開している記事をプラグインで読み込ませて、その後に解説してもらいましょう。ChatGPTの有料プランではGPT-4のプラグイン機能が利用できます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    GPT-4のメニューから「Browse with Bing」にチェックし、プロンプトを入力します

  • プロンプト

    https://www.gartner.com/en/articles/what-it-takes-to-make-ai-safe-and-effective
    上記を読んで、AI Trismについて、詳細かつ高校生にもわかるように解説してください。

  • 出力

    AI Trismとは、人工知能(AI)モデルのガバナンス、信頼性、公正性、信頼性、頑健性、効率性、およびプライバシーをサポートするフレームワークです。モデルの解釈可能性に対するソリューション、技術、およびプロセスを含みます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    URLを読み込み、回答してくれました

ちょっと直訳を要約しただけ、という感じですが、元の難解な記事を読むよりはずっとわかりやすくなっています。

最高の英会話教師に無制限に気兼ねせず無料で教えてもらえる

ChatGPTは多くの言語に対応しているので、外国語の学習にも活用できます。ある程度、学習が進んでいるなら、ChatGPTにその言語で話しかけて会話するだけでも勉強になります。

そこまでのレベルでない人は、ChatGPTに教師となってもらいましょう。英会話の教師として、こちらが入力したプロンプトを分析し、修正してもらい、修正理由も教えてもらいます。その上で会話を続けるようにプロンプトを作ってみましょう。

  • プロンプト

    あなたは英会話の教師です。以下のフォーマットに従って、私と英会話をしてください。余計なまとめなどは不要です。必ずフォーマットに従ってください。
    ###フォーマット
    修正した文章:私の文章をアメリカ人が話すような英文に修正してください。
    修正箇所の説明:簡潔に修正した理由を教えてください。
    あなたの返答:あなたの返答を簡潔に書いてください。
    では始めましょう。Hello!

  • 出力

    修正した文章:Hello!
    修正箇所の説明:元の文章は正しい英語ですので修正は必要ありません。
    あなたの返答:Hi! How can I assist you today?

  • プロンプト

    Today we're going to stock up on meat for tomorrow's barbecue.

  • 出力

    修正した文章:Today we're going to buy plenty of meat for tomorrow's barbecue.
    修正箇所の説明:"stock up on"は日常会話ではあまり使用されない表現であり、代わりに一般的な表現の"buy plenty of"を使いました。
    あなたの返答:That sounds great! What kind of meat are you planning to get for the barbecue?

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    ChatGPTに英語教師になってもらいましょう

このように、会話をしながら自然な文章を学ぶことができます。超手軽な割に、大きな学習効果があるのでおすすめです。

スピーキングも練習するなら、Chromeの拡張機能を活用しましょう。「Voice Control for ChatGPT」をインストールすると、ChatGPTに音声でプロンプトを入力できます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    「Voice Control for ChatGPT」をインストールすれば、音声でやり取りできます

ちなみに、Voice Control for ChatGPTは出力を読み上げる機能も搭載しているのですが、今回のように修正や指摘もしてもらう際は、面倒なのでオフにするとよいでしょう。

スピーキングのスキルが上がり、修正の指摘が不要になったら、読み上げ機能をオンにして、直接ChatGPTと英会話を楽しみましょう。

新しい言葉も生み出してバズらせられるか?

生成AIは事実と異なる内容を出力することがありますが、加えて、架空の言葉を出力することもあります。「幻覚症状(hallucination)」と呼ばれる現象で、今その原因や対策を探るべく研究が進められています。

筆者も経営する飲食店のプレスリリースを作成する際、ChatGPTで叩き台を作っていたら「尊味」という単語が出てきて驚きました。知らない単語だったので調べたのですが、ヒットしません。生成AIが幻覚により作り出した新語だったようです。

とはいえ、仕入れ値150万円以上のお酒の試飲イベントの記事だったので、尊びながら味わうという意味なら文脈が通りそうな感触もあります。とても興味深い現象です。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    ChatGPTにプレスリリースのタイトルを作ってもらっていたところ、幻覚症状が出ました

時々、新しい言葉が登場してバズっていると、プロモーションに使えそうだな、と羨ましく見ています。生成AIの幻覚症状は狙って出せるものでもないので、今回はChatGPTに新語を考えてもらいましょう。まずは直球のプロンプトを入力してみましょう。

  • プロンプト

    新語を10個作ってください。BAR文化が好きで、ウイスキーを何よりも愛しており、マナーよく飲む人たちのことを何と呼びましょう?

  • 出力

    ウイスキーノート(Whiskeynote)
    ドリンクマイエスケープDrink My Escape)
    ブーツアンドボトルBoots and Bottle)
    スモークノーズ(Smokenose)
    バーレジェンド(Barlegend)
    ブレンドマエストロ(Blendmaestro)
    シングルサヴァイバー(Singlesurvivor)
    ラウンジリバー(Lounge River)
    バーブレイントラベラー(Barbrainer)
    ウイスキーオデッセイ(Whiskeyodyssey)

格好はいいのですが、ちょっと面白みがありません。そこで、いろいろと試してみました。試行錯誤する際は、毎回本文を書き換えるより、基本的な指示と条件を分けて記載すると、トライ&エラーの手間が省けます。

  • プロンプト

    ウイスキーを何よりも愛している人たちのことを表す1単語の新語を5個創作してください。以下の条件も考慮してください。
    ###条件
    BAR文化が大好きで
    キャッチーで、呼びやすい言葉
    完全な造語でOK
    韻を踏むダジャレでもOK
    モルトやuisce beatha(ウィシュケ・ベァハ)も使ってOK
    火酒、ウヰスキー、ウ井スキーも使ってOK

  • 出力

    面白いリクエストですね。以下にウイスキー愛好家を表す新たな単語を考案します。
    1.モルトマニアックス (Maltmaniacs)
    「モルト」が好きな人を指す言葉で、「マニアックス」は熱狂的な人々を表します。
    2.ウイスキッション(Whiskission)
    ウイスキーへの情熱(passion)を示す新たな造語で、「ウイスキー(whisky)」と「情熱(passion)」の組み合わせから生まれた言葉です。
    3.ファイヤーフラスコフリーク(Fireflaskfreak)
    「火酒」(ウイスキーの意)と「フラスコ」(ウイスキーが入っている可能性のある容器)、そして「フリーク」(変わったことや特定のことに夢中になる人)を組み合わせた言葉です。
    4.ウィシュケヴォーター(Wishkevoter)
    ウィシュケ・ベァハ(uisce beatha)と、誰かや何かに一生懸命になる人を表す「voter」を組み合わせた言葉です。
    5.バースピリティスト(Barspiritist)
    「バー文化」(Bar)と「スピリット」(Spirit)、「エンスージアスト」(Enthusiast)を組み合わせて作った言葉で、バー文化とウイスキースピリットに魅了された人々を指します。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第4回

    毎回本文を書き換えるより、基本的な指示と条件を分けて記載すると、トライ&エラーの手間が省ける

1番はありがちですが、残りはどれもいい感じです。2番は期せずして「好き」まで入っていますね。「4. ウィシュケヴォーター (Wishkevoter)」や「5. バースピリティスト (Barspiritist)」はしれっと、自社のSNSやホームページに記載してみようかと思います。

以上が、言葉の意味を知る、言語を学ぶ、新語を生み出す方法となります。ChatGPTはさまざまな使い方ができる、という一端をご覧いただけましたでしょうか。ぜひ、ビジネスにプライベートに使い倒しましょう。