いま、世間をにぎわせているOpenAIが提供する対話型AI「ChatGPT」。本連載ではビジネスでも活用できる工夫を凝らしたChatGPTのクリエイティブなプロンプトついて紹介していきます。

「ChatGPT」とは

チャット型のテキスト生成AIのChatGPTが話題になっています。筆者は、どっぷりとChatGPT漬けの生活を送っていますが、これは間違いなく革命的なツールです。インターネットが出た時も、スマホが出た時も、私たちの生活は激変しましたが、生成AIは良くも悪くもそのインパクトを超えると思います。

ChatGPTをビジネスで使い倒す前に、まずはChatGPTとは何か、を理解しておきましょう。ChatGPTはOpenAIが開発した大規模言語モデルです。「GPT」は「Generative Pre-trained Transformer」で、例えば「GPT3」は45TBのテキストデータを1750億個のパラメータで学習しています。

言葉と言葉のつながり方を学習しており、決して単語の意味を理解しているわけではありません。しかし、「犬も歩けば」に続く言葉でもっとも確率が高い「棒に当たる」を出力するので、あたかも文脈を理解しているように感じます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    「犬も歩けば」に続く言葉を「ChatGPT」に聞いてみました

ChatGPTは膨大な情報を学習していますが、そのデータを検索して出力するわけではありません。そのため、普通にミスします。ここは最初に肝に銘じておく必要があります。

現在の生成AIは、自分が望む完全なアウトプットを自動で出してくるものではありません。的確に指示を出し、トライ&エラーを繰り返しながら、ニーズに沿った出力を目指すのです。

そのため、間違った回答を鬼の首を取ったようにSNSなどで晒すのは、そもそも使い方が間違っているので注意しましょう。電子レンジで卵を温めて爆発させているようなものです。

ChatGPTはチャットUIなので、テキストで指示を入力します。この入力するテキストのことをプロンプトと呼びます。文章でもいいですし、キーワードを並べてもよく、日本語も通じます。

気になる利用料金はなんと無料で、有料プランでも月額20ドルという安さです。しかし、入力した情報はAIのトレーニングに使われます。

気にしないという人は問題ありませんが、重要情報を入力するビジネスユースだと使いづらいことでしょう。そんな時は、OpenAIの「User Content Opt Out Request」ページから申請することで、プロンプトを学習に使わないようにできます。

メールアドレスと、Organization ID、Organization nameを入力して「送信」をクリックしましょう。Organization IDとOrganization nameは自分のアカウントの設定画面で確認できます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    ビジネスで使うならオプトアウトしておくと安心です

無料プランでは「GPT-3.5」が利用できます。2022年に公開された大規模言語モデルで、パラメータ数は3550億個になりました。この時点でいい感じの会話はできますが、やはりちょっと抜けているところもあります。有料プランでは「GPT-4」が利用できます。パラメータ数は非公開ですが、格段に賢くなっており、資格試験などを突破するレベルになっています。

しかし、有料プランを契約しても「GPT-4」モードは3時間に25メッセージまでしか利用できません。そこで、基本的に使い放題の「GPT-3.5」を利用し、望む答えが得られなかったときに「GPT-4」を使うようにするといいでしょう。ちなみに筆者は、常に「GPT-4」を使い倒したいので、OpenAIのAPIを利用し、従量課金制で利用しています。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    ChatGPTの有料プランは月額20ドルとなっています

望む回答を得るためのプロンプト作成のコツ

「ChatGPT」をビジネスに活用できるかどうかは、プロンプト次第です。プロンプトには正解はなく、いろいろなアプローチ方法があります。正面から人間に語り掛けるように話す手もあります。本連載では、ビジネスシーンごとに必要な情報を「ChatGPT」で生成するプロンプトとその作り方、考え方を紹介していきます。

第1回となる今回は、最初にプロンプト作成のコツそのものを解説します。基本的に、人間の部下に仕事の指示を出すような感じで指示を作るとよいでしょう。

何はともあれ、プロンプトは具体的に明確に書く必要があります。ふわっとした指示では動けません。無茶振りでもAIは何か回答するように努めますが、曖昧だったり一般的な回答になりがちです。

例えば「プロンプトって何?」と入力すると、一般論からWindowsのコマンドプロンプトの表示についての説明が始まります。「生成AIに入力するプロンプトについて、詳しく教えてください」と入力すると望む内容が返ってきます。理解が難しければ、「高校生にもわかるようにお願いします」と追加すると、かみ砕いて教えてくれます。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    プロンプトは具体的に入力するように心がけましょう

具体的に入力すれば、細かく返ってきます。その際、人間に対するような気を使う必要はありません。子供にわかるように説明しろ、などとは人に言えませんが、AI相手なら大丈夫です。アイディアを出してもらうときも、人間相手ならほかにも出せ、と言いにくいですが、AI相手なら10個出して、と言ってもよいのです。

文脈を提供することも効果があります。背景情報を入力すると、必要に応じて参照し、適切な回答を生成してくれるのです。例えば、「飲食店のマーケティングプランを考えてください」だと競合分析や顧客エクスペリエンスの向上、広告を打つといった一般的な内容が返ってきます。しかし、以下のように入力してみると、結果が変わります。

東京都港区でレストランバーを経営しています。席数は100席で、従業員は10人、コロナ禍で客足が遠のきました。新しい施策を導入し、来客数を増やしたいと考えています。うちの売りはお酒を1000種類用意していること、リーズナブルな価格で提供していること、本格的なカクテルを提供していること、料理がおいしいこと、です。
飲食店のマーケティングプランを考えてください。

メニューに写真を載せ、オンライン予約システムを導入し、SNSでプロモーションし、港区内の企業に割引プランを提供し、港区内のイベントにスポンサードしろなど、具体的なアクションプランをずらっと出してくれました。これが、プロンプトの力です。

基本的に、プロンプトは長い方が最適化された回答が返ってきます。もっと現状を入力し、欲しい情報を詳しく書くとまた回答が変わります。似たようなプロンプトでも、やり取りするたびに、微妙に回答が変わることも多く、1度で結果を求めず、いろいろとチャレンジするとよいでしょう。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    文脈を提供すると、より最適化された回答が返ってきます

ChatGPTが苦手なことも把握しておきましょう。前述のとおり、正確な情報を出せるとは限りません。特に、ネットや一般的な書籍上にない情報は学習できないので、回答できません。

GPT-3.5は2021年9月までの情報で学習しているので、最新情報もわかりません。金額や計算にも弱い傾向があります。例えば、企業の決算内容などはAIに聞かず、自分で検索したほうが早く、正確です。

法に触れる内容はOpenAIのファインチューニングにより出力できません。倫理的にNGな回答を制御しているのです。このファインチューニングは日々、更新されているようです。

今年初めは、どんでん返しの凄い映画一覧を出し、どんでん返しポイントを教えてくれました。しかし、少し前には、ネタバレはNGと教えてくれなくなりました。そして現在は、普通にどんでん返しを教えてくれるように戻っています。

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第1回

    以前の「ChatGPT」はネタバレNGになっていましたが、今は教えてくれます。モザイクは筆者が入れました

現在のテキスト生成AIは、完ぺきではありません。オウンドメディアの原稿や顧客への提案資料、戦略策定のためのデータ、意思決定などをちょいちょいっと出せるわけではない、ということは肝に銘じておく必要があります。

しかし、それらを作成するためのたたき台やヒントとなる情報を作るのは得意です。もちろん、その回答が正確かどうかはユーザーがチェックし、判断しなければなりません。あくまで道具なのです。

基本的に仕事ができる人ほどChatGPTで業務を加速していきます。ライバルの生成AIも次々と登場してきているので、今後、ChatGPTがメインストリームになるかどうかはわかりませんが、テキスト生成AIがビジネスに欠かせなくなることは間違いありません。今のうちに、生成AIを使いこなすスキルを身に着けておくことを強くおすすめします。