今回は、スライド マスターを使ってデザインをカスタマイズする方法を紹介していこう。スライド マスターは各スライドの「ひな形」となるもので、このスライドに対して行った編集はすべてのスライドに反映される仕組みになっている。少しだけ上級者向けの内容になるが、覚えておいても損はないはずだ。

スライド マスターとは?

PowerPointには「スライド マスター」と呼ばれるスライドが用意されている。このスライドは各スライドの「ひな形」(フォーマット)となるもので、「スライドのデザイン」や「標準の文字の書式」などを一括変更するためのスライドとなる。言葉で説明するだけでは理解しにくいと思うので、具体的な例を示しながら解説していこう。

まずは、スライド マスターの編集画面に切り替える方法から解説する。スライド マスターを編集するときは、「表示」タブを選択し、「スライド マスター」コマンドをクリックする。

  • スライド マスターの表示

すると、以下の図のような画面表示に切り替わる。ここでは、まず始めに「レイアウト」を選択するのが基本だ。

  • レイアウトの選択

「どのレイアウトを選べばよいか?」がよくわからない方は、とりあえず「タイトルとコンテンツ」のレイアウトを選択して作業を進めていくとよいだろう。

スライド マスターの編集手順

スライド マスターには、各パーツの書式を指定するための「テキストボックス」や「図形」などが配置されている。全スライドの書式を一括変更したいときは、これらの書式を変更していけばよい。

たとえば、「マスター タイトルの書式設定」の文字を選択して、フォントと文字サイズを変更すると、その変更がすべてのスライドに反映される仕組みになっている。以下の図は、フォントを「BIZ UDPゴシック」、文字サイズを「40pt」に変更した場合の例となる。

  • 文字の書式の変更

同様の手順で「コンテンツの領域」の文字の書式を変更することも可能だ。こちらは「箇条書き」の各レベルに対して個別に書式を指定していく仕組みになっている。今回は、すべてのレベルのフォントを「BIZ UDPゴシック」に変更してみた。

それぞれの変更結果を確認するために、いちどスライド マスターの編集を終了し、通常の編集画面に戻してみよう。「スライド マスター」タブを選択し、「マスター表示を閉じる」をクリックする。

  • スライド マスターの編集作業の終了

通常のスライド編集画面に戻る。それぞれの領域内をクリックして文字の書式を確認してみると、先ほどスライド マスターで指定した書式が各スライドに反映されているのを確認できるはずだ。

  • スライド マスターの変更が反映されたスライド

このように、スライド マスターで書式を変更すると、その変更が「すべてのスライド」に反映される仕組みになっている。

ただし、一部、例外もある。スライド マスターで指定する書式は「標準の文字の書式」となる。つまり、スライド作成時に「そのまま入力した文字」だけが対象になる訳だ。文字を入力した後、自分で書式を変更した場合は、その書式指定が優先されるため、スライド マスターで指定した書式は反映されない。

少しわかりにくいと思うので、以下に一例を紹介しておこう。

◆スライド マスターで指定した書式
 フォント:BIZ UDPゴシック
 文字サイズ:32pt
 文字の色:濃い青

◆各スライドに反映される書式
・特に書式を指定しなかった場合 → BIZ UDPゴシック、32pt、濃い青
  (スライド マスターの書式がすべて反映される)
・文字サイズを「24pt」に変更していた場合 → BIZ UDPゴシック、24pt、濃い青
  (文字サイズは反映されない)
・文字の色を「赤」に変更していた場合 → BIZ UDPゴシック、32pt、赤
  (文字の色は反映されない)

要するに、自分で変更した書式はそれが維持され、初期設定のまま変更しなかった書式は「スライド マスターで指定した書式」が反映される、という挙動になる。簡単な例を使って実際に試してみると、その仕組みを把握できるだろう。

スライド マスターを使ったデザインのカスタマイズ

スライドのデザインをカスタマイズするために「スライド マスター」を利用するケースもよくある。続いては、デザインのカスタマイズについて紹介していこう。

スライド マスターの編集では、既存のパーツの書式を変更するだけでなく、新たに要素を追加することも可能となっている。たとえば、デザインの一部として文字を配置したいときは、スライド マスターに「テキストボックス」を挿入すればよい。

  • テキストボックスの挿入

続いて、テキストボックスに文字を入力して書式を指定し、配置を調整する。今回は、テキストボックスを90度回転させて配置してみた。

  • 文字を入力して書式を指定

  • テキストボックスを回転して配置

もちろん、既存のパーツ(図形など)の書式を変更してデザインをカスタマイズすることも可能だ。たとえば、図形をクリックして選択し、「図形の塗りつぶし」で色を変更していくと、手軽なカスタマイズを行うことができる。

  • 既存パーツの書式変更

カスタマイズ作業が済んだら「スライド マスター」タブにある「マスター表示を閉じる」をクリックして通常の編集画面に戻す。

  • スライド マスターの編集作業の終了

すると、スライド マスターで行った編集作業が各スライドにも反映されているのを確認できる。このような作業を繰り返していくことで、PowerPointに用意されているデザインを「オリジナルなデザイン」にカスタマイズしていくことも可能だ。

  • デザインをカスタマイズしたスライド

ただし、状況によっては、一部のスライドにカスタマイズが反映されないケースもある。以下の例では、5枚目と6枚目のスライドが従来のデザインのままになっている。

  • カスタマイズが反映されていないスライド

これは、「タイトルとコンテンツ」以外のレイアウトでスライドを作成していたことが原因だ。スライド マスターは、それぞれのレイアウトに対して個別に書式を指定する仕組みになっている。つまり、「タイトルとコンテンツ」のレイアウトに対してカスタマイズを施した場合は、「タイトルとコンテンツ」で作成したスライドだけに変更が反映されることになる。

先ほど示した例では、5枚目と6枚目のスライドを「タイトルのみ」のレイアウトで作成している。これらのスライドを同じデザインに仕上げるには、「タイトルのみ」のスライド マスターにも同様のカスタマイズを施す必要がある。

  • 「タイトルのみ」のスライドマスターを編集

こういった作業を行うときに、新たに追加する要素(テキストボックスなど)を、同じ位置、同じサイズで配置したい場合もあるだろう。この場合は、以下のように操作すると簡単に作業を終えることができる。

  1. いちど「タイトルとコンテンツ」のスライド マスターに戻る
  2. 新たに配置した要素を「Ctrl」+「C」キーでコピーする
  3. 編集中のスライド マスターへ移動し、「Ctrl」+「P」キーで要素を貼り付ける

そのほか、1枚目のスライドについてもデザイン変更のカスタマイズを施しておく必要がある。こちらは「タイトル スライド」のスライド マスターで編集作業を進めていけばよい。

スライド マスターをテンプレートとして保存

スライド マスターを使ってカスタマイズしたデザインを「テンプレート」として保存し、他のプレゼンテーションで再利用することも可能だ。最後に、スライド マスターをテンプレートとして保存する方法を紹介しておこう。

デザインのカスタマイズがひとおとり完了したら、「ファイル」タブにある「名前を付けて保存」を選択し、「参照」をクリックする。

  • 名前を付けて保存

保存用のダイアログが表示されるので、ファイルの種類を「PowerPointテンプレート」に変更する。すると、保存先が「Officeのカスタムテンプレート」フォルダーに自動変更される。

  • テンプレートとして保存

あとは、適当な名前を入力して「保存」ボタンをクリックするだけ。これで、現在のデザインを「テンプレート」として保存することができる。

念のため、保存したテンプレートを利用するときの操作手順も紹介しておこう。まずは、新しいプレゼンテーションを作成する。続いて、「デザイン」タブで「テーマの一覧」を開き、「テーマの参照」を選択する。

  • 「テーマの参照」を選択

すると、「Officeのカスタムテンプレート」フォルダー内に保存されているファイル(テンプレート)が一覧表示される。先ほど「テンプレート」として保存したファイルを選択して「適用」ボタンをクリックすると・・・

  • 保存したテンプレートを選択して適用

カスタイマイズしたデザインで「新しいプレゼンテーション」を作成できるようになる。あとは、文章の入力などを行ってスライドを作成していくだけ。この手順は、通常のスライド作成と同じだ。

  • テンプレートが適用されたスライド(タイトル スライド)

  • テンプレートが適用されたスライド

今回の連載で紹介したように、スライド マスターを使うと、既存のデザイン(テーマ)をもとにオリジナルのデザインを作成することが可能となる。テンプレートとして保存しておけば、同じデザインを好きなときに再利用することも可能だ。

一般的によく見かける「PowerPointならではデザイン」ではなく、少し独自性のあるデザインでスライドを作成したい方は、いちどチャレンジしてみるとよいだろう。