Kaseyaの日本法人であるKaseya Japanが設立されてから、2012年7月で1年が経過した。1年間日本で活動した結果を踏まえて、Kaseya Japanのビジネスの現況と、今後の展望についてKaseya Japan 社長の北原信之氏に話を聞いた。

実績づくりとパートナー獲得に励んだ1年目

Kaseyaは、クライアント端末の運用・管理ソリューションを提供する。セキュリティまわりや資産管理などに活躍するソリューションだが、Kaseya Japanが現在押し進めているのは、Windows XPからWindows 7へのマイグレーションだ。

Kaseya Japan社長の北原信之氏

「1年目は実績づくりとパートナーづくりを目標に活動してきましたが、実績としては東京大学様をはじめいくつかの企業で導入していただくことができました。現在も大規模な案件が進行中です。東京大学様の案件を契機にキヤノンマーケティングジャパンさんとのパートナーシップも構築できました。非常によい成果を得られたと考えています」と北原氏は語る。

現在Kaseyaを利用したWindows 7へのマイグレーションを支援するセミナーをKaseya Japanとキヤノンマーケティングジャパンは月1回のペースで定期開催している。このほかにもNRIや複合機ベンダー等とのパートナーシップを強化中だ。

「すでに世界市場では各複合機ベンダーとのパートナーシップがあります。ほかのハードウェアと違い、複合機の場合は定期的なメンテナンスや資材販売によって企業と長くつきあうビジネスを展開しています。自然とITについてのサポートを行うことも多く、Kaseyaと複合機ベンダーというのは相性がよいのです」と北原氏。

Windowsマイグレーションをきっかけに環境標準化やクライアント管理へ

日本での導入事例として、MacとWindowsの複合環境下における大量クライアント管理のために採用した東京大学情報基盤センターの事例をすでに紹介しているが、この案件を皮切りに、教育機関からの問い合わせが増えているという。

kaseyaが利用されている「東京大学 情報教育棟 大演習室」

また、全国2,400拠点の販売網を持つ、大手メーカーが各拠点に点在する5万台のPCをマイグレーションする手段としてKaseyaを採用する動きもある。そのほか、大手運輸業のドメイン統合でもKaseyaが採用されるなど、大規模案件が進行中だ。

「Kaseyaを使った場合、ファイアウォールの設定は必要ですが、外部からリモートで作業することができます。拠点数が多い場合でもエンジニアを派遣する必要がないので、交通費の削減まで含めれば、Windowsマイグレーションの場合コストは約半分、工数も1/3程度になるはずです」(北原氏)

また、Windowsマイグレーションをきっかけに社内PCの標準化を図る動きもあるという。

メールクライアントやブラウザ、ファイルの保存場所等は基本的に定められていても、実際には社員が勝手に変更してしまっているという事例は多い。1台ごとの環境を分析して丸ごと移植するようなことも可能だが、効率的な作業のためには移行対象とするアプリケーションやデータフォルダが統一されていることが望ましい。

「移行に必要だから標準化をしよう、という形で取り組んでいただければ、企業がサポートするアプリケーション等の範囲を定めることにもなります。移行後のサポートを効率化するためにも、ぜひ標準化はおすすめしたいですね」と北原氏は語った。

Kaseyaを活用したサービスを各社が提供する形を目指す

Windows XPからWindows 7へのマイグレーションに関してはごく基本的なメニューが用意されており、それをそのまま使うこともできるが、基本的には企業ごとの環境に合わせて作業内容は変わってくる。その場合、すべてをKaseyaの機能でまかなうのではなく、パートナーがスクリプトを作成したり、既存の各種アプリケーションを組み合わせて利用することができる。

「プリンタの入れ替えをするためにドライバを一斉更新したい、特定ドキュメントを閲覧するために必要なプラグインを多くの端末に配布したいというような場合にも、Kaseyaは利用可能です。Windowsマイグレーションにおいても細かな設定を移行させたいという場合には、お引っ越しツール的なものを組み合わせることがあります。Kaseyaはクライアント管理のプラットフォームとして動く形です」と北原氏は語る。

ただ、Windows 7へのマイグレーションは、きっかけにすぎない。Kaseyaを日々の運用管理まで拡大し、クライアント管理の自動化にも利用してもらおうというが同社の狙いだ。

「OSの一斉マイグレーションというのは、いち早くPCを導入した一部の企業がWindows XP導入時に経験した程度で、10年以上経験がない状態です。しかも1人1台が当たり前になってからの経験は多くの企業が体験していません。これをなんとかしなければ、というのがKaseya導入のきっかけとなっていますが、その後は日常の運用や管理での活用にも使ってもらえるようにしたいですね。マイグレーションをきっかけに社内の状況をヒアリングすると、実はこれをやりたかったということがたくさんあります」と北原氏。

単純にKaseyaというソリューションを販売して終わりにするのではなく、その上で動かすサービスを付加価値として提供できるため、KaseyaはSIerにとって価値の高い商品になる。今後Kaseya Japanがパートナーを増やして行くことで、ユーザー企業にとっても選択肢が増えるというメリットが得られる。

予測をプラスに裏切る1年目の成果

Kaseya Japanの1年目に対する本社側の評価は上々だ。

「もっと日本は苦戦すると考えていたのに、1年でしっかりと事例をつくり、パートナーを得ることができました。予測はプラスに裏切られた形で、日本市場が失敗する心配はないという評価です」と北原氏は笑顔で語る。

今後の最大のミッションとして北原氏が挙げたのは「売り上げ」たが、もう1つ大きな目標がある。それは、Kaseyaをうまく活用するためのサービスそのものの逆輸出だ。

「日本のSIerは非常にまじめというか自動化という言葉に対して真剣で、本当に1クリックで作業が終わることを目指してサービスを作っています。海外では途中で何度かクリックがあっても途中が自動化されていればいいという考えのSIerが多い中、非常にクオリティの高いサービスです。このサービスを、海外に向けても展開して行きたいですね」と北原氏。今後のKaseya Japanの成長にも期待できそうだ。