本連載の第46回以降では、Excelグラフをデザインする方法などについて紹介してきた。このようにして作成したグラフをそのままExcelで使うのではなく、WordやPowerPointに貼り付けて利用したい場合もあるだろう。そこで今回は「Excelで作成したグラフ」をWordやPowerPointで利用するときの注意点などを紹介していこう。

普通にコピー&ペーストした場合は?

まずは、普通にグラフをコピー&ペーストした場合の例を紹介する。Excelで作成したグラフをクリックして選択し、「Ctrl」+「C」キーでコピーする。

  • グラフを選択して「Ctrl」+「C」キーでコピー

続いて、Word文書を開き、グラフを貼り付けたい位置にカーソルを移動してから「Ctrl」+「V」キーを押す。これで「Excelで作成したグラフ」をWord文書に貼り付けることができる。

  • 「Ctrl」+「V」キーでWord文書に貼り付けたグラフ

この程度の操作であれば、WordやExcelの初心者の方でも容易に想像できるだろう。しかし、この方法には多少の問題点がある。順番に解説していこう。

普通にコピー&ペーストした場合は、グラフがそのまま「グラフ」としてWord文書に貼り付けられる。つまり、Wordでグラフを作成したときと同じ状況になる訳だ。このため、Wordに貼り付けたグラフを再編集することも可能となる。これは一つの大きな利点といえるが、グラフのサイズが自動調整されていることに注意しなければならない。

先ほど紹介した例の場合、「Excelで作成したグラフ」の方が「Wordの文書幅」より大きいため、「Wordの文書幅」に合わせてグラフを縮小する、という処理が施される。ただし、グラフ内の文字サイズは自動調整されていない。その結果、文字だけが大きいグラフになってしまう。今回の例の場合、「大阪」と「福岡」の凡例が表示されていない……、といったトラブルも生じている。

Word文書にグラフを貼り付けた後に、そのサイズを小さくすると、この傾向はさらに顕著になる。

  • 貼り付けたグラフのサイズ変更

グラフのサイズを小さくすると、グラフ内の文字サイズを維持したままグラフが縮小されるため、グラフのレイアウトが大きく乱れてしまう。

  • サイズを小さくしたグラフ

もちろん、サイズを小さくした後に「グラフ内の文字の書式」を指定しなおすことも可能だ。その手順は、グラフ内の要素(または文字)を選択して「ホーム」タブで書式を指定するだけ。この操作手順は、Wordでグラフを編集する場合と同じである。

  • グラフ内にある文字の書式変更

とはいえ、せっかくExcelでグラフのレイアウトを整えてあるのに、Wordに貼り付けた後に再びレイアウト調整をしなければならない……というのは二度手間であり、非常に効率の悪い作業の進め方といえる。

これはPowerPointにグラフを貼り付け場合も同じだ。「Ctrl」+「C」キーでコピーしたグラフを、「Ctrl」+「V」キーでスライドに貼り付けることは可能である。

  • PowerPointに貼り付けた場合の例

続いて、このグラフをスライドに合わせて拡大すると以下の図のような結果になり、文字が小さすぎるグラフになってしまう。

  • サイズを大きくしたグラフ

そのほか、「PowerPointのテーマに合わせて色が勝手に変更される」などの問題が生じる場合もある。

このように通常のコピー&ペーストでグラフを再利用することは可能であるが、その後に色々と修正作業が発生してしまうケースが少なくない。この修正はそれなりに手間のかかる作業になるため、「できれば避けたい」という考えるのが普通だ。

その解決策の一つとなるのが、貼り付け先のサイズに合わせて、あらかじめ適切なサイズでグラフを作成しておくこと。貼り付け先がA4縦のWord文書の場合、用紙の幅は210mmで左右に「30mmずつの余白」が初期設定されているため、「本文の幅」は150mmになる。よって、Excelでグラフを作成するときに幅150mmでグラフを作成しておくと、「本文の幅」と同じサイズに仕上げられる。このグラフをコピー&ペーストすれば、貼り付け後のサイズ変更がなくなるため、それに伴う修正作業も不要になる。

ただし、これは理想論を前提にした作業の進め方ともいえる。実際に作業してみると、「そう思い通りには進まなかった……」となるケースが多い。たとえば、「当初はWordの文書幅に合わせてグラフを掲載する予定だったが、本文を書き進めていくうちに1ページに収まらないことが判明したため、泣く泣くグラフを小さくした」という状況も十分に考えられる。この場合、グラフのサイズを変更することになるため、結果として、それに伴う修正作業が発生してしまう。つまり、Excelでグラフのレイアウトを整えたときの作業が無駄になってしまうのだ。

グラフを画像化して貼り付ける

このような二度手間を避けるためにも、グラフを画像化して貼り付ける方法を覚えておくとよい。まずは、「Excelで作成したグラフ」を「Ctrl」+「C」キーでコピーする。この手順は、先ほど示した例と同じだ。

続いて、Word文書を開き、グラフを貼り付ける位置にカーソルを移動する。その後、「ホーム」タブにある「貼り付け」コマンドの▼をクリックし、「図」のアイコンを選択する。

  • 画像に変換して貼り付ける操作(Word)

すると、グラフが画像に変換されてWord文書に貼り付けられる。あとは、四隅にあるハンドルをドラッグして、グラフ(画像)のサイズを調整するだけだ。

  • Word文書に貼り付けられたグラフ(画像)

  • サイズを変更したグラフ(画像)

この方法でコピー&ペーストした場合は、グラフ全体が画像化されているため、元のレイアウトを維持したまま拡大/縮小することが可能となる。文書の作成途中でグラフ(画像)のサイズを変更しても、それに付随する修正作業は何も発生しない。

このように、すでにレイアウトの調整が済んでいるグラフをコピー&ペーストするときは、「画像化して貼り付け」を選択した方が効率よく作業を進められる場合もある。

その反面、グラフツールを使ったグラフ編集は行えなくなる。グラフを修正するときは、Excelでグラフを編集しなおして、そのグラフをもういちど画像化して貼り付ける、といった工程が必要になる。とはいえ、修正作業をWordで行うか、それともExcelで行うか、といった程度の差しか生じないので大きなデメリットにはならないはずだ。

念のため、PowerPointにグラフを画像化して貼り付けるときの操作手順も紹介しておこう。この場合は、貼り付け先のスライドを選択した状態で、「貼り付け」コマンド→「図」アイコンを選択すればよい。

  • 画像に変換して貼り付ける操作(PowerPoint)

その後、四隅のハンドをドラッグすると、レイアウトを維持したままグラフ(画像)のサイズを変更できる。また、テーマに合わせて色が勝手に変更されるトラブルも回避できる。

  • サイズを変更したグラフ(画像)

画像として貼り付けた場合の解像度

グラフを画像化して貼り付ける際に、「変換後の画像の解像度はどうなっているのか?」が気になる方もいるだろう。あわせて紹介しておこう。

画像の解像度を調べるときは、Wordに貼り付けたグラフ(画像)を右クリックして「図として保存」を選択するとよい。

  • 「図として保存」コマンド(Word)

すると、その画像を「画像ファイル」として取り出すことが可能となる。この「画像ファイル」を適当な画像編集アプリで開き、解像度を調べてみると、以下の図のような結果が得られた。

  • 画像編集アプリで解像度を確認

今回の例では、Excelでグラフを作成する際に「グラフのサイズ」を18cm×11cmに指定していた。若干の誤差はあるものの、このサイズは画像化した後も維持されているようだ。また、その解像度は約150dpi(150ppi)になっている。

上記の結果から推測するに、グラフの画像化は解像度150dpiになるように処理されているようだ。この数値は、PowerPointに画像化して貼り付ける場合も同じである。

150dpiという解像度は、画面上で見るには十分なサイズ、PDFなどのデジタル文書にするときも特に問題のないサイズ、と考えられる。一方、印刷する場合は「少し解像度が不足気味であるが、汎用プリンターなら、まあ問題のないレベル」といった感じになる。

もちろん、文書に貼り付けた後にグラフ(画像)を拡大/縮小した場合は、それに応じて解像度も変化する。たとえば、1/2に縮小すれば解像度は300dpiになるし、2倍に拡大すると解像度は75dpiにまで落ちてしまう。

このような状況を考えると、ある程度は「使用するサイズ」に合わせてグラフを作成しておく必要がある。通常のコピー&ペーストほど厳密に数値を合わせる必要はないので、おおまかなサイズでグラフを作成しておくとよいだろう。

「使用するサイズ」がよくわからない場合は、少し大きめにグラフを作成しておき、Wordに貼り付けた後にサイズを縮小する、という手順で作業を進めていけばよい。この場合は、グラフを画像化して貼り付けた後にサイズを縮小しているので、その実質的な解像度は150dpi以上になり、どのような用途に使用しても問題のない解像度を得られる。

ということで次回は、「Excelでグラフを作成するときのサイズ指定」や「図形を含むグラフのコピー&ペースト」などを紹介していこう。