第46回以降の連載では、「円」や「ドーナツ」といったグラフに「テキストボックス」を追加してグラフをデザインする方法を紹介してきた。これらの手法を「棒グラフ」に応用することも可能だ。ということで、今回は棒グラフに「図形」を追加して「伝わる図版」に仕上げた例を紹介してみよう。
グラフを普通にカスタマイズしていくと……
今回は、サービス料金を比較したデータを使って具体的な手順を紹介していこう。以下の図は、自社と似たようなサービスを提供するA社、B社の料金を「1年間あたりの料金」で比較した例だ。自社のサービスが安くてオトクであることをアピールしたいが、果たして上手くいっていると言えるだろうか?
まずは、棒グラフを作成する。赤線で示したセル範囲を選択し、「集合縦棒」のグラフを作成すると、以下の図のような結果になる。
このグラフに、「棒グラフの幅を太くする」、「文字の書式を変更する」といったカスタマイズを施すと、グラフの見た目が少し改善され、以下の図のようになる。
さらにカスタマイズを施していこう。自社の料金が目立つようにグラフの色を変更し、「影」(図形の効果)を加えると、以下の図のようになる。
最後に「中央揃え」で「データ ラベル」を表示し、文字の書式を調整すると、以下の図のようなグラフに仕上げられる。
Excelのグラフ機能を使ってカスマイズを施した場合は、多少の差こそあれ、だいだい上図のような結果になる。
これはこれで「見やすいグラフ」といえるが、「料金が安いことをアピールできているか?」と聞かれると少し不安を覚えてしまう。当社のグラフが短いため、見ようによっては「A社、B社より当社の方が劣っている……」と感じてしまうかもしれない。
これは、料金やタイムのように「数値が小さいほど良好なデータ」を示すときに、よくありがちな話といえる。そこで、もっと伝わりやすい形にグラフを加工した例を紹介していこう。
図形を追加して「伝わるデザイン」に仕上げる
グラフを図版として活用するときは「必須ではない要素」を削除して、なるべくシンプルな形にしておくのが基本だ。今回の例では「データ ラベル」で料金を示しているため、「縦軸」や「目盛線」を削除しても特に問題は生じない。
続いて、伝えたい情報を書き込むためのスペースを確保する。ここでは「当社」の棒グラフの右側にスペースを確保したいので、下図のようにデータ表に「行」を挿入する操作を行った。
すると、1項目分のスペースが「当社」の右側に確保され、グラフの表示は以下の図のようになる。
ここに「図形」コマンドを使って「伝えたい情報」を書き込んでいこう。このとき、グラフとリンクするように図形を描画すると、後の操作を進めやすくなる。具体的な手順を示すと、「グラフ」を選択した状態のまま「図形の挿入」を行えばよい。今回の例では、「線」の図形をグラフ上に描画した。
続いて、「線」の書式を整える。「図形の枠線」コマンドを使って「線の色」、「太さ」、「実線/点線」などを指定していこう。
同じ書式の「図形」を何個も配置するときは、書式を指定した「図形」を複製すると効率よく作業を進められる。「図形」を複製するときは、「Ctrl」キーを押しながら「図形」をドラッグすればよい。同時に「Shift」キーも押しておくと、水平または垂直方向に図形を複製できる。
ここでは、以下の図のように2本の「線」を複製した。
次は、「テキストボックス」を描画して「伝えたい情報」を文字で書き込んでいく。その操作手順は、テキストボックスをグラフ上に描画して、文字を入力するだけ。ここまでの操作を問題なく進められている方なら、特に難しい話はないはずだ。
視線を集めやすいように、フォント/文字サイズ/文字色などの書式を工夫すると、以下の図のような状態になる。
「テキストボックス」も複製して利用するのが効率的な作業手順となる。先ほど作成した「テキストボックス」を「Ctrl」キーを押しながらドラッグし、その文字を書き換えると、同じ書式の「テキストボックス」をいくつも作成できる。
続いて、「矢印:上下」の図形を描画し、「塗りつぶし」と「枠線」の書式を指定してから複製する。その後、各図形の配置を整えると、以下の図のようになる。
今回の例では棒グラフに「影」を追加しているので、それぞれの「図形」にも「影」を指定しておこう。「Shift」キーを押しながら各図形をクリックしていくと、複数の図形を同時に選択できる。この状態で「影」の効果を指定すると、何回も同じ操作をする手間を省くことができる。
グラフの余白を右クリックし、「グラフ エリア」を色で塗りつぶしてしまうのも効果的な手法だ。一覧にない色を指定するときは、「塗りつぶしの色」を選択してから色を指定すればよい。
最後に、「グラフ タイトル」の位置を調整する。このとき、「Shift」キーを押しながら「グラフタイトルの枠線」ドラッグすると、真下へ移動することが可能となる(左右中央を維持できる)。
このような手順でグラフに「図形」を追加していくと、以下の図のような図版に仕上げることができる。単純にグラフをカスタマイズした場合と比べて、「一目で内容が伝わる図版に仕上げられた」と言えるのではないだろうか?
今回の連載で紹介した内容は、あらゆる状況にそのまま使えるテクニックとはえない。伝えたい内容に応じて、「どこに、どんな図形を配置するか」は変化するはずだ。よって、グラフを図版化するときのヒントとして捉えて頂ければ幸いだ。
「グラフ」に「図形」を追加する手法は、あらゆる用途に活用できるテクニックといえるが、その手順を一概に述べることはできない。実際にチャレンジしてみて、経験を積み重ねていくことで、より効果的に活用できるようになるだろう。図形の基本的な扱い方を学習できている方は、「実践を繰り返すこと」が何よりの糧となるはずだ。