社内の同僚にスライドの内容を確認してもらったり、1つのスライドを複数人で共同編集したりしたい場合もあるだろう。WebサービスとなるCanvaは、こういった共同作業にも威力を発揮する。今回は「共有リンク」を使ってスライドを他人と共有する方法を紹介していこう。

デザインファイルの共有方法

発表用のスライドを1人で黙々と作成するのではなく、社内の同僚や取引先の意見を交えながら作業を進めていきたい場合もあるだろう。このような場合に活用できるのが「共有リンク」という機能だ。他のユーザーと手軽にファイルを共有できることも、WebサービスとなるCanvaならではの利点といえるだろう。

  • 共有リンクを使った共同編集

それでは、スライド(デザインファイル)を共有するときの基本的な操作手順を解説していこう。共有したいスライドの編集画面を開き、画面右上にある「共有」をクリックする。続いて、「あなただけがアクセス可能」と表示されている項目をクリックし、「リンクを知っている全員」を選択する。

  • コラボレーションリンクの設定変更(1)

  • コラボレーションリンクの設定変更(2)

これでデザインファイルを共有可能な状態になる。続いて、このデザインファイルのアクセス権を設定する。「表示可/コメント可/編集可」の中から最適なものを選択する。

  • アクセス権の選択

すると、ファイル共有用のリンク(URL)が自動生成される。ただし、このリンクは画面に表示されない。「リンクをコピー」ボタンをクリックして、クリップボードにコピーして利用するのが基本だ。

  • リンクをクリップボードにコピーする操作

あとは、共有用のリンクを相手に伝えるだけ。コピーしたリンクは、「Ctrl」+「V」キーを押してメールの本文などに貼り付ければよい。

要するに、共有用のURLを生成し、そのURLを相手に伝えることで、ファイル共有を実現する訳だ。なお、このURLにパスワードなどは設定されていないため、URLを知っている人全員がファイルにアクセス可能になる。URLはランダムな文字列で生成されるため、ある程度の機密性は確保されているが、念のため、URLが部外者に知られないように注意しておく必要がある。

もちろん、ファイルを共有する相手にあわせてアクセス権(表示可/コメント可/編集可)を適切に設定しておく必要もある。ということで、アクセス権の設定に応じて「相手の動作環境がどのように変化するか?」を詳しく解説していこう。

「表示可」で共有した場合

まずは、アクセス権に「表示可」を指定して共有リンクを伝えた場合だ。この場合、URLを受け取った相手は「閲覧のみ可能」な状態になる。

  • アクセス権に「表示可」を指定

具体的な例を用いて詳しく紹介していこう。以下の図は、URLを受け取った相手が、そのURLにアクセスした直後の画面となる。ここでは「Microsoft Edge」でURLを開いた場合を例に状況を紹介していこう。

  • リンクにアクセスした直後の様子

相手がCanvaに会員登録していなかった場合(もしくはログアウトしていた場合)は「ゲスト」として扱われる。このため、アカウント部分が「動物のアイコン」で表示される。上図ではパンダのアイコンになっているが、この動物はランダムに選択されるため、必ずしもパンダになるとは限らない。また、初めてCanvaを利用するときは、Cookieに関するメッセージも表示される。

アカウントやCookieに関するポップアップ表示を閉じると、画面に各スライドの内容が表示される。あとは、画面下部にあるスライド一覧で表示するページを切り替えていくだけだ。

  • 各ページを表示した様子

画面表示をスライドショーに切り替えて、アニメーションの様子を確認することも可能となっている。この場合は、画面右下にある「全画面表示」のアイコンをクリックすればよい。相手がCanvaの操作に慣れていない可能性も十分に考えられるので、スライドショーに切り替えるときの操作手順も一緒に伝えておくとよいだろう。

  • スライドショーに切り替える操作

なお、右上に「Sign up」の表示があることからも分かるように、「表示可」の共有はCanvaに会員登録していないユーザーでも利用可能となっている。このため、誰にでも使える共有方法として活用できる。

「コメント可」で共有した場合

続いては、アクセス権に「コメント可」を指定して共有リンクを伝えた場合だ。この場合、URLを受け取った相手は「閲覧だけでなく、コメントの書き込みも可能」な状態になる。単にスライドを見てもらうだけでなく、相手の意見を聞きたい場合は、この方法でファイルを共有するとよい。

  • アクセス権に「コメント可」を指定

今回も具体的な例を用いて詳しく解説していこう。相手が共有リンクのURLにアクセスすると、以下の図のような画面が表示される。今回は、アカウント部分がカエルのアイコンで表示されているが、前述したように「どの動物になるか?」はランダムだ。

  • リンクにアクセスした直後の様子

各スライドの閲覧方法は、アクセス権に「表示可」を指定した場合と同じ。異なる点は、コメント書き込み用のアイコンが表示されていることだ。

このとき、対象となる素材を指定してコメントを書き込むことも可能となっている。ページ全体を対象にする場合は丸い形状の「吹き出し」アイコン、選択している素材を対象にコメントする場合は角丸四角形の「吹き出し」アイコンをクリックすればよい。

  • コメントの書き込みを開始する操作

これでコメントを書き込めるようになるが、残念ながら、下図のように「Canvaへのログインまたは会員登録を促す画面」が表示されてしまう。

  • アカウント登録を促す画面

というのも、コメントを書き込めるのは「Canvaに会員登録しているユーザーのみ」といる仕様になっているからだ。相手がCanvaのアカウントを持っていない場合は、新たに会員登録してもらう必要がある。

「便利なWebサービスだから、この機会に登録して……」と提案するのもよいが、それができるかどうかは相手との関係性次第。相手が会員登録してくれなかった場合は、コメント不可の状態になるため、「表示可」と同じファイル共有になってしまう。これでは「コメント可」に設定した意味がなくなってしまう。

よって、相手がCanvaを使っていないと思われる場合は、あらかじめスライドをPDFとしてダウンロードしておき、そのPDFを送った方がスムーズに事が運ぶと思われる。この場合、注釈機能を使ってPDFにコメントを残すことが可能となる。スライドをPDF形式でダウンロードする方法は第17回の連載で詳しく解説しているので、あわせて参照しておくとよいだろう。

話を元に戻して、「相手がCanvaユーザーであった場合」の例をみていこう。今度は、Webブラウザに「Firefox」を使用した例を紹介していく。

相手がCanvaにログインしている場合は、問題なくコメントを書き込むことが可能である。「吹き出し」アイコンをクリックすると、以下の図のような画面が表示されるので、コメントを自由に入力して、「コメント」ボタンをクリックすればよい。これでコメントの書き込みは完了となる。

  • コメントの書き込み

もちろん、書き込まれたコメントは、自分(URLの送信者)のCanvaにも表示される仕組みになっている。コメントが書き込まれた後にスライドの編集画面を開くと、各スライドの右側にコメントが表示されているのを確認できるだろう。このコメントをクリックすると、その内容を画面に表示できる。

  • コメントの確認(1)

  • コメントの確認(2)

そのほか、コメントが書き込まれたことを「お知らせ」として通知する機能も備えられている。

  • コメントの確認(3)

この通知をクリックすると、そのスライドの編集画面が自動的に開き、コメントが書き込まれた箇所を即座に確認できるようになる。そのつどスライドの編集画面を開いてコメントの有無を確認しなくても、通知(お知らせ)を見るだけで「コメントが届いているか?」を確認することが可能だ。

「編集可」で共有した場合

最後に、アクセス権に「編集可」を指定した場合の動作を紹介していこう。この場合、URLを受け取った相手は「スライドを編集することも可能」な状態になる。つまり、同じファイルを複数人で共同編集できるようになる訳だ。

  • アクセス権に「編集可」を指定

この共有方法は「相手がCanvaユーザーでない場合」であっても利用することが可能だ。相手がCanvaユーザーでなかった場合は、

・コメントの書き込みは不可
・スライドの編集は可

という状態になる。「相手がCanvaユーザーでなくても編集可になる」という点を勘違いしないように注意しておこう。

  • 共有リンクで開いたスライドを編集している様子

このため、誰にでも使える共有方法といえるが、その大前提として「相手がCanvaの基本操作を知っていること」を確認しておく必要がある。というのも、相手が編集した内容は、自身のデザインファイルにもそのまま反映(保存)されてしまうからだ。

相手がCanvaの使い方を知らないまま適当に操作すると、大切なファイルが書き換えられてしまう恐れがある。よって、理論上は「誰にでも使える共有方法」となるが、実際には「信頼できる相手にのみ使える共有方法」といえる。

なお、現状のデザインファイルを保持しておきたい場合は、あらかじめデザインファイルをコピー(複製)しておき、そのコピーを共同編集用に共有する、などの対策をとらなければならない。便利な機能であるが、その活用方法には十分に注意する必要がある。

ちなみに、相手がCanvaユーザーであった場合は、相手の「プロジェクト」にも共有したデザインファイルが表示される仕組みになっている。

  • 相手の「プロジェクト」に表示されたデザインファイル

このため、共有された相手は、いつでも「プロジェクト」からスライドの編集画面を表示することが可能となる。

共有を解除するには?

念のため、デザインファイルの共有を解除するときの操作手順も紹介していこう。ファイル共有を解除するときは、コラボレーションリンクの設定を「あなただけがアクセス可能」に変更すればよい。

  • 共有を解除する操作

これで、そのファイルを「自分専用」に戻すことができる。編集画面の上部には、共同編集者(閲覧者)のアイコンが表示されたままだが、この表示は更新されるまでに若干の時差があるようだ。しばらく待つと、アイコン表示が「自分だけ」になっているのを確認できるだろう。

当然ながら、これ以降、共有リンクを提供された相手はデザインファイルを閲覧・編集できなくなる。「プロジェクト」に表示されているファイルをクリックしても、下図のような画面が表示されるだけで、ファイルの閲覧や編集は実行不可になる。

  • 共有が解除されたデザイン

今回の連載で紹介したように、Canvaにはファイルを共有する機能も用意されている。ただし、効果的に活用するには「アクセス権の違い」を十分に理解しておく必要がある。さらに、「相手がCanvaユーザーであるか?」にも配慮しなければならない。便利な機能であるが、使い方をよく学んでから実践する必要があるだろう。