この半導体ニュースのまとめ
・JX金属が高純度硫酸銅「ユピノーグ」の製造ラインを茨城事業所に増設
・生産能力を2026年度上期比で約50%引き上げ、2027年度下期から順次稼働
・生成AI向け先端半導体やHBM、先端パッケージング分野の需要拡大に対応
JX金属は11月5日、高純度硫酸銅「ユピノーグ」の需要拡大に対応するため、茨城事業所の日立地区に製造ラインを増設する設備投資計画を発表した。
今回の増設により、ユピノーグの生産能力を2026年度上期比で約50%引き上げられる計画。新設備は2027年度下期より順次稼働を開始する予定としている。
ユピノーグは、JX金属独自の高純度化処理技術によって製造する高純度硫酸銅。鉱石由来や排液由来の一般的な硫酸銅と比べ、含有する不純物を極めて低い水準に抑えられることを特徴としている。
40年以上にわたり高純度硫酸銅を供給
ユピノーグは、プリント基板のスルーホールやビアフィルに用いる銅めっき液のほか、半導体製造におけるダマシンプロセス向け材料として採用されている。
スルーホールは、プリント基板を貫通する穴の内壁へ銅めっきを施し、基板の表裏や内部の配線層を電気的に接続する構造。ビアフィルは、プリント基板の異なる配線層を接続する微細な穴を銅めっきで充填する技術となる。
一方、ダマシンプロセスは、半導体の絶縁膜に微細な溝や穴を形成し、銅を埋め込んだ後に余分な銅を研磨・除去することで、銅配線を形成する製造方法である。
半導体の配線が微細化するほど、めっき材料に含まれる不純物が配線形成やデバイスの信頼性へ与える影響は大きくなる。そのため、先端プロセスでは高純度な材料を安定して供給することが重要となる。
JX金属はユピノーグを、めっき関連事業における中核製品の1つに位置付けている。事業開始から40年以上にわたり、高純度化技術と安定供給体制を強みに供給を続けてきたという。
先端パッケージングとHBMが需要を押し上げ
生産能力を引き上げる背景には、生成AI向けを中心とする先端半導体需要の拡大がある。
生成AIの処理に用いられるGPUやAIアクセラレータでは、高速なデータ処理を実現するため、複数の半導体チップを高密度に集積する先端パッケージング技術の重要性が高まっている。
また、GPUやAIアクセラレータと組み合わせるHBMでは、複数のDRAMチップを積層し、シリコン貫通電極などを介して接続する。こうした構造では、微細な接続部へ均一に銅を形成する必要があり、高品質な銅めっき材料に対する需要が拡大している。
先端パッケージングの高密度化やHBMの積層数増加が進めば、接続部の微細化や複雑化も進む。銅めっき材料には、不純物を抑えた高い品質に加え、製品ごとのばらつきを抑えながら長期的に供給できる体制が求められる。
JX金属は、生成AI向け先端半導体、先端パッケージング、HBMに用いられる高品質な銅めっき材料の需要は、今後も拡大が続くと見込んでいる。
茨城事業所に製造ラインを増設
新たな製造ラインは、茨城事業所の日立地区に増設する。
同社は今回の投資を通じ、需要拡大に対応する生産能力を確保するとともに、高純度硫酸銅の安定供給体制を強化する。製造ラインの増設に併せ、製品品質と供給信頼性のさらなる向上も図る。
半導体材料では、材料そのものの性能に加え、同じ品質の製品を長期間にわたって安定的に供給できる能力が、半導体メーカーやパッケージメーカーによる採用判断の重要な要素となる。
特に生成AI向け半導体やHBMでは、需要が急速に拡大する一方、生産能力の増強や製造ラインの立ち上げには一定の期間を要する。JX金属は2027年度下期から新設備を順次稼働させ、今後の市場成長に先行して供給能力を確保する考えだ。
先端半導体材料の供給力を国内外で強化
JX金属は、ユピノーグ以外の先端半導体材料についても、国内外で生産・加工能力の増強を進めている。
2026年3月には、茨城県ひたちなか市の新工場に約230億円を投じ、半導体用スパッタリングターゲットの製造設備を増強する計画を発表した。新設備は2027年度下期より順次稼働し、同製品の生産能力を2023年度比で約1.6倍に引き上げる計画としている。
台湾拠点では、産業用ロボットや無人搬送車を導入してスパッタリングターゲットの加工ラインを自動化し、生産能力を現行比で約1.4倍に高める。
韓国でも約40億円を投じて加工設備を増強し、2027年度下期からの段階的な稼働によって、同拠点の加工能力を2025年度比で約2倍に拡大する予定だ。
ユピノーグの製造ライン増設も、AIデータセンター向けの先端ロジックやHBM、3D NAND、先端パッケージングなどの市場拡大に対応する一連の供給力強化策となる。
JX金属は、高純度化や材料加工で培った技術を生かし、先端材料のグローバルプレーヤーとして、半導体の高性能化と安定供給を支えるとしている。
