このフィジカルAIニュースのまとめ
・ジェイテクトがフィジカルAIによる部品のランダムピッキングを田戸岬工場で実証
・ピッキング成功率は従来制御比12.1ポイント増の97.1%、サイクルタイムは16%短縮
・既存設備へAI用PCを追加する構成で、大規模な設備改造を行わずに導入
ジェイテクトは11月2日、田戸岬工場の自動車部品生産ラインにおいて、フィジカルAIを活用した部品のランダムピッキングを実証し、ピッキング成功率97.1%を達成したと発表した。
ランダムピッキングは、箱などに無作為に入れられた部品をカメラで認識し、ロボットが1個ずつ取り出す工程。部品ごとに位置、向き、重なり方が異なるため、高い認識精度と柔軟な動作制御が求められる。
今回の実証は、Upstage AIとカラクリとの共創活動として参画した「フィジカルAI開発支援プログラム by AWSジャパン」の一環として、2026年3月19日から8月31日まで実施された。
ピッキング成功率を85.0%から97.1%へ向上
実証では、仮想空間で学習させたフィジカルAIを、田戸岬工場のCVJ生産ラインで稼働するロボットへ実装した。
AIが3Dカメラの画像から部品の位置や姿勢を認識し、適切な把持位置と搬送動作を自律的に判断する仕組みを構築。部品の置かれ方や重なり方が変わっても、状況に応じて把持対象を選択できるようにした。
ピッキング性能の差が表れやすい高難度条件で評価した結果、従来制御で85.0%だった成功率は、フィジカルAIの導入によって97.1%へ向上した。改善幅は12.1ポイントとなる。平均サイクルタイムも従来制御の84.0%となり、16%短縮した。
2段階のAI処理で速度と認識精度を両立
開発したフィジカルAIは、高速な位置検出AIと、高精度な形状認識AIを組み合わせたもので、最初に位置検出AIを用いて、3Dカメラ画像から部品の候補を高速に検出。続いて、絞り込んだ1~2個の候補に対して形状認識AIを実行し、把持対象の位置と姿勢を高精度に算出する。
すべての部品に高精度な認識処理を行うのではなく、最初の処理で候補を限定することで、認識精度を確保しながら処理時間を短縮した。
仮想空間で学習したAIを実際のロボットへ適用しており、部品の位置や姿勢が変化する環境でも、状況に応じて動作できるようにしたとする。
既存設備へAI PCを追加して導入
今回の実証では、生産ラインやロボットを大規模に改造せず、既存設備へAI PCを追加する構成を採用した。
従来のロボットや周辺設備を生かしながら、認識・判断部分へフィジカルAIを追加できることを確認した。既存設備の更新を伴う全面的な自動化と比べて、導入時の設備負担を抑えられる可能性がある。
製造現場では、多品種生産への対応、人手不足、熟練技能者の高齢化、技能継承などが課題となっている。一方、対象物の形状や置かれ方が変化する作業は、あらかじめ決められた条件で動作する従来型の自動化設備では対応が難しい場合がある。
フィジカルAIによってロボットが周辺環境を認識し、状況に応じて取り出し方を判断できれば、これまで人の介入が必要だった工程の自律化につなげられる。
既存設備と熟練技能の両面で活用へ
ジェイテクトは今回の成果を基に、フィジカルAIの現場実装を2つの方向で進めるとしている。
1つ目は、すでに自動化されている工程へフィジカルAIを追加し、作業成功率の向上や人の介入ゼロを目指す「既存設備×フィジカルAI」となる。
2つ目は、人の経験や判断に依存している作業をAIで認識・分析し、技能の継承と形式知化につなげる「熟練技能×フィジカルAI」となる。
社内の人材育成では、各事業本部の社員がAI・ソフトウェア開発の専門部署で学ぶ社内留学制度や、全社員を対象としたデジタルリテラシー向上活動を推進。AI活用プラットフォームやAIエージェントなどの基盤構築にも取り組んでいる。
同社は田戸岬工場の実証成果を起点に、工場が現場の状況を認識・判断し、人と共に成長を続ける「考える工場」の実現を目指すとしている。

