この半導体ニュースのまとめ
・ルネサスがRAファミリで採用済みの22nm+MRAMをRXファミリにも拡大
・最大600MHz動作のRXv3eコアを搭載し、従来製品比で2倍以上の性能を実現
・RX74MはEtherCAT、TSN対応Ethernet、CAN-FDを1チップに統合
ルネサス エレクトロニクスは10月22日、RXファミリとして初めて22nmプロセスとMRAMを採用した32ビットマイコン「RX74M」「RX74N」を発売し、量産を開始したと発表した。
同社はこれまで、Armコアを搭載するRAファミリにおいて、22nmプロセスとMRAMを採用したマイコンを展開してきた。今回、同技術の適用範囲をルネサス独自のRX CPUコアを搭載するRXファミリへ広げ、既存のRX向けソフトウェア資産を利用する産業機器の高性能化に対応する。
両製品は、240MHzで動作する既存の「RX72M」「RX72N」の後継にあたる製品で、最大600MHzで動作するRXv3eコアを搭載。従来製品と比べて2倍以上の性能を実現したという。
RX74Mは、ACドライブ、産業用ロボット、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの産業オートメーション(IA)/ファクトリーオートメーション(FA)機器向け。RX74Nは、スマートメーター、パワーコンディショナ、HVACなど、幅広い産業機器向けの最上位RXマイコンとなる。
RAに続いてRXでも22nm+MRAMを採用
RX74MとRX74Nは、最大600MHzで動作するRXv3eコアに加え、1MBのMRAM、CPUからノーウェイトでアクセスできる256KBのTCM(密結合メモリ)、1.5MBのSRAMを搭載する。
ルネサスは2023年より先行する形でRAファミリにて22nmプロセスとMRAMを組み合わせたマイコンの展開を開始。以降、RA8P1、RA8T2、RA8M2、RA8D2などRAファミリとしての製品ポートフォリオを拡大してきたが、今回のRX74MとRX74Nは、こうした22nm+MRAMの製品展開を、独自のRX CPUコアと既存のRXソフトウェア資産を重視する顧客へ広げる製品となる。
TCMはCPUへ直結され、キャッシュのヒット率などに左右されず一定の時間でアクセスできるため、多数の割り込みや分岐が発生する産業機器の制御でも、ジッタを抑えたリアルタイム処理を実現できるという。
MRAMは、従来の組み込みフラッシュメモリとは異なり、データを書き込む前の消去処理を必要としない。コードやデータの更新に要する時間を短縮でき、パラメータやログを頻繁に保存する機器の応答性向上や、更新時のシステム停止時間の短縮につなげられることを特長とする。
主要な産業ネットワークを1チップに統合
IA/FA向けのRX74Mは、EtherCATスレーブコントローラ、TSN対応ギガビットEthernetスイッチ、CAN-FDを1チップに統合。EtherCAT、PROFINET、EtherNet/IPといった主要な産業ネットワークをサポートし、従来は複数のデバイスが必要だった通信処理を単一のマイコンへ集約できる。
TSNによる確定的通信に加え、EtherNet/IP DLR(Device Level Ring)などの冗長ネットワーク構成にも対応。ネットワークの一部に障害が発生した場合でも別経路へ切り替えられる構成を実現し、フィールド機器から上位システムまでをつなぐIIoT基盤の構築を支援する。また、通信と制御を1チップへ統合することで、部品点数や基板面積、ソフトウェア統合の負担を減らし、産業機器の設計を簡素化する狙いもある。
CRAとPQCを見据えてセキュリティを強化
両製品は、欧州のサイバーレジリエンス法(CRA)や、量子コンピュータの実用化後も安全性を維持するポスト量子暗号(PQC)を見据え、ハードウェアベースのセキュリティ機能を強化した。
RXv3eコアに新たに「ProtectZone」を搭載し、セキュア領域と非セキュア領域を単一チップ内で分離する。重要なコードやデータを一般のアプリケーションから隔離し、意図しないアクセスや改ざんのリスクを抑える。
次世代セキュリティIP「RSIP」では、従来のTSIPから公開鍵暗号機能を拡張したほか、認証付き暗号や幅広いハッシュアルゴリズムへ対応。PQCを含む将来のセキュリティ要件に、マイコン単体で対応できるようにする。
外部Octa FlashからのXiP(eXecute-in-Place)実行とオンザフライ復号にも対応し、外部メモリに保存した暗号化コードを復号しながら実行することも可能としている。
低消費電力の300MHz動作品も用意
最大600MHz動作の高性能品に加え、消費電力を20%以上抑えた300MHz動作品も用意する。システムに必要な性能や消費電力に応じて製品を選択できるようにした。
電源電圧範囲は1.62V~3.6V、動作ジャンクション温度範囲は-40℃~+125℃。パッケージは176/224/320ピンLFBGAと、100/144/176ピンLFQFPを用意する。
ソフトウェア開発環境には、RX、RA、RZファミリ共通のFSP(Flexible Software Package)を採用。Codewerk、RT-Labs、IAR、eForce、Zephyr RTOSなどのパートナーとも連携し、ソフトウェア、開発ツール、リアルタイムOSを提供する。
ルネサスは、RX74Mと自社のアナログ・パワー製品などを組み合わせた磁気浮上コンベヤシステムや、RX74Nを活用したスマートHVAC制御といった産業ネットワーク・モーター制御向けソリューションをウィニング・コンビネーションとして提案していくとしており、22nmプロセスとMRAMの活用で、RXファミリが持つリアルタイム制御性能や既存のソフトウェア資産に、産業ネットワークと次世代セキュリティを組み合わせ、複雑化する産業機器の設計期間短縮と高性能化につなげていくとしている。

