コカ・コーラ ボトラーズジャパンは10月21日、AIやデータを活用した事業変革「飲料テック」に関するメディアブリーフィングを開催した。同社は、自動販売機の設置・運営から製造、物流、配送までの幅広い業務にテクノロジーを導入し、生産性と収益性の向上を進めている。
なかでも物流領域では、需要や天候、在庫状況などの変化に応じて生産・輸送計画を最適化する取り組みを推進。2022年と比較して輸送距離を23%短縮したほか、物流拠点の統廃合や倉庫作業の自動化などを実現している。
説明会では、同社の事業規模や飲料テックの全体像に加え、ロジスティクス戦略グループ統括部長の髙木宏治氏が、物流現場における具体的な取り組みと今後の展望を紹介した。
自販機65万台の運営にもAIを活用、販売データから品揃えや補充を最適化
日本のコカ・コーラシステムは、日本コカ・コーラと5つのボトラー社、関連会社で構成される。日本コカ・コーラが製品の企画開発やマーケティングを担い、ボトラー社が製造や販売、回収、リサイクルなどを担当する。
このうち、コカ・コーラ ボトラーズジャパンは35都府県を営業地域とする国内最大のボトラーで、日本のコカ・コーラシステムにおける販売量の約9割を担う。2025年時点で約65万台の自動販売機と17の製造工場を保有している。
同社が推進する「飲料テック」は、AIやデータなどのテクノロジーを活用し、業務プロセスや意思決定の仕組みを変革する取り組みだ。現場で培った経験や知見とデータ分析を組み合わせ、判断の迅速化や精度向上、生産性・収益性の改善を目指している。
同社の経営計画「VISION 2030」では、2030年に向けて300億~350億円の変革効果を目標としている。また、事業利益800億円以上、投下資本利益率(ROIC)10%という経営目標の達成に向け、飲料テックを重要な施策の一つと位置付けている。
飲料テックの具体例の一つが、自動販売機事業におけるAIとデータの活用だ。
新規設置の営業活動では、複数のデータを組み合わせたターゲティングツールを活用し、設置候補地の調査や営業先の優先順位付けを行っている。設置後は、過去の販売実績や類似する自動販売機の販売状況、立地環境、季節性などをAIで分析し、自動販売機ごとの品揃えや在庫配置の最適化を図っている。
商品補充の効率化にも取り組む。従来は担当者が自動販売機の前で在庫を確認し、補充本数を判断していたが、販売データを活用することで、出発前に補充する商品と本数を決定し、倉庫で準備する仕組みの導入を進めている。
ただし、こうした取り組みの導入範囲は現時点では限定的で、今後の拡大を目指している。同社は、自動販売機1台ごとの収益性を高めることで、収益性の高い自動販売機ネットワークの構築を進める方針だ。
物流の「最適解」は常に変化する、17工場と約290拠点をデータでつなぐ
ブリーフィングに登壇した髙木氏は、同社が進める物流改革について説明した。
髙木氏は、サプライチェーンについて「固定された最適解はない」と指摘する。製品をどこで製造し、どの経路で運び、どの拠点から供給するかという判断は、需要や気温、天候、在庫、設備の稼働状況などによって変化するためだ。
また、自然災害やサイバー攻撃、設備停止などの突発的な事態が発生した場合には、供給体制の変更や復旧対応も必要になる。
そこで同社が重視しているのが、変化を察知し、評価、決断、実行、回復へとつなげる「Adaptive Supply Chain(変化に適応するサプライチェーン)」という考え方だ。
髙木氏は、最新技術の導入自体が目的ではなく、現場で日常的に使われる仕組みを整備することが重要だと説明した。同社では、データの活用や業務プロセスの標準化を進め、需要から顧客への配送までを一体的に管理することで、変化に対応できるサプライチェーンの構築を目指している。
同社の物流ネットワークは、17の製造工場、埼玉県と兵庫県に設けた2つの大規模自動物流センター「メガDC」、約290のセールスセンターなどで構成される。
また、同社は一部を除いて卸売業者を介さず、顧客への最終配送までを担う直販モデルを採用している。製造から最終配送までを一貫して担う強みを生かし、需要に応じて生産拠点や配送ルートを最適化している。
その一例が、各地域で販売する製品をできる限り近隣の工場で生産する「地産地消」の推進だ。ただし、すべての工場で全製品を生産できるわけではないため、生産効率と物流効率の双方を考慮する必要がある。
同社は、地産地消と全社横断の需給管理を組み合わせることで、2022年と比較して輸送距離を23%短縮したという。
物流拠点の配置についても、メガDCを基幹拠点としたネットワークの再構築を進めている。2017年の会社発足以降、約90拠点を閉鎖し、物流ネットワークの簡素化を図ってきた。
自動運転フォークリフトや荷役設備を導入、トラックの待機時間も削減
物流現場の省人化に向けては、自動物流センターや自動運転フォークリフトなどの導入を進めている。
埼玉県と兵庫県のメガDCでは、混載パレタイジングロボットや高速搬送台車、パレット自動倉庫などを活用。顧客からの注文データに基づき、製品のピッキングや配送先ごとのパレットへの積み付け作業を自動化している。
従来は各物流拠点で個別に行っていた作業をメガDCに集約することで、下流の拠点における作業負担の軽減につなげている。
山梨県の白州工場では、豊田自動織機と連携し、国内初となる4本フォークタイプのトラック荷役対応自動運転フォークリフトの実稼働を開始した。トラックの停車位置を認識し、パレットに積まれた製品の積み込みや積み下ろしを自動で行う仕組みだ。
さらに、海外の物流事例を参考にした「RORO(Roll-on/Roll-off)」と呼ばれる自動荷役設備も導入している。約1500ケースの製品を一括してトラックに積み込んだり、積み下ろしたりできる設備で、荷役作業時間を約7割削減したという。
こうした設備の導入により、製造から出庫までの工程の自動化を進めている。
一方、トラックドライバーの待機時間削減にも取り組んでいる。同社では、バース予約管理と荷役体制の見直しにより、トラックが倉庫に到着してから荷役を開始するまでの待機時間を14分に短縮したという。
その施策の一つが、トラックの荷役場所である「バース」の予約管理システムだ。
従来、バースの予約は運送会社の担当者が事前に行うことが一般的だった。しかし、当日の渋滞や前の配送先での作業遅延などにより、予定どおりに到着できない場合がある。
そこで同社は、ドライバー自身がスマートフォンから空いている時間帯を確認し、予約を変更できる仕組みを導入した。変更内容は倉庫側の作業計画にも自動的に反映されるため、電話による連絡や調整の負担を軽減できる。
髙木氏によると、倉庫側の準備時間を確保するため、予約変更には締め切り時間を設けているという。
一方、自動化設備の運用には課題もある。髙木氏は「メガDCの維持管理や設備の停止への対応、保守を担うエンジニアの確保などについて、当初の想定以上に苦労している」と説明。同社では、技術者の育成や保守業務の内製化も進めていきたい考えだという。
ファミリーマートや伊藤園と共同配送、顧客ごとの物流サービスも最適化
コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、自社の物流ネットワークの効率化に加え、他社との連携にも取り組んでいる。
説明会では、ファミリーマートとのラストマイル配送リソースの共有、伊藤園との特定地域におけるラストマイル共同配送、中部興産・スギ薬局との共同フロントセンターへの納品による物流ネットワーク改善などの事例が紹介された。
こうした物流分野での協業では、物流フローの類似性や相乗効果、顧客ニーズなどを踏まえてパートナーを選定し、物流リソースの有効活用を図っている。
また、顧客への配送サービスについては、「物流サービスのメニュー化」を進めている。すべての顧客に一律のサービスを提供するのではなく、配送頻度やリードタイム、時間帯指定、最小発注単位、受け取り方法、検品などの付帯作業について、顧客ごとに必要なサービスを選択できる仕組みを目指す。
例えば、毎日少量の商品を配送している顧客については、保管スペースなどの条件を踏まえ、配送頻度を減らして1回当たりの配送量を増やすことを検討する。同社では、営業部門とサプライチェーン部門が連携し、顧客と個別に協議しながら配送条件の見直しを進めているという。
同社は、こうした他社との連携や物流サービスの見直しに加え、AIやデータの活用、物流現場の自動化を推進することで、持続可能な物流の実現を目指している。




