NECは10月20日、顧客企業の経営課題の解決や事業変革を支援する新施設「BluStellar Studio」をNEC本社ビルの1階に開設したと発表した。

同施設は、従来のショールームとは異なり、先進技術の体験に加えて、顧客との対話を通じて課題を整理し、具体的な解決策や意思決定につなげることを目的としている。

同日開催されたメディア向け内覧会では、AIによるサプライチェーン管理、映像解析を活用した作業の可視化、セキュリティ技術、顔認証を活用した受付システムなど、4つのデモンストレーションが紹介された。

  • NEC本社ビル1階に開設された「BluStellar Studio」

    NEC本社ビル1階に開設された「BluStellar Studio」

「見せる」から「解決する」へ、顧客ごとにプログラムを設計

「BluStellar Studio」は、NECの価値創造モデル「BluStellar」の取り組みの一環として開設された施設で、法人顧客を対象とした完全予約制となっている。

BluStellar Studioの施設長を務める田中秀明氏によると、AIをはじめとする技術の進歩が加速する一方、顧客からは「技術を自社の業務にどう活用すればよいのか」「どの課題から優先的に取り組むべきか分からない」といった声が寄せられていたという。

これまで同じ場所に設けられていた「NEC Future Creation Hub」には年間約5000人が来場していたが、技術を見学して終わるケースも多かったという。

そこで新施設では、来場者数よりも顧客との対話を重視する方針に転換。田中氏は、施設が目指す姿について「意思決定を一気に前に進める」ことだと説明した。施設内は、顧客との対話を促す「ホスピタリティ」と、技術やサービスを体験する「エクスペリエンス」の2つの考え方に基づいて設計されている。

施設では、NECが展開する「BluStellar Scenario」に基づく8つのプログラムを用意。展示コンテンツをモジュール化することで、顧客の経営課題や関心に合わせて内容や配置を変更できる。NECの営業担当者やスタジオのスタッフに加え、必要に応じてコンサルタントや各部門の専門家も参加する。

また、課題が明確になっていない企業に向けては、生成AIとコンサルタントを組み合わせたワークショップを提供する。AIが提示する仮説や示唆をもとに議論し、解決すべき課題や優先順位、今後のロードマップを整理する仕組みだ。NECによると、通常は数カ月かかる課題抽出や推進テーマの策定を短時間で行うことを目指しているという。

需要急増をAIが検知、生産計画の修正まで提案する「SCM AIエージェント」

内覧会で最初に紹介されたのは、サプライチェーンマネジメント(SCM)の業務を効率化する「NEC SCM AIエージェント」だ。

同技術は、全体を統括する「オーケストレーターAI」の下で、需要変動の検知や需要計画の策定などを担当する複数のAIエージェントが連携し、分析や対応案の作成を行う仕組みだ。

  • 「NEC SCM AIエージェント」の画面イメージ

    「NEC SCM AIエージェント」の画面イメージ

デモンストレーションでは、ある製品の需要が急増したケースを再現した。

需要変動を検知するAIが、製品「A001」の顧客需要予測が直近2週間で前年同期比38%増加していることを発見。過去24カ月のデータをもとに変動の要因や影響範囲を分析し、翌月の生産計画について、製品A001を20%、関連製品A002を15%上方修正する案を提示した。

担当者はAIの提案を承認するだけでなく、却下したり、修正を指示したりすることもできる。また、AIエージェントの構成は固定されておらず、顧客の業務や既存システムに合わせて変更できるという。

作業員の動きをAIが分析、学習なしで新たな動作も検知

続いて紹介されたのは、カメラで撮影した映像から作業員の動きを解析し、作業内容や進捗状況を自動的に記録する技術だ。

デモンストレーションでは、作業員がテーブルを組み立てる工程を再現。システムに作業指示を入力すると、AIが作業員の人数などをもとに効率的な作業手順を判断し、部品の取り出しから組み立て、完成品の運搬までの動きを認識して、画面上に進捗率を表示した。

同技術の特徴は、NECが蓄積してきた動作データを活用することで、一般的な動作であれば、顧客ごとに新たな学習データを収集する必要がない点だ。認識させたい動作を単語で入力するだけで検知できるという。

物流倉庫を対象とした検証では、運搬など8種類の動作を検知・分析し、業務改善によって約20%の省人化が見込めるという結果も得られている。

また、顔情報を登録している場合には、作業内容や所要時間に加えて、誰が作業を担当したのかを把握することもできる。

PCの不正操作を検知、立ち止まらずに本人確認する顔認証も

内覧会では、サイバーセキュリティと顔認証に関する技術も紹介された。

セキュリティ分野では、TPM(Trusted Platform Module)を活用したゼロトラストの仕組みを展示。デモンストレーションでは、「利用者本人の認証」「物理キー」「PCの正常性」という3つの要素を組み合わせ、正規の利用者ではない人物による操作や、PCへの不正な変更を検知する様子が紹介された。

さらに、機器の構成情報などを証明し、異なるメーカーのPCを横断して管理できる仕組みも紹介された。

  • 利用者認証や物理キー、PCの正常性を組み合わせたセキュリティ技術のデモンストレーション

    利用者認証や物理キー、PCの正常性を組み合わせたセキュリティ技術のデモンストレーション

顔認証技術を活用した展示では、来場者が立ち止まることなく本人確認を行える「ゲートレス生体認証」が紹介された。

事前に顔情報を登録しておくことで、来場者がカメラの前を通過する際に本人確認を行い、ディスプレイに行き先などを表示する。顔だけでなく、体の特徴や動きも捉えるため、人が重なって顔が一時的に見えなくなった場合にも、対象者を追跡できるという。

受付スタッフはタブレット端末で来場者の情報を確認できる。NECの入社式で活用した事例では、受付時間を約半分に短縮し、受付スタッフも約6人から約3人に削減できたという。