エクストリーム-D、TES-AMM JAPAN、Cornelis Networksは10月20日、循環型GPUサーバを活用したAIインフラサービス「Raplase RCA」の提供を開始した。GPU不足や価格高騰が続く中、既存GPU資産を再活用することで企業のAI基盤導入を支援する。

新サービスではITAD(IT Asset Disposition:IT資産処分)を通じて確保したGPUサーバを活用し、エクストリーム-Dがスーパーコンピュータの構築・運用で培った技術で性能を最適化するという。TES-AMMはGPUサーバの調達・安定供給、Cornelisは複数のGPUサーバを接続する高速・低遅延ネットワークを提供する。

  • 3社によるビジネススキームの概要

    3社によるビジネススキームの概要

GPU不足と価格高騰を背景に循環型GPUサーバをAI基盤へ再活用

エクストリーム-Dは、2015年2月に創業したITスタートアップでスーパーコンピュータの技術と、高性能なWebアプリケーションを開発している。研究開発向けにスーパーコンピュータをサービスのように手軽に利用できる「Raplase」を開発し、直近1年ではAIに取り組む企業にも活用されている。

昨今、生成AIの普及に伴い、GPUサーバをはじめとするAIインフラへの需要が拡大する一方で、調達リードタイムの長期化や価格高騰が企業のAI活用を進めるうえでの課題となっている。

また、企業における生成AIの本格運用が進む中、機密情報や自社データを自社の管理下で扱うローカルAIへのニーズも高まっているが、導入には用途に応じた演算性能のサイジングyシステム設計、AI基盤の構築・運用が必要となり、専門的な知見や導入・運用コストがハードルになっている。

エクストリーム-D 代表取締役社長 CEO 兼 最高技術責任者の柴田直樹氏は「高騰を続けるAIインフラの導入コストへの対応策として、当社では“循環型サーバ”に着目した。循環型サーバは1世代または2世代前のGPUを搭載したサーバを指し、NVIDIAなどの企業は毎年のように最新のGPUを発表するが、すべての企業がその性能を100%必要としているわけでない。時には最新GPUがオーバースペックになり、多額の費用を支払うことがAIインフラの導入に悩む一因になる」との認識だ。

  • エクストリーム-D 代表取締役社長 CEO 兼 最高技術責任者の柴田直樹氏

    エクストリーム-D 代表取締役社長 CEO 兼 最高技術責任者の柴田直樹氏

実際、米国ではGPUクラウドに特化したネオクラウドと呼ばれるプレイヤーが登場しており、数世代前のGPUに関する再契約も増加しているという。柴田氏は「こうした状況をふまえると、最新のGPUだけでなく、既存のGPUを有効活用する市場は今後も存在すると考えている」と話す。

ローカルAI需要に応える「Raplase RCA」、クラウドとオンプレミスに対応

そこで、3社は一定期間使用されたGPUサーバの性能を最適化し、企業のAI基盤として再活用する新たなAIインフラの提供モデルとしてRaplase RCAを構築した。

新サービスは、既存のAI基盤サービス「Raplase AI Next」の新たな提供形態として位置付けられる。従来は顧客ごとにGPUサーバやクラウド環境の選定が必要だったが、Raplase RCAでは循環型GPUサーバを活用した環境をサブスクリプション形式で提供することで、ローカルAI環境を迅速に利用できるようにした。

また、クラウド型だけでなくオンプレミス環境にも対応し、機密情報や自社データを自社管理下で扱いたい企業のニーズにも応える。利用するITAD機器については前所有者や使用履歴を把握しているほか、AI基盤に対応した高品質なデータセンターを確保。機器の来歴や設置場所を明確化することで、企業が安心して利用できるAI基盤を提供するという。

  • 機器の来歴を把握、データを完全消去し、データセンターも確保

    機器の来歴を把握、データを完全消去し、データセンターも確保

性能面では、富士通の「AI Computing Broker(ACB)」とエクストリーム-D独自のチューニング技術を組み合わせることで、従来は最新GPUでなければ動作が難しかった大規模AIモデルを旧世代GPUでも利用可能にする。さらに、利用シナリオに応じたレコメンド機能やリオーダー機能を備え、確保済みの在庫であれば最短即日で利用を開始できるという。

  • 最短即日で利用を開始できるという

    最短即日で利用を開始できるという

提供形態は、サーバを1社で占有するDedicated(専有型)と、1GPU単位で利用できるShared(共有型)の2種類を用意。専有型は高い安全性やカスタマイズ性が特徴で、自社設置にも対応する一方、共有型は初期投資を抑えながら利用できる。

物理GPUを専有割り当てすることで性能とセキュリティの両立を図る。利用可能なGPUとしては「NVIDIA A100」や「同H100」「同RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition」などをラインアップする。

  • 提供形態の概要

    提供形態の概要

2027年に事業規模10億円超を目指し海外展開も視野

事業展開としては、まず2027年3月までに初期顧客10件以上の獲得と販売パートナー経由での展開を進める。その後、2027年には提供機種と販売網を拡充し、事業規模10億円以上を計画、2028年にはGPU供給体制の強化と循環型AIインフラのサイクル確立を目指す。

さらに2029年以降は新たなパートナーとの連携を進め、海外展開も視野に入れながら事業規模の拡大を図る方針だ。

  • 「Replase RCA」の事業展開

    「Replase RCA」の事業展開

TES-AMM JAPAN 代表取締役の小沢国彦氏はエクストリーム-Dが持つAIインフラ基盤と、同社が29カ国ぶ持つグローバルなサプライチェーンを組み合わせることで、新たな事業を展開できると考えたことが協業の出発点だと明かした。同氏は「まずは日本で成功事例を作り、それを世界へ展開していきたい」と述べた。

  • TES-AMM JAPAN 代表取締役の小沢国彦氏

    TES-AMM JAPAN 代表取締役の小沢国彦氏

また、Cornelis Networksは400Gbps対応のAI・HPC向け高速ネットワーク製品群「CN5000 Omni-Path」を提供し、通信のボトルネックを低減することでGPU資源の価値を最大化できるとしている。同社 日本・アジア太平洋地域統括の山﨑拓慈氏は「AI分野ではGPU性能の向上に対しネットワークがボトルネックになりつつある。既存GPUサーバを有効活用し、GPU資源の価値を最大化するというReplase RCAの考え方は当社の方向性とも一致している」と力を込めていた。

  • Cornelis Networks 日本・アジア太平洋地域統括の山﨑拓慈氏

    Cornelis Networks 日本・アジア太平洋地域統括の山﨑拓慈氏

新サービスは、リユースのGPUサーバを単に再販売するのではなく、エクストリーム-DのHPC技術、TES-AMM JAPANのグローバル調達網、Cornelis Networksの高速ネットワークを組み合わせてAI基盤として再構築する点が特徴だ。AIインフラ不足が続く中、循環型GPUサーバという新たな選択肢がどこまで市場に浸透するのか注目される。