設計期間とコストの課題に「AI基盤モデル」で挑む

AIなどのソフトウェア技術が急速に進化する一方で、半導体開発は依然として時間とコストの制約が大きい分野の一つだ。製品企画から設計を経て、実際の製造まで3~5年を要し、プロセスノードによるが、先端プロセスの開発・製造には数百億円規模の投資が必要とされるほか、設計手法自体も基本的にはVerilogやVHDLなどのハードウェア記述言語(HDL)を、EDAツールを活用して回路データを設計、半導体マスク製造用のGDS-IIというフォーマットへと落とし込んで実際に半導体製造を行うという流れ自身は長年大きく変わっていない。そうした半導体設計・製造に対する課題に対し、半導体設計にAIを取り入れることで解決しようというアプローチが近年、注目されるようになってきた。

SBIホールディングスの子会社であるSBIインベストメントは4月2日、同社が運営する「SBIデジタルスペースファンド」を通じて、半導体設計に特化したAI基盤の開発を行っている米Cognichipに出資したことを発表した。

AIで半導体設計のボトルネック解消を目指す

AIの活用の広がりに併せて、その処理を担う半導体需要も高まりを見せる一方、半導体の設計および製造に必要な熟練技術者の数は2030年までに100万人以上不足するとの予測もあり、日本でも政府を挙げて半導体人材の育成を推進しているが、一朝一夕で育つものでもなく、半導体開発の効率化が求められるようになっている。

そうした中、Cognichipが開発を進めているのが、半導体設計向けの独自AI基盤モデル「ACI(Artificial Chip Intelligence)」で、半導体設計に必要な論理や物理法則を基礎から学習させた半導体設計に特化したAIだという。

設計期間の短縮で開発コスト75%削減をへ

Cognichipによると、ACIを活用することで、これまで数か月を要していた複雑な設計作業を数日程度に短縮できるとするほか、開発コストを最大75%削減できるとしている。特徴的なのは、自然言語による指示を通じてAIが設計や修正を支援することが可能な点で、熟練技術者に依存してきた工程をAIが補助することで、限られた専門人材だけでなく、より幅広いエンジニアが高品質な半導体設計に関われる環境の実現を目指しているという。

今回の投資を踏まえCognichipは今後、ACIの高度化に加え、SOC2(System and Organization Controls for Service Organizations)準拠などの半導体業界の基準を満たすセキュリティ環境の整備を進め、グローバル企業での採用拡大を狙うとしている。設計データや知的財産を扱う分野だけに、AI活用においてもセキュリティと信頼性が重要な差別化要因となりそうだ。

なお、SBIインベストメントでは、SBIグループがこれまで、Preferred NetworksやTenstorrent、Majestic Labs、EdgeCortixなどといった半導体分野で革新的な技術を持つ企業への投資を通じて構築してきた独自のエコシステムとの連携も視野に入れながら、Cognichipの事業成長とグローバル市場での展開を支援していくとしている。

半導体設計の効率化は、単なるコスト削減にとどまらず、次世代デバイスの開発スピードや競争力そのものを左右するテーマであることから、CognichipとSBIインベストメントの取り組みは、設計という半導体の中でも保守的な領域に対するAIの活用に向けた試みとして注目される。