イラン紛争による原油価格の高騰が石油化学バリューチェーン全体に波及するにつれ、フラットパネル・ディスプレイ(FPD)用光学フィルム市場がコスト上昇圧力に直面していると、英国の市場動向調査会社Omdiaが報告した。

石油化学に依存するディスプレイ用光学フィルム

ディスプレイ用偏光板やバックライトは、さまざまな機能性フィルムで構成されているが、そられのほとんどが石油化学由来のポリマーを原料としている。

例えば、ディスプレイ業界で広く用いられているポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)といった主要なフィルムは、いずれもナフサを原料とする基本的な石油化学原料から製造されているが、ナフサは分解処理を経て、エチレン、プロピレン、パラキシレン(PX)、ベンゼンなどの基礎石油化学製品に変換された後、さまざまな中間化学製品やポリマーを経て、最終的にフィルムへと加工される。

そのため、イスラエルと米国が引き起こしたイラン紛争に伴うホルムズ海峡の封鎖により国際原油価格が上昇すると、石油化学産業全体の価格上昇につながり、長期的にはディスプレイ用光学フィルムのコストにも影響を与える可能性がでてくる。

  • 主要な光学フィルム材料の石油化学バリューチェーン

    主要な光学フィルム材料の石油化学バリューチェーン。略称は以下の通り、PX(パラキシレン)、BPA(ビスフェノールA)、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、ODA(4,4′-オキシジアニリン)、VAM(酢酸ビニルモノマー)、MMA(メタクリル酸メチル)、PTA(精製テレフタル酸)、DMT(ジメチルテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PVA(ポリビニルアルコール)、COP(環状オレフィンポリマー) (出所:Omdia)

ディスプレイパネルへの潜在的なコスト圧力

ナフサは光学フィルムに使用される主要なポリマー材料のもとになるだけでなく、アセトンやキシレン、IPA、トルエンなど、同プロセスで使用される有機溶剤のほとんどの原料でもあるため、材料費に加えて、プロセスコストにも影響を与える可能性をOmdiaでは指摘している。

ただし、石油化学製品や原材料は通常1か月分は在庫を有しているため、原油価格が上昇したからといって、すぐにフィルム価格に反映されるわけではなく、約1~2か月の余裕は持たせることができる。しかし、原油価格のさらなる上昇や紛争が長期化する場合、原油価格の上昇が光学フィルムのコストに影響を与える時期に注意する必要がある。Omdiaでは、特に、石油化学由来の原料であるポリマーや有機溶剤などがフィルム製造コストの50%以上を占めるなど、材料費がフィルム業界全体の総コストのかなりの部分を占めることを考えると、石油化学原料の動向がかなりの影響をもたらすことが懸念されるとしている。

すでに半導体価格の高騰がディスプレイ業界のコスト負担を増大させている現状を踏まえ、石油化学製品の価格も上昇した場合、パネル製造のコスト構造に大きな負担をかけることになるとOmdiaは見ている。