福井市自然史博物館と京都大学(京大)の両者は3月10日、福井市足羽山(あすわやま)に位置する七ツ尾口坑道で採集された「トビムシ」の一種について、詳細な形態観察およびDNA解析を実施した結果、同坑道の6種目の新種生物であることを確認し、「アスワホラトゲトビムシ」(学名:Plutomurus asuwaensis)と命名したと共同で発表した。

同成果は、京大 理学研究科の中野隆文准教授、同・永井僚大学院生、福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員、鳥取県立博物館の一澤圭主幹学芸員らの共同研究チームによるもの。詳細は、動物の系統分類と新種記載を専門とする主要な学術誌「Zootaxa」に掲載された。

  • アスワホラトゲトビムシの側面と背面

    新種として記載されたアスワホラトゲトビムシの側面(左)と背面(右)(出所:福井市自然史博物館プレスリリースPDF)

福井市自然史博物館では2017年11月より、江戸時代以前から1999年までの長期間にわたり、福井の名石として知られる「笏谷石(しゃくだにいし)」が採掘されてきた同市の足羽山七ツ尾口坑道において、地下性動物の継続的な調査を実施中だ。足羽山は固有種が多く、2022年には4種目となる「アスワタテウネホラヤス」が、2023年には5種目となる「アスワメクラヨコエビ」が相次いで新種登録されていた。

こうした精力的な調査の過程で、同博物館の梅村学芸員により、新種の可能性があるトビムシの一種が新たに採取された。京大の中野准教授の研究室および鳥取県立博物館が依頼を受け、形態およびDNAに基づいた解析を実施したところ、足羽山固有(現時点で)の新種であることが確認されたという。

採取地の足羽山にちなみ、学術名は「Plutomurus asuwaensis」、和名は「アスワホラトゲトビムシ」と命名された。同種は、節足動物門昆虫亜門内顎綱(ないがくこう)トビムシ目トゲトビムシ科ホラトゲトビムシ属に分類される。トビムシ類は広義の昆虫に含まれることもあるが、現代の分類学では昆虫綱(外顎綱)とは別系統の原始的なグループとされることが多い。

アスワホラトゲトビムシの体色は白っぽく、背面や脚は灰色がかっており、体長は3.2~3.5mm程度。また、目は地下性動物らしく退化しており、暗黒の地下環境に適応した形態を有している。同属の他種とは、眼を持たないこと、前口唇の剛毛数、爪の形状といった形態的特徴に加え、ミトコンドリアCOI遺伝子のDNA配列の違いによって区別されるとした。

ホラトゲトビムシ属は北半球を中心に分布し、土壌中や洞窟などの地下空間に生息する生物のグループだ。これまで世界において36種、日本では10種が既知種として報告されていたが、今回の発見により国内では11種目の確認となった。アスワホラトゲトビムシは、七ツ尾口坑道において1年中観察され、坑道内の朽木の下などに生息しており、個体数も多いという。

福井市自然史博物館では今後、野外観察や飼育によりアスワホラトゲトビムシの生態解明を目指すとする。また、現時点では足羽山固有種とされているが、県内の他の洞窟での調査を実施し、大野市や敦賀市、小浜市など、福井県内で発見されている既知種以外に近縁種がいるか、アスワホラトゲトビムシが本当に足羽山固有種なのかの確認も進めていくとした。

また同博物館では、少人数・通年型の昆虫講座「足羽山むしむしスクール」を毎年主催しており、七ツ尾口坑道の節足動物の標本や生体観察の機会を提供してきた経緯がある。アスワホラトゲトビムシについても今後の観察対象とし、子どもたちに郷土の自然や、昆虫研究への関心を深めてもらうためのきっかけとしたいとする。同様に展示などを通し、広く市民にも郷土の自然について関心を持ってもらうきっかけとしたいとしている。