将来宇宙輸送システム(ISC)は、同社と包括連携協定を締結している荏原製作所が開発中のロケットエンジン用電動ターボポンプを搭載した、液体燃料ロケットエンジンの着火試験に成功したことを明らかにした。
従来のロケットエンジンに搭載されているターボポンプは、ポンプ駆動用燃焼器で発生させた高温・高圧のガスを使用してタービンを回転させ、その力でポンプを駆動するものが主流だという。そのため主燃焼室・ポンプ駆動用燃焼室の双方に、流量を制御しつつ燃料を供給する複雑な燃料供給システムや、高温のガスで駆動しつつ極低温の燃料を主燃焼室に送り込むポンプの熱対策・密封保持、複雑な燃焼システム全体の正確な制御などの技術が必要とされ、その開発難度や期間、要するコストが増大する要因となっているという。
こうした課題の解決に向け、再使用型ロケットの開発および社会実装を目指すISCは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のエンジン用ターボポンプ改良への支援などを通じ宇宙機開発における知見を培ってきた荏原製作所との間で、2024年9月に包括連携協定を締結。荏原製作所が開発する電動ターボポンプの研究・開発を共同で推進してきた。
同車の電動ターボポンプは、バッテリーの電力でモーターを回転させてポンプを駆動させる方式であるため、燃料供給流路は主燃焼室への一系統のみに集約されるとのこと。加えてポンプの動力源も燃焼器から電動モーターに置き換わるため、燃焼サイクルが簡素化されその制御も容易となる。さらに動力部と通液部の温度差が低減されるため、熱対策や密封保持の設計難度緩和にもつながり、結果として開発難度や開発期間、コストの低減が実現されるとしている。
両社はこれまで、今回のポンプシステムに加えて、アジャイル型開発手法の導入や独自の研究開発プラットフォーム「P4SD」の活用などにより、開発を加速。2024年10月の開発開始から約15か月という短期間で、設計・製造・各コンポーネントの単体試験を重ね、電動ターボポンプを組み込んだエンジンシステムの着火試験に至ったとする。
なお荏原製作所は、開発品の信頼性を向上させるため、2025年9月に液体燃料および液体酸素を用いた性能試験を行い、電動ターボポンプシステムの機能性と耐久性を確認していることを発表済みだ。そして1月19日から1月30日にわたって滋賀県高島市内で行われた今回の「液体ロケットエンジン ポンプ組み込み着火試験」では、ポンプを組み込んだエンジンシステムを燃焼試験設備に接続して試験を行い、着火が可能であることに加え、計測・制御機能を含むシステム全体の成立性を確認することを目的に設定。その結果、着火に向けた一連のシーケンスの妥当性や着火が可能であることを確認するとともに、システム全体の成立性を確認し、今後予定されるエンジン出力を上昇させた試験に向けた各種データの収集にも成功したとのことだ。
ISCと荏原製作所は、今回の試験が、電動ターボポンプを組み込んだエンジンシステムで着火までの主要機能が成立することを確認するものであり、その成功により、液体ロケットエンジンシステムの着火が可能であることを確認し、エンジン出力を上げるための準備が整ったことから、ISCが進める自社エンジン開発の実現性を一段階前進させる重要なマイルストーンとなったとする。また今後は燃焼を伴わない条件下で昇速・推進剤流量増大に関する試験を実施し、過渡特性や定格流量に達するまでの時間と想定値との評価を行うという。その後は結果を基に適切な制御パラメータを定め、エンジンに着火させて出力を段階的に上げる試験へと進む予定だとしている。

