スペースワンは、カイロスロケット3号機の打ち上げを3月4日以降に延期することを、中止発表後の記者会見のなかで明らかにした。打ち上げ時刻は11時ちょうどを予定しており、正式な日時はこれまで通り、打ち上げ2日前に発表するとしている。
既報の通り、カイロスロケット3号機は固体3段+小型液体ブースターで構成した、全長18m・重量23tの小型ロケットで、高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に打ち上げる。今回のミッションでは、テラスペースの「TATARA-1R」をはじめ、計5機の人工衛星を宇宙へ運ぶ。
当初は2月25日に打ち上げる予定だったが、天候判断により一度延期し、3月1日11時から11時20分の間に打ち上げることにしていた。しかし当日、発射30分前の10時半過ぎになって打ち上げ中止を決定したため、これで2度目の延期となった。3月2日から3日にかけては天気が崩れる予報だが、4日以降は持ち直すことから、この日以降で打ち上げを再設定することになったかたちだ。
風が弱くても“ロケットが壊れる”理由とは
カイロスロケット3号機の打ち上げにあたり、スペースワンはこれまで取得してきた各種気象データに基づき、機体にかかる荷重などを考慮して飛行経路を事前に計画している。
記者会見に登壇した同社執行役員の阿部耕三氏は、3月1日の上空の風速が事前の想定よりも弱く、安全な飛行に適さない条件だったことが、今回の延期理由だと説明。そのまま打ち上げると、ロケットの段間部(1段目と2段目の間など)やフェアリングなどに想定外の負荷がかかる可能性があったという。
9時45分のGO/NOGO判断では打ち上げGO判断となっていたが、その後、気象観測用の気球から得た最新のデータをもとに天候分析を行い、打ち上げに適さないと判断。10時30分頃、同日の打ち上げ中止を発表した。
その詳細について阿部氏は、「高度10km付近の風が弱く、飛行経路を設定する際に前提としていたデータ(冬季1〜3月の風向き・風速)と乖離していた。高度約7〜12kmあたりにあるジェット気流(西風)が大幅に弱まり、射場周辺が春先のような気象状況になっていた」と説明。
「たとえ話だが、高度10km付近で、機体に対する向かい風が秒速60mの風があると想定して準備していても、実際にはその半分、秒速30mしかなかった場合、飛行環境が変わってしまう。それが機体への荷重などに影響を与え、飛行中の機体が破壊されてしまうおそれがある。そういった可能性がある場合は、安全に配慮して打ち上げは行わない」(阿部氏)
一般に、地上から離昇したロケットは加速するにつれ、空気抵抗(動圧)による大きな負荷が機体にかかり、空気密度が低くなる高度からは弱まっていく。ロケットに最も負荷がかかる最大動圧点のことをマックスQとも呼ぶが、そこに至るまでの風の条件が、事前に設定した飛行計画の想定より強すぎても弱すぎても問題があり、今回は“弱すぎた”ためにカイロスロケット3号機の安全な打ち上げには適さない条件になってしまった、ということのようだ。
1日の串本町・那智勝浦町付近は穏やかに晴れていたと見られ、日曜日のお昼近くという見やすいタイミングでロケットが打ち上げられるはずだったのに、「天候分析を行った結果、延期を決めた」といわれても納得がいかない……という雰囲気は、記者会見の質問の端々からも感じられた。
阿部氏は「地元をはじめ、多くの皆様に応援いただいている中、延期続きとなったことについて、我々も忸怩たる思いがある。早く打ち上げて人工衛星の軌道投入を実現させたい」と述べた。
なお、報道陣との質疑応答のなかで阿部氏は、打ち上げ中止を決めたのがなぜ打ち上げ30分前という直前のタイミングになったのか、についても説明を加えている。
ロケットの打ち上げ当日には、気象観測用の気球から得られる高度10〜20kmの最新の気象データを分析する必要があるといい、「日本全体や射場周辺が晴れているか、雨雲や雷雲はないかといった気象予報は打ち上げ2日前にだいぶ見えてくるが、風の影響、特に(ロケットが通り抜けていく)高度別の風の情報といった、細かく局所的な気象環境を正確に把握するには、直前の観測によって得られた生データを見て判断しなければならない」のだという。
また、今回の飛行計画は冬季の風を想定したものという説明だったが、「最初から春の風を想定していれば飛べたのか?」という質問に対して、阿部氏は「そのように理解していただければと思う」と肯定している。
「季節毎の(風の)おおまかなトレンドがあり、我々も数年単位で取得したデータを持っている。今回は2〜3月に打ち上げるので、その時期の風や気象環境(冬型の気圧配置)で飛行計画を設定した」(同氏)としており、3号機の今後の打ち上げでもこの想定に基づく飛行計画を引き継ぐ考えを示している。また今後、打ち上げのオペレーションが増えていけば知見も溜まり、より柔軟な対応が可能になるだろう、とも話した。

