TSMCは2月10日、2026年1月の連結ベース月間売上高が前月比19.8%増、前年同月比36.8%増の約4012億6000万NTドルとなり、単月売上高として過去最高を更新したことを明らかにした。

この成長は、AI需要の拡大に加え、2025年の旧正月(春節)が1月で(2026年は2月17日)、その影響もあった可能性があるとの見方が台湾半導体関係者からは出ている。

  • TSMCの2026年1月の月間連結売上高と前月および前年同月との比較

    TSMCの2026年1月の月間連結売上高と前月および前年同月との比較(単位:百万NTドル) (出所:TSMC)

約450億ドル=約7兆円の投資を承認

同社は2月9~10日にかけて熊本県にて、熊本第1工場(Fab 23 P1)および建設を開始した第2工場(同P2)の視察を兼ねた取締役会を開催。その後、同社が発表した承認事項を見ると、市場の需要予測と自社の技術開発ロードマップに基づく長期的な生産能力計画の達成に向けて約449億6200万ドル(約7兆円)の工場建設や設備投資に対する資本支出を承認した。主な使途として以下を挙げている。

  1. 先端技術の生産能力の導入およびアップグレード
  2. 先端パッケージング、成熟技術および/または特殊技術の生産能力の導入およびアップグレード
  3. ファブの建設およびファブ施設システムの導入

ただし、熊本第2工場への投資を含めて具体的な資本支出先の内訳は公表されていない。また、同社は1月の決算発表時に2026年の資本支出額を520~560億ドル(約8兆円台)の計画としていたので、進捗などに併せた投資増額などが予想される。

このほか、取締役会では2025年度の事業報告および財務諸表、2025年度の従業員への業績賞与および利益分配賞与として総額約2061億4100万NTドルの支給も承認された。2025年末の同社従業員数は7万8000人ほどで、単純計算1人当たり264万NTドル(約1300万円)が支給される計算となる。

さらには、ファブオペレーション担当バイスプレジデントの YL Wang(王英朗)氏および先端技術・マスクエンジニアリング担当バイスプレジデントのTS Chang(張宗勝)氏のシニアバイスプレジデント昇進はじめ8人のバイスプレジデント級の昇進人事が承認された。

TSMCの製造・技術開発両面の後継者計画が鮮明に

台湾メディアの工商時報によると、この上級副社長級昇給人事は、先端プロセス世代の継続的な進歩と、台米日での新工場の同時開設に向けたプラットフォーム型組織構造の導入を加速させ、部門間の連携と意思決定レベルを強化し、次世代の人材配置と役割分担の基盤を築く狙いがあると見られるという。

Wang氏は、長年にわたり先端プロセスの量産とグローバルな生産能力計画を担ってきた人物で、台米日の新工場同時並行建設を指揮している。グローバルな製造体制強化のために同氏が Wei CEOの後継者候補に含まれたと業界関係者は見ている。

一方のChang氏は長年にわたり先端技術とフォトマスクエンジニアリングに関わってきた人物。プロセスの微細化がますます困難になるにつれ、フォトマスク準備、プロセス統合、そして歩留まり管理の重要性が高まっており、彼の主要エンジニアリング分野における戦略的立案は、TSMCの技術リーダーシップを支える重要な礎石とみなされてる。

このほか、研究開発およびプラットフォーム開発担当バイスプレジデントのMichael Wu氏と Geoffrey Yeap氏がともに、シニアバイスプレジデントに昇進した。さらに微細なプロセス開発強化に向けた布石と見られている。

TSMCの支援で台湾ITRIが設立する先進半導体研究拠点が起工式を実施

台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)傘下の工業技術研究院(ITRI)が2月10日、台湾北部の新竹県で「先進半導体研究開発基地」の起工式を行ったと台湾中央通信社が伝えている

同拠点は、約2年後の運用開始を目指し、以下の3点を「三大任務」とするという。

  1. 集積回路(IC)設計のイノベーション・検証
  2. 先端半導体プロセスの開発
  3. 装置・材料の国産化検証

建屋は2027年12月の完成予定で、2028年第1四半期より順次運用を始める予定だという。建屋とクリーンルームの投資額は37億7200万NTドル(約190億円)だという。

TSMCが積極的な支援をしており、全体設計についても多くのサポートやアドバイスを行っているほか、先端プロセス装置の一部も提供するという。拠点内には先端半導体プロセスやセンサチップ、先端パッケージングの試作ライン、計測などの実験室が設置され、将来的に半導体業者がデバイス開発にかかる時間を30%削減するのに貢献することが目標だとしている。台湾の政府系研究組織がTSMCの先端研究を側面支援することになるといえる取り組みである。