21世紀の最初の四半世紀が終わり、半世紀へ向けた新たな年が始まった。『2001年宇宙の旅』のような未来は実現しなかったものの、宇宙ステーションに人が常駐するようになり、民間の宇宙飛行が始まり、火星の地表を探査車が走行し、冥王星には探査機が到達した。私たちが夢見た「未来の宇宙開発」は、確実に現実へ近づいてきている。

2026年、宇宙開発における最大の話題は「月への再訪」になるだろう。約半世紀ぶりとなる月への有人飛行をはじめ、民間企業による月探査機も矢継ぎ早に送り出される見通しだ。

また、世界各地でベンチャー企業などが開発している新型ロケットの打ち上げも多数計画されている。

一方、日本は2025年、とくにロケット分野では計画の遅延や変更が目立った。2026年は、その遅れを取り戻せるかが焦点となる。

  • 月をフライバイする「オライオン」宇宙船の想像図 (C) NASA

    月をフライバイする「オライオン」宇宙船の想像図 (C) NASA

新たなる月探査の時代の幕開け

半世紀ぶりの月有人飛行「アルテミスII」

2026年の宇宙開発における最大の注目点は、米国航空宇宙局(NASA)による「アルテミスII」ミッションだ。アルテミスIIは、米国主導の国際有人月探査計画「アルテミス計画」の2番目のミッションであり、月ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」と宇宙船「オライオン」にとって初の有人飛行となる。

オライオンには、NASAのリード・ワイズマン宇宙飛行士、ヴィクター・グローヴァー宇宙飛行士、クリスティーナ・コッホ宇宙飛行士と、カナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン宇宙飛行士が搭乗し、月をフライバイして地球へ帰還する自由帰還軌道で飛行する。ミッション期間は約10日間を予定している。

人類が地球低軌道を超え、月周辺へ有人飛行するのは、1972年の「アポロ17」ミッション以来、50年以上ぶりとなる。

NASAは打ち上げ目標を2月から4月までと設定している。ミッションが無事成功すれば、2028年以降に予定されている有人月着陸ミッション「アルテミスIII」の実現に向けて大きな弾みとなる。

  • アルテミスIIに使われるオライオン宇宙船と、搭乗する宇宙飛行士たち (C) NASA

    アルテミスIIに使われるオライオン宇宙船と、搭乗する宇宙飛行士たち (C) NASA

月をめざす無人探査機も続々

さらに、アルテミス計画の一環として、複数の無人探査機が月に向けて打ち上げられる。

2026年の前半には、米宇宙企業ブルー・オリジンの月着陸機「ブルー・ムーンMK1」が、月の南極域への着陸をめざす。月南極域のクレーター内の永久影には水(氷)があると考えられており、将来の有人探査や月面基地建設の候補地とされることから、着陸技術の実証と、将来の有人月面探査に向けた技術基盤の確立をめざす。

  • ブルー・オリジンの月着陸機「ブルー・ムーンMK1」の想像図 (C)Blue Origin

    ブルー・オリジンの月着陸機「ブルー・ムーンMK1」の想像図 (C)Blue Origin

月の南極へは、7月頃にも米アストロボティックの月着陸機「グリフィン」の打ち上げが計画されている。

また、6月頃には、米ファイアフライ・エアロスペースの「ブルーゴーストM2」が、米国にとって初めてとなる月の裏側への着陸をめざす。同ミッションでは、月周回に欧州宇宙機関(ESA)の通信・データ中継衛星「ルナー・パスファインダー」を投入する。

このほか、米インテュイティヴ・マシーンズの「ノヴァC IM-3」が、月の嵐の大洋内にある「ライナー・ガンマ」と呼ばれる地質学的に興味深い場所の探査をめざすなど、まさに月面探査ラッシュの時代を迎える。

一方、月をめぐって米国と競争している中国は、南極域に向けて探査機「嫦娥七号」を打ち上げる計画だ。周回機と着陸機に加えて、探査車と飛び跳ねながら移動する探査機から構成され、水(氷)の探索をめざすとされる。

世界各地で新型ロケットが初飛行

小型機から再使用型まで目白押し

近年、世界各地でベンチャー企業などによる新型ロケットの初飛行が相次いでいるが、2026年もその流れは続く。

米国では、スペースXが開発中の巨大宇宙船「スターシップ」の飛行試験が続く。2025年は複数回の試験飛行が実施され、大気圏への再突入や着水などを通じて、開発データを積み重ねた。

2026年は、改良型「スターシップ・ブロック3」の導入が計画されている。打ち上げ能力や再使用性の向上を図りつつ、初の軌道投入をめざすほか、衛星放出や、軌道上での推進薬の移送(補給)試験などの実証に臨む。とくに推進薬移送は、スターシップを月着陸船として用いるアルテミスIIIの実現に必要であり、その進展は計画全体にも影響を及ぼす。また、イーロン・マスク氏は2026年末に、火星へ向けて無人のスターシップを打ち上げる目標を掲げている。

米ロケット・ラボの再使用ロケット「ニュートロン」も、2026年中に初打ち上げが計画されている。まるでSF映画から飛び出してきたような、過去に例のない姿かたちをもつロケットで、推進薬には液体酸素とメタンを用い、低軌道へ13tの打ち上げ能力をもつ。

  • ロケット・ラボの新型ロケット「ニュートロン」の想像図 (C)Rocket Lab

    ロケット・ラボの新型ロケット「ニュートロン」の想像図 (C)Rocket Lab

また、ファイアフライ・エアロスペースとノースロップ・グラマンが共同開発している大型ロケット「エクリプス」も、2026年中の打ち上げをめざしている。

欧州では、ドイツのRFAスペースによる「RFAワン」ロケット、フランスのマイアスペースの「マイア」ロケット、スペインのPLDスペースの「ミウラ5」ロケットの打ち上げなどが予定されている。また、2025年の初打ち上げでは失敗に終わった、ドイツのイーザー・エアロスペースの「スペクトラム」ロケットの再挑戦も予定されている。

中国では2025年、藍箭航天の「朱雀三号」、上海航天技術研究院(SAST)の「長征十二号甲」という、2機種のメタン燃料の再使用ロケットがデビューした。いずれも回収には成功しなかったが、得られたデータを踏まえて改良が進められている。

さらに中国では複数社が再使用ロケットの開発に挑んでおり、回収と再使用の実現をめぐる競争が加速する可能性がある。さらに中国では複数社が再使用ロケットの開発に挑んでおり、回収と再使用の実現をめぐる競争が加速する可能性がある。

また、ロシアの新型ロケット「ソユーズ5」も、第1四半期の初打ち上げを目標に準備が進められている。

試練味わう日本の基幹ロケット、民間の挑戦に注目

日本のロケットは2025年、天国と地獄を味わった。

新型基幹ロケットの「H3」は、2月に5号機で準天頂衛星システム「みちびき6号機」の打ち上げに成功し、10月には最も能力が大きい24形態(H3-24W)を用いた7号機で新型宇宙ステーション補給船1号機(HTV-X1)の打ち上げに成功した。そうした動きを見届けるかのように、H-IIAロケットが50号機で有終の美を飾って引退した。

しかし、12月にはH3ロケット8号機が打ち上げに失敗した。第2段エンジンの2回目の着火が正常に開始せず早期停止し、準天頂衛星システム「みちびき5号機」を所定の軌道へ投入できなかった。現在も原因究明が続いており、飛行再開のめどは立っていない。2026年予定されていた打ち上げにも遅れが生じる見込みであり、早期の原因究明と打ち上げ再開が待たれるところだ。

  • H3ロケット8号機の打ち上げ (C)宇宙作家クラブ/渡部韻

    H3ロケット8号機の打ち上げ (C)宇宙作家クラブ/渡部韻

また、小型ロケット「イプシロンS」も、第2段モーターの地上燃焼試験で2023年7月と2024年11月に燃焼異常が発生し、開発が停滞し、打ち上げのメドが立たない状況が続いた。JAXAは原因究明と対策の検討を進めており、2026年中に何らかの進展が得られることに期待したい。

民間企業では、2月25日にスペースワンの「カイロス」ロケット3号機の打ち上げが予定されている。カイロスは2024年3月の1号機打ち上げに失敗、同年12月の2号機も失敗しており、「三度目の正直」となるかどうかが注目される。

9月以降には、北海道・大樹町の北海道スペースポートに新たな射場「LC1」が完成する予定となっている。インターステラテクノロジズの小型ロケット「ZERO」の打ち上げをにらみ、試験などの動きが進むことが期待される。

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