東北大学は1月14日、2026年1月1日より全学組織であるグリーン未来創造機構内に、サステナブルな宇宙活動の実現と宇宙経済のさらなる発展を目的とし、科学とビジネスの近接化時代を先導する産学共創型研究開発拠点として、国内初となる「スペースクロステック研究センター」(SXT研究センター)を新たに設置し、活動を開始したことを発表した。

  • 「スペースクロステック研究センター」の関係者の集合写真

    「スペースクロステック研究センター」の関係者の集合写真(出所:東北大プレスリリースPDF)

軌道上サービス技術の研究開発センターが始動

近年、国際的な宇宙開発の拡大に伴い、ロケットや人工衛星などの打ち上げが大幅に増加しており、使用済みの宇宙機やロケット最上段などのスペースデブリの急増が課題となっている。この問題を解消と将来の高度な宇宙活動、ひいては宇宙経済のさらなる発展を可能にするための鍵となるのが「軌道上サービス技術」だ。

軌道上サービス技術とは、複数の宇宙機が軌道上においてサービスの授受を行う技術の総称である。サービス機が対象機へ近傍接近運用を行い、燃料補給・修理・交換・製造組み立てなどのサービスを提供することで、スペースデブリの除去や低減を実現する。持続可能な宇宙利用に不可欠な技術といえる。

日本の宇宙技術戦略をはじめ、世界中で重視されているこの技術の研究開発を強力に推進すべく、東北大が新たに設置したのがSXT研究センターだ。最先端宇宙技術の結集と分野横断的融合を計る研究開発拠点である。特に、東北大のこれまでの研究開発実績を最大限に活かした「小型高性能軌道上サービス技術」によって、新規宇宙活動領域を切り拓くとしている。

同センターは、国内外の大学・研究機関、宇宙スタートアップ、産業界、自治体との連携の下、技術の結集と融合を通した産学共創を強力に推進していくとする。研究成果の社会実装と新産業創出を加速させ、宇宙文化圏の拡大を牽引する中核拠点となることを目指すとした。

  • 新規宇宙活動領域の位置付けの概念図

    軌道上サービス技術に基づく新規宇宙活動領域の位置付けの概念図(出所:東北大プレスリリースPDF)

また同センターは、「宇宙工学技術の結集」、「実践的研究基盤」、「社会実装への橋渡し機能」、「分野横断的研究ガバナンス(将来計画)」という4つの特徴を備える。単なる研究拠点に留まらず、技術統合から実証、事業化、人材育成を循環的に生み出す宇宙イノベーションの中核拠点としての機能実現を目指すとしている。

1つ目の特徴の「宇宙工学技術の結集」は、軌道上サービスに求められる宇宙システム、宇宙ロボティクス・探査、高推力宇宙推進、宇宙通信といった各主要要素技術分野において、世界トップレベルの研究実績を有する研究者を集約し、「システム全体最適」を実現する研究開発体制を構築していることを示す。なお宇宙ロボティクスとは、宇宙機の点検や修理、部品の組み立て、燃料補給、スペースデブリの回収などのため、ロボットアームやロボットハンドなどの自動制御や遠隔操作を通し、安全で正確な作業を実現する技術のことだ。

2つ目の「実践的研究基盤」は、軌道上実証を前提とした研究開発を高頻度で実施できる実践的研究基盤を備えている点である。青葉山サイエンスパーク内に衛星開発環境や宇宙環境試験設備を整備し、設計・開発から試験、運用、実証までを一貫して取り組める環境を構築するとした。

3つ目の「社会実装への橋渡し機能」では、宇宙ビジネス産学官連携ユニットを中核として、研究シーズの発掘段階から市場性・事業性を見据えた戦略設計を実施。企業との共同研究、スタートアップ連携、人材育成を一体的に推進するとしている。

4つ目の「分野横断的研究ガバナンス(将来計画)」は、国際的ネットワークを有するトップ研究者や高度専門人材を配置することで、研究の質とスピードの両立を実現するものだ。研究企画統括室を設置し、複数部局にまたがる研究テーマを戦略的に編成・統括することで、組織として分野間連携を推進していくとした。

  • スペースクロステック研究センターの組織図

    スペースクロステック研究センターの組織図(出所:東北大プレスリリースPDF)

軌道上サービス技術は、スペースデブリ除去・低減、燃料補給、修理・交換・製造組み立てなどの技術で構成され、宇宙ロボティクス技術と密接に関係する。SXT研究センターでは、これらの宇宙ロボティクス技術の研究開発と軌道上実証のための「軌道上ロボティクス衛星プラットフォーム」、およびそれらの技術を用いた実践的な宇宙環境利用のための「軌道上サイエンス拠点プラットフォーム」を両輪とする小型高性能軌道上サービス技術研究開発構想を掲げ、最先端研究開発と迅速な社会実装に取り組んでいくとしている。

  • スペースクロステック研究センターの取り組み

    スペースクロステック研究センターの取り組み(出所:東北大プレスリリースPDF)

小型高性能軌道上サービス技術の実現により、従来にない独創的な宇宙利用・探査が可能になるという。軌道上サイエンス拠点プラットフォームでは、宇宙生命科学実験や宇宙材料製造、高頻度試料回収インフラの実現を目指すとした。また、複数の宇宙機による近傍接近運用・結合技術などの宇宙ロボティクス技術を基盤とし、月・惑星・小惑星に対するロボティクス探査の実現に取り組むとしている。

  • 軌道上サービス技術に基づく宇宙利用・探査活動

    軌道上サービス技術に基づく宇宙利用・探査活動(出所:東北大プレスリリースPDF)