2025年の売上全体の10%超を占めたAIアクセラレータ関連
TSMCは1月15日、2025年第4四半期の決算説明会を開催し、会長兼CEOのC.C.Wei(魏哲家)氏が、同社の最新状況や今後の見通しを示した。
2025年のファウンドリ業界の状況について同氏は、AI関連の需要が年間を通して堅調に推移したほか、AI以外も底打ちが見られ、2025年末時点でロジックウェハ製造、パッケージング、テスト、マスク製造などを含む「ファウンドリ2.0」(TSMCが提唱する前工程と後工程を統合した産業構造の概念)業界は、前年比16%増となったほか、TSMC自身は技術差別化と幅広い顧客基盤に支えられ、ドルベースの売上高は前年比35.9%増と全体を上回る成長率を達成したとする。
また、2026年の見通しについては、米国の関税政策や部品価格上昇の影響による不確実性などの懸念事項が存在しているものの、堅調なAI関連の需要に支えられ、ファウンドリ2.0市場は前年比14%増の成長が予測されるほか、TSMC自身についてはドルベースで同約30%増の成長と予想している。
TSMCの好調な業績のけん引役であるAI半導体分野について同社は、2025年の売上高の10%台後半をAIアクセラレータのみで占めたとの見方を示すほか、コンシューマなどにもAIの普及が進み、より多くの高演算能力が求められ、先端プロセスに対する需要を支える期待を示す。この予測の背景には、クラウドサービスプロバイダ(CSP)を含む多くの顧客から引き続き、前向きな見通しが示されているためで、AIのメガトレンドは数年続くことが期待でき、その理由として、プロセス技術の複雑性が増すにつれて、顧客との契約リードタイムが少なくとも2〜3年先まで伸びていることを挙げ、TSMCとしても、適切な生産能力の構築を進めていくことを強調。2024年から2029年の5年間のAIアクセラレータからの収益についての年平均成長率(CAGR)を50%台半ばから後半に近づくように引き上げたとするほか、全体的な売上高の成長率についてもドルベースで25%に近づくとの予想を示す。
各国・地域における製造拠点の状況
現在、TSMCは台湾以外の国にも製造拠点を展開しているが、それらは顧客のニーズに基づいて行われているものであり、特に米国については米国の大手顧客や米国政府、州政府、市政府などの支援を受けて、アリゾナ州の生産能力の拡大を進め、2024年第4四半期から量産体制に入っている第1工場(Fab21 Phase1)に加え、第2工場(同Phase2)も建設を完了、2026年中に装置の搬入と設置が進められ、顧客からの要望を受ける形で生産スケジュールを前倒し、2027年後半には量産体制に入る予定とする。さらに第3工場(同Phase3)も建設を開始、第4工場(同Phase4)と先端パッケージ工場については建設許可の申請中だとする。
また、さらなるAIを中心とする米国顧客からの需要に対応することを目的に、既存工場の近接地に土地を購入したことも明らかにした。米国メディアによると、新たな工場用地は900エーカーで、公開入札を通じて約1億9700万ドルで購入したという。
日本についても、熊本県の工場(Fab23 Phase1)が2024年後半から良好な歩留まりで量産を開始しているほか、第2工場(同Phase2)の建設も開始したとする。ただし、現在、第2工場の建設は2025年秋以降中断されているとされているが、これについては採用プロセスと生産開始スケジュールは顧客のニーズと市場の状況に基づいて決定を進めることになっていると説明。従来計画の40~6nmから、2nm以下の先端プロセスへ生産対応品目を変更するためと噂されていたが、これを暗に認める形の回答となった。
欧州については、欧州委員会、ドイツ連邦政府、州政府、市政府から強いコミットメントを得ており、ドイツのドレスデンにおける特殊技術工場の建設は計画通りに進んでいると説明するものの、生産開始スケジュールは、市場状況における顧客のニーズに基づいて決定すると述べるにとどめている。
欧米日での投資を進める同社だが、先端プロセスについての投資は台湾に留めており、台湾総統府の支援を受ける形で、新竹と高雄の科学園区(サイエンスパーク)にて2nmプロセス対応工場を複数段階にわけて稼働させる計画で、今後数年間にわたって台湾に最先端かつ高度パッケージング施設への投資も継続していくことを表明。その次世代の先端プロセスである2nm(N2)プロセスについては、すでに2025年第4四半期から新竹と高雄の2拠点で量産を開始したことを明らかにしたほか、N2の拡張版であるN2Pの導入、ならびにスーパーパワーレール(SPR)技術を採用した1.6nm(A16)プロセスについても2026年後半からの量産開始を予定していることを強調。N2、N2P、A16とその派生製品について同社ではN2ファミリを大規模かつ長期的なプロセスノードへと推進するものとしている。
AIはバブルではなく実需
一方で懸念されるAIバブルの崩壊だが、C.C.Wei会長は設備投資に約520~560億ドルを計画していることを踏まえ、過去3~4か月間にわたって、顧客やその先の顧客などへのヒアリングを繰り返す中、顧客からの要求は現実的なものであると確信したと説明。特にCSPからは、AIが実際に自分たちのビジネスに役立っているとすることを聞いたとするほか、ハイパースケーラー各社からもSNSやソフト関連でAIが活用されており、顧客が継続的に増加しているという話がでていることもあり、今後もAI需要が継続している確信を得るに至ったとしている。
また、同氏は自社の先端プロセス技術の完成度の高さを強調。競合が完成度の高い、あるいは高度な技術を設計しようとすれば2~3年は必要であり、製造立ち上げにはさらにそこから1~2年かかるとし、今後も他社に負けない技術有利性を維持できるとするほか、成熟プロセスについても生産能力は縮小しているものの、マチュアプロセスを含むすべての顧客をサポートしていくことを約束しているとし、顧客のビジネスが順調である限り、サポートを継続していくことを明らかにした。
その優位性の源泉となる新たな工場についても、建設から稼働開始までに2~3年かかる。2026年に520億NTドル~560億NTドルの投資を行っても、同年中の貢献はほぼゼロで、2027年も若干貢献する程度で、実際には2028~2029年からの増産に寄与するものとなるとし、2026年と2027年については、短期的な生産性向上に注力する姿勢を表明。AI需要が予想通り、メガトレンドとなれば巨額投資はその後も継続して行われることになるともしている。
米国と台湾が「相互関税」の交渉で最終合意、TSMCに優遇措置
TSMCが決算発表を行った同日、米国商務省が台湾との相互関税交渉が合意に達したことを発表した。これに伴い、米国は台湾からの輸入品への相互関税率を従来の20%から日韓同様の15%へと引き下げ、15%以上の既存関税には相互関税を上乗せしないこととなる。このほか、半導体や自動車部品など通商拡大法232条に基づく分野別関税についても優遇措置を約束したほか、ジェネリック医薬品およびその原料、航空機部品、入手困難な天然資源に対して0%の相互関税を適用するとしている。
一方の台湾側は、台湾企業が米国で半導体やAI向け電子機器受託製造サービス(EMS)、エネルギーなどの分野に対し2500億ドルの投資を行うこと、台湾政府として同額の最大2500億ドルの信用保証を行うことを約束したとする。
半導体については、米国で新たに工場を建設する台湾企業に対し、建設期間中は計画する生産能力の最大2.5倍までは関税なしで輸入することができることとなった。割当量を超えた場合、通商拡大法232条による関税を下回る優遇税率が適用されるほか、工場完成後も生産能力の1.5倍まで関税なしで輸入することができるとしており、米国で先端プロセス対応の半導体工場の増設を図っているTSMCにとって極めて有利な関税措置となるものと思われる。
なお、商務省は、今回発表のファクトシートの最後に、「世界の半導体ウェハ製造における米国のシェアは、1990年の37%から2024年には10%未満に急激に減少しました。今日では、世界の貿易の流れを歪める外国の産業政策により、半導体の大半は東アジアで製造されています。トランプ政権は、この傾向を逆転させることに尽力しています」とし、米国政府が米国内半導体製造業の活性化に向けて政府全体で総力を挙げた取り組みを主導していると書き添え、今回の台湾との関税交渉合意もその一環であることを強調している。