テラスカイのグループ会社で量子コンピュータのアルゴリズムソフトウェアの研究開発を行うQuemixと、三菱電機、東京科学大学(Science Tokyo)、筑波大学の4者は1月14日、シリコンに注入した水素が特定の欠陥と結合することで自由電子を生成するメカニズムを世界で初めて解明したと発表した。
メカニズム解明の背景
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、パワーエレクトロニクス機器の高効率化や省エネルギー化が世界中で活発に進められている。その中でもIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)はそれらの機器を動作させるために不可欠な電力変換を担うキーデバイスであり、その変換効率の向上が課題となっているという。
IGBTでは、水素イオンをシリコンに注入して電子濃度を制御する技術が実用化されているが、同現象は約半世紀前に発見されたにもかかわらず、その原理は長らく解明されていなかったとのこと。
三菱電機と筑波大学は、2023年に共同でシリコン中の電子濃度の増加に寄与している複合欠陥を発見し、それが格子間シリコン対と水素の結合により形成されることを明らかにしたが、その過程で自由電子が新たに生成する理由は不明だった。
解明に向けた取り組み
今回、4者は複合欠陥に着目し、実験データに頼らずに量子力学の法則に基づいて物質の性質を予測する計算手法である第一原理計算などを行い、複合欠陥中で水素がどのように存在するかを明らかにした。
また、複合欠陥から自由電子が生成していることを裏付ける理論として、水素が電子を放出する理由や、電子がシリコン中で自由電子となるメカニズムも解明。さらに、同理論の拡張で将来のパワー半導体用材料として期待されていながら、電子濃度制御が非常に困難なダイヤモンドに当該メカニズムを適用できる可能性を示した。下図は各者の担当内容となる。
同メカニズムの解明により、IGBTの電子濃度制御を高度化し、構造設計や製造方法を最適化することが可能となるため、電力損失の低減に貢献できるという。また、将来的には、UWBG(Ultra Wide Band Gap:SiやSiCよりも大きなバンドギャップを持つ半導体)材料を用いたデバイスへの展開が期待されているとのこと。

