アストロバイオロジーセンター(ABC)、国立天文台、東京大学(東大)の3者は1月8日、おうし座分子雲にある年齢約2000万年の若い恒星「おうし座V1298星(V1298 Tau)」を公転する4つの惑星のトランジットを長期的に観測し、それらの半径が地球の5~10倍程度であるのに対し、質量は地球の5~15倍程度しかなく、非常に低密度であることを明らかにしたと共同で発表した。
また今回の発見は、誕生直後の比較的小型の惑星は大きく膨らんでおり、時間経過と共に大気を失いながら収縮・進化していくという仮設を。初めて観測的に裏付ける成果となったことも併せて発表された。
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V1298 Tauを公転する4つの系外惑星のイメージ。生まれたての惑星は大きく膨らんでおり、主星からの放射を受けて大気が宇宙空間に流出していると考えられている。(c)アストロバイオロジーセンター(出所:国立天文台Webサイト)
同成果は、ABC/国立天文台のジョン・リビングストン特任助教、同・森万由子特任研究員、東大大学院 総合文化研究科の成田憲保教授(ABC 客員教授兼任)、同・福井暁彦講師、同・ジェローム・デレオン特任助教らを中心とする国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
若い惑星の進化理論を裏付ける観測結果を発表
惑星は、誕生したての恒星を取り囲む原始惑星系円盤内で形成されるが、誕生直後の姿や進化の過程には未解明の部分も多い。そこで研究チームは今回、おうし座分子雲に位置する恒星「V1298 Tau」に着目。太陽と同程度の質量を持つこの星は、年齢がわずか2000万年ほどと、人間に例えれば生後数か月の乳児に相当する若さだ。NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー宇宙望遠鏡」による2015年の観測で、この星には4つの惑星の存在が判明しており、これら若い惑星の性質を詳細に調べることが今回の狙いとされた。
これまでも、惑星の引力で恒星が微かに揺れ動く様子を捉える「視線速度(ドップラー)法」を用いて、この4惑星の質量測定が試みられてきた。しかし、若い恒星は磁場活動が活発で表面に黒点が生じやすく、それが視線速度法において巨大なノイズとなる。そのため、過去に報告された4惑星の質量には不正確さが残る可能性が指摘されていた。そこで研究チームは今回、視線速度法とは原理が異なる「トランジットタイミング変動(TTV)法」を用いて、4惑星の正確な質量を導き出すことを目指したという。
複数の惑星が存在する惑星系では、惑星同士の重力相互作用により、惑星が主星の前を横切ることで主星の明るさが減光するトランジットの周期が一定の間隔からわずかにずれる現象が起きる。それを詳細に解析するTTV法を用いれば、中心星に影響を及ぼす惑星の質量を推定可能だ。同手法は、恒星表面の活動による影響をほぼ受けないため、若い恒星を公転する惑星の質量も精度良く決定できる利点がある。
今回の研究では、2015年のケプラーのトランジット観測データに加え、2019年から2024年にかけて宇宙望遠鏡と地上望遠鏡で蓄積された長期的な追観測データを統合。TTV法に基づいた4惑星の質量を求める高度な解析が実施された。
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V1298 Tauの4つの惑星(b、c、d、e)におけるトランジットタイミング変動の観測結果とモデル。横軸は2009年1月1日を基準とした日数。縦軸はトランジットタイミング変動。青丸は観測されたトランジットタイミングのデータ。灰色の線は、惑星の質量などの誤差を考慮し、N体シミュレーションにより想定されたトランジットタイミング変動の理論的なモデル。(掲載論文の図1を改変して引用されたもの)(出所:東大Webサイト)
解析の結果、4つの惑星はいずれも地球の5~10倍という巨大ガス惑星の範疇に入る半径を持ちながら、質量は地球の5~15倍程度しかないことが判明した。これは、地球より一回り大きな「スーパーアース」や、海王星よりやや小さい「サブ(ミニ)ネプチューン」に相当する質量だ。本来、巨大ガス惑星であれば、地球の50倍以上の質量を持つはずであり、4惑星は極めて低密度で「ふわふわ」な状態にあることが浮き彫りとなった。つまり、これらは将来的にスーパーアースやサブネプチューンへと進化する途上の姿であり、若い惑星が大きく膨らんでいて極めて低密度とする従来唱えられていた仮説が、世界で初めて観測によって実証されたのである。
4惑星は現在、内部温度の低下と共に大気の一部が宇宙空間へ流出し、質量を失いながら半径が収縮する進化の過程にあると推測される。今後、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いて、これらの惑星の大気を観測する計画が進められており、大気の組成や性質、宇宙への流出量などに関する詳細な知見が近い将来得られる見通しだ。
太陽系を含む多様な惑星系の形成プロセスを解明するためには、今後も新たな若いトランジット惑星の発見と詳細観測が欠かせない。東大の成田教授ら、今回の観測でも活躍した多色同時撮像カメラ「MuSCAT」シリーズの研究チームは、チリと南アフリカの望遠鏡に向けた新たな観測装置の開発を進めているとのことで、こうした取り組みを通じ、惑星がどのように進化し、いかにして多様な惑星系が形作られるのかという謎の解明が期待されるとしている。