近年、宇宙業界の最前線ではさまざまなニュースが隙間なく飛び交い、大きな進歩をもたらす可能性がある革新的技術が相次いで生まれている。そして今後は、宇宙が“開拓する場所”から“住む場所”に変わっていくかもしれない。月や火星を目的地とした探査プロジェクトは本格化しつつあり、「宇宙に住む」を実現するために、そこで必要となるさまざまな技術の開発が急がれている。
そんな将来を見据え、さまざまな角度から宇宙での暮らしについて迫った書籍『宇宙にヒトは住めるのか』が、1月7日に筑摩書房から発売された。著者は、宇宙開発・天文分野で30年以上にわたり取材・執筆を続けている“宇宙ライター”の林公代氏だ。
“月面農場”や“宇宙医学”などから宇宙生活を考える
タイトルの通り、宇宙で人間が生活を送ることができるのかを、多角的な視点から考える同著。暮らしには欠かすことのできない食料や住居、また宇宙で過ごす人間に起こる身体の変化、そして持続的な生活において重要な“宇宙での妊娠・出産”などについて、技術開発の現場への取材や医学的見地からの情報、また実際に宇宙で生活した宇宙飛行士からの体験談を通じて紐解いていく。
第一章「宇宙でも美味しく食べたい!」では、政府によるプロジェクトとして進められている“月面農場開発”の現場をピックアップ。特別な許可を得て行われたという取材では、宇宙でもたわわに実る健康トマトの実現を目指す最前線に迫る。そして食品輸送に多大なコストを要する宇宙空間での食料問題解消に向け、野菜などの“月産月消”への取り組みなどを取り上げる。
続く第二章「宇宙で快適に暮らすために」では、月面での住環境にフォーカスを当て、快適な日々を過ごすために考慮された住宅の詳細を、レイアウト図と共に紹介する。加えて、地球の住環境でも問題となる音やニオイの問題などについても、宇宙生活の視点で詳述。快適性を保つための技術についても紹介されている。
さらにそれ以降でも、宇宙空間で人体に起こる眼など変化やその対策、宇宙での暮らしにおいて必要だとされる“人口重力”について、そして宇宙の住人が増える時代への大きな鍵を握る“宇宙での赤ちゃん誕生”など、地球上では当たり前でも宇宙での生活では問題となりうるさまざまなトピックを、現役宇宙飛行士の体験談も交えながら詳しく読み解いていくこの一冊。もはや幻想ではなくなりつつある“宇宙暮らし”の今と、その実現に向けて取り組まれる開発の最前線を、今一度覗いてみてはいかがだろうか。
