東北大学は12月22日、半導体や誘電体(絶縁体)として広く利用される主要なセラミックス電子材料である「チタン酸バリウム(BaTiO3)」の粉末成形体について、金属ナトリウム片と共にステンレス鋼製の容器に封入し加熱することで、従来法の約1300℃のを大幅に下回る700~800℃という低温下において、電気抵抗率を低下させつつ緻密に焼結する現象を発見したと発表した。
さらに、加熱条件によってセラミックス中の粒子形態を制御できるほか、焼結温度や保持時間に応じて粒子のサイズおよび形状が変化することがわかったことも併せて発表された。
同成果は、東北大 多元物質科学研究所の細野新助教、同・山田高広教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国セラミックス協会が刊行する学術誌「Journal of the American Ceramic Society」に掲載された。
低温ながら相対密度90%以上を達成
チタン酸バリウムなどを主成分とする半導体セラミックスは、電場や温度といった環境の変化で、電気抵抗率が大きく変化する「可変抵抗素子」として幅広く活用されている。しかしその作製には、水素などを含む強還元性雰囲気下かつ1300℃以上という高温での焼結処理(粉末を緻密に焼き固めるプロセス)が必要であり、より簡便で省エネルギーな手法の確立が求められていた。なお、還元性とは他の物質から酸素を奪い、電子を与える性質を指す。
こうした背景から研究チームは今回、金属ナトリウムが持つ強力な還元性と、窒化ガリウムなどの高融点物質の単結晶育成における溶媒としての機能に着目。これらを活用して酸化物材料を低温で焼結させる手法を着想し、今回の研究ではその研究を進めたという。
具体的な実験では、絶縁体であるチタン酸バリウムの粉末成形体(加圧により粉末を所望の形状に成形したもの)を約1~3g、約70mgの金属ナトリウム片と共にアルゴン雰囲気下でステンレス鋼製の容器に封入し、750℃以上での加熱が行われた。その結果、高温で揮発した金属ナトリウム蒸気が還元剤および焼結促進剤として機能し、相対密度が96%以上の緻密な導電性セラミックスが形成された。なお、相対密度100%は空隙がまったくない状態を指す。
今回の焼結現象は、チタン酸バリウムの粉末粒子がナトリウムの蒸気または液相により還元されて半導体化すると同時に、その一部が溶解・析出することによって進行したことが考えられるという。セラミックス中へのナトリウム混入量は最大でも約0.2重量%とわずかであり、従来法に比べて顕著に低い700~800℃という温度域で、緻密な導電性セラミックスが作製が可能であることが確認された。
また、ナトリウム蒸気が容器内部を均一な雰囲気に保つため、一度の加熱処理で20個以上のセラミックスを作製できる点も大きな特徴だ。加えて、セラミックス中の粒子の形態は加熱条件により制御可能であり、焼結温度や保持時間によって粒子のサイズおよび形状が変化することも確かめられたとする。
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(a)焼結前のチタン酸バリウムの粉末成形体(左、直径6.0mm)と、ナトリウム蒸気中にて800℃で2時間加熱して得たセラミックス(右、直径5.2mm)。(b・c)セラミックス破断面の走査型電子顕微鏡像。ナトリウム蒸気中にて(b)800℃、(c)1000℃で各2時間加熱された歳の粒子の様子が示されている(出所:東北大プレスリリースPDF)
今回の手法は、チタン酸バリウム以外のさまざまなセラミックス材料の焼結への応用が期待されるという。研究チームは今後、対象となる材料を拡充しながら、詳細な緻密化メカニズムの解明に取り組む予定としている。
