スペースワンは、「カイロスロケット3号機」を2026年2月25日午前11時に「スペースポート紀伊」(和歌山・串本町)から打ち上げることを決定。ミッションを完遂できれば、“国内初”の民間人工衛星打ち上げ用ロケットとなる。
カイロスロケット3号機は固体3段+小型液体ブースタからなる小型ロケットで、全長約18m、重さ約23トン、外径は機体が約1.4m(フェアリングは約1.5m)。今回の打ち上げ予定軌道は太陽同期軌道高度500kmで、複数衛星を載せる構造を用いたクラスタ打ち上げと軌道投入、フライトによる各種技術データの取得を目標としている。3号機のローンチウィンドウは約15分程度、衛星分離予定時刻は打ち上げ後の11時53〜54分頃。予備期間は2月26日~3月25日。
スペースワンでは、カイロスロケットの打ち上げを7段階のステップで構成しており、2024年に打ち上げた初号機でステップ1の打ち上げを達成、2号機ではステップ2の第1段ミッション完了、ステップ3のフェアリング分離まで達成したとの考えを示している。3号機ではさらにその先の、ミッション4にあたる第2段ミッション完了から、無事に衛星を軌道投入できたことを確認するステップ7の完遂をねらう。
3号機に搭載する衛星は、テラスペースの「TATARA-1R」(70㎏級)のほか、3Uサイズ(1Uは10cm角)のキューブサットとしてSpace Cubicsの「SC-Sat1a」、広尾学園中学校・高等学校の「HErO」、アークエッジ・スペースの「AETS-1」、台湾国家宇宙センター(TASA)の「NutSat-3」の計5機。これまで計4機の衛星を打ち上げることを発表していたが、今回新たに台湾国家宇宙センター(TASA)の衛星がラインナップに加わったかたちだ。
スペースワンの豊田正和社長は、質疑応答のなかで「国内外の複数の衛星企業と話をしたが、大変期待度が高く、リスクがあっても“一緒に背負っていこうじゃないか”というぐらいの反響がある」と話し、将来の衛星打ち上げ受注についての見通しが明るいことを示していた。
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3号機に搭載する人工衛星のイメージ。8月にスペースワンが開催した、2号機飛行中断原因に関する説明会の中で示されたもの。画像には示されていないが今回新たに、台湾国家宇宙センターのキューブサットが加わることが決まった
2号機の飛行中断の原因調査結果をふまえ、今回の3号機ではセンサーの設計を若干変更したほか、センサーからの信号伝達経路でもケーブルを這わせる部分の見直しや熱・振動への対策をさらに強化し堅牢性を高めたとのこと。ハードウェア側にはこうした改良を加えた一方で、ソフトウェアについてはおおむね同じものを搭載しているとのことだ。
スペースワン副社長の関野展弘氏は、報道陣との質疑応答の中で、同社が将来的に高頻度でのロケット打ち上げをめざしていることもあって「カイロスは運用性の高いロケットに仕上げている」(関野氏)とコメント。「(打ち上げの)運営に携わる人々の動きも非常に良くなっていて、短時間でできるようにもなってきたので、3号機の打ち上げではより洗練された形でやりたい。この先はできればもう少し人数を減らしていくとか、運用性を上げて打ち上げコストを下げる、といったことを追求したい」と話した。
また、3号機の打ち上げが成功しなかった場合の考え方について問われると、「仮に失敗したとして、我々の事業をここでやめるという選択肢はない。4号機に向けてやるべきことやるということになる」と強調した。
なお既報の通り、スペースワンでは地元の串本町、那智勝浦町との取り組みとして、地域ボランティア団体「和歌山ロケット応援団」との連携により、スペースポート紀伊・串本町・那智勝浦町のロゴをあしらった特製シール(デカール)に刻印。カイロスロケット3号機に貼り付け、打ち上げ時に宇宙へ届けるといった取り組みも行っている。
豊田社長は記者会見の冒頭で、「(カイロスロケットの)初号機と2号機は、いずれも人工衛星を軌道に乗せるというミッションを完遂できなかったが、2号機は人工衛星を搭載した民間ロケットとして宇宙空間に到達し、多くの貴重なデータを得られた。この結果を次の前進につなげるためのかけがえのない経験として、正面から受け止めている。前回の打ち上げから1年という期間を要したのは、3号機の信頼性の確立に向けて原因究明を進め、慎重に作業を進めてきたためだ」と説明。
そして「“宇宙宅配便”を実現し、日本の民間宇宙輸送インフラを作ることがスペースワンの使命。3号機は我々の覚悟そのものだ。今後とも支援、応援をお願いしたい」と述べた。




