京都大学(京大)は12月3日、機関間合意契約を結んでいる英Blue Skies Spaceと共同開発した超小型紫外線観測衛星「Mauve(モーヴ)」が、2025年11月12日に米・SpaceXのロケットにより打ち上げられ、同月29日から恒星活動と惑星環境の関係を探る観測ミッションがスタートしたことを発表した。

  • 超小型紫外線衛星Mauveのイメージ

    超小型紫外線衛星Mauveのイメージ。(c)Blue Skies Space Ltd.(出所:京大プレスリリースPDF)

同成果は、京大 白眉センター/理学研究科の行方宏介特定助教、国立天文台の生駒大洋教授、同・前原裕之助教、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所の鳥海森准教授、米・コロラド大学の野津湧太博士らが参加する国際共同研究チームによるもの。

SpaceXのロケットによる打ち上げに成功

太陽のような恒星は、活動が活発な若い時期に強力な爆発現象である「フレア」を頻繁に起こす。フレアは、恒星表面の磁場エネルギーが瞬時に放出される爆発現象だ。高エネルギーの紫外線やX線を放出し、さらに「コロナ質量放出」(CME)を伴う場合があるため、周囲の惑星の大気や表面環境に影響を与えると考えられる。実際、太陽でCMEを伴う強力なフレアが発生すると、約1億5000万km離れているにもかかわらず、地球を周回する人工衛星や地上の電力網に影響を与え、時には衛星の故障や大規模な停電を起こす可能性がある(実際に過去にはそうした事例が発生している)。

しかし、地球上では分厚い大気が、紫外線(波長10~400nm)の中でも特に短い波長域であるUV-C(波長100~280nm)や極端紫外線(10~100nm、軟X線とも呼ばれる)、そしてそれらよりさらに波長の短いX線(0.01~10nm)を吸収してしまう。このため、恒星フレアを直接観測することは困難だ。こうした背景から、太陽観測用の宇宙望遠鏡が打ち上げられ、日本でもJAXAが「ひので」を運用している。

このような背景のもと、恒星活動と惑星の居住可能性の関係を明らかにすることを目的とした、Blue Skies Spaceが主導する国際共同プロジェクト「Mauve」が立ち上げられた。京大は同社と機関間契約を結び、行方特定助教を中心とした、惑星物理学、恒星物理学、太陽物理学などの研究者がメンバーが参画。国内においてもメンバーが、機関横断的・分野横断的な連携のもと研究を推進している。

Mauve衛星は、口径13cmの望遠鏡を搭載した超小型衛星で、地上からは観測できない波長域を含む200~700nmの紫外線から可視光までを観測。地球低軌道から恒星フレアの紫外線放射の長期間モニタリングを実施する。そして、取得されたデータにより恒星フレアに伴う紫外線放射のメカニズムが明らかにされ、その結果、若い太陽型恒星がどのように惑星の大気を加熱・剥離させるのか、また生命にとって安全な環境を維持できるのかといった謎の解明に繋がることが期待されている。紫外線による恒星活動の長期間の連続観測は世界初の試みであり、恒星と惑星の進化をつなぐ新しい研究分野を開く成果が期待されるとした。

観測ミッションは今後、まず2026年初頭に得られる初期観測データの解析から開始し、太陽系外惑星系の大気進化モデルと比較を行う研究が進められることになる。さらに、今回のミッションの成果は、将来的な小型・中型・大型衛星による紫外線天文学(JAXA公募型小型6号機候補の「LAPYUTA計画」など)の設計にも貢献することが見込まれるとした。超小型衛星による国際的な科学協力の成功例として、今後は他の波長帯や科学分野への応用も期待されるという。京大はこの成果を通じ、宇宙物理学と惑星科学を融合した新たな研究展開を推進していくとしている。