東北大学、東京大学(東大)、理化学研究所(理研)、東京科学大学(科学大)の4者は11月26日、東大 木曽観測所の広視野カメラ「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)」を用い、最も高感度な夜空の「広域動画観測」を実施したことを共同で発表した。

そして観測の結果、わずか0.5秒だけ光る閃光現象を1500個以上発見し、その多くが人工衛星やスペースデブリの太陽光の反射によるものであり、全天では1日に約1000万回もの頻度で発生している計算になることも併せて発表された。

同成果は、東北大大学院 理学研究科の田中雅臣教授、理研 革新知能統合研究センター 統計宇宙科学チームの吉田直紀チームディレクターら、東大、理研、NTT、科学大の20名の研究者が参加した共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

世界最高感度での広域動画観測を実施

超新星爆発など、「時間とともに変化する宇宙」を研究する分野を「時間領域天文学」という。これまで、数日から数か月にわたって明るく輝く天体現象は観測されてきたが、より短い時間スケールでの可視光現象の観測は困難だった。実際、1秒程度の突発天体現象としては、可視光以外で「ガンマ線バースト」や「高速電波バースト」などが知られている。しかし、短い時間間隔で空の広い領域を観測するのが難しいため、可視光ではそうした突発天体現象があるのかどうかは定かではなかった。

短時間の天体現象を探るには、もう1つの課題がある。それは、地球の周囲を回る人工衛星やスペースデブリの存在だ。これらは太陽光を反射して一瞬だけ強く光ることがあり、遠方宇宙からの突発現象と区別がつきにくく、観測の妨げとなることが懸念されている。特に近年は、スペースXが「スターリンク衛星」を極めて多数打ち上げており、その衛星コンステレーションの様子が「UFOの大編隊」などと、事情を知らない人々に騒がれるほど目立っている状況だ。

しかし、人工物体がどの程度の頻度で閃光を放つのかは、これまで詳しくはわかっていなかった。この不確かさこそが、可視光における「秒スケール宇宙」の探究を阻んできた要因だ。そこで研究チームは今回、東大 木曽観測所のシュミット望遠鏡に設置された広視野カメラ「Tomo-e Gozen」を用いて、0.5秒ごとに夜空を撮影する動画観測を行ったという。

Tomo-e Gozenは高速で画像を読み出せるCMOSセンサを84個搭載しており、一度に満月約100個分という空の広い領域を秒単位で観測可能だ。このカメラを用いることで、世界で最も高感度な広域動画観測が実現された。さらに今回の研究では、機械学習による専用解析ソフトを共同開発し、大量の動画データから突発的な閃光を効率的に検出できる仕組みが整えられた。

解析された約85TBのデータから、0.5秒だけ光る閃光現象が1554個発見された。そのうち564件は既知の人工衛星やスペースデブリの軌道と一致し、人工物体が多くの閃光現象を引き起こすことが確認された。これらの人工物体の多くは、高度約3万6000kmの静止軌道など、高い軌道にあるものだった。残りの991個も、その多くは位置を変えて何度か検出されており、同様に地球を周回する人工物体の閃光現象と考えられるという。

  • 動画データから検出された閃光現象の画像

    動画データから検出された閃光現象の画像。横に並んだ5つのパネルが0.5秒ごとの時系列を表しており、真ん中の時間にだけ閃光現象が現れている(赤枠)。各パネルの視野角は約0.03度(出所:東大Webサイト)

観測結果から、このような閃光現象の頻度は、空の1平方度(1°×1°、満月は約0.2平方度)当たり1時間に10回程度と算出された。これを空全体に換算すると、1日に約1000万回もの閃光が発生している計算となる。実際、科学番組などでタイムラプス動画により撮影された夜空には、ものすごい数の人工衛星などがひっきりなしに行き交っているのが見て取れるように、これは、秒スケールの可視光観測を進める上で、人工衛星やスペースデブリが大きな障害となることが示されているとした。

公式動画「秒スケールで宇宙をとらえる 検出された閃光現象の例」(出所:YouTube東北大理学部・理学研究科公式チャンネル)

今回検出された既知の人工物と照合されなかった閃光の多くは、高軌道を周回する30cm~1m以下の小型物体によるものと推定された。スペースデブリは人工衛星に衝突することで大きな影響を与えるため、今後の宇宙開発のためにも、その数や性質を理解することは不可欠な課題である。また、このような小型物体は、従来のレーダー観測では捉えにくいという南天がある。今回の成果により、天文学の動画観測がスペースデブリの把握や性質の理解に役立つ可能性が示されたといえる。

東北大の田中教授は「今後は、動画に映った閃光のより詳細な分析を行うことで、人工物体の形状などの特徴も調べていきたい」としている。また、理研の吉田チームディレクターは「Tomo-e Gozenによる観測を続け、新たな天体の発見にも結びつけたいと」とコメント、今後の展開に期待が寄せられる。