2026年にCEOの交代を予定しているimec

ベルギーの最先端半導体研究機関imecが東京で年次技術報告会「imec Technology Forum (ITF) Japan 2025」を開催した。それに併せる形で11月10日、同社社長CEOであるル―ク・ファン・デン・ホヴ氏と次期社長兼CEOが内定しているEVP兼COOのパトリック・ヴァンデナメーレ氏が来日し自社の状況や今後の方向性などについての説明を行った。

imecの人事だが、2026年4月1日付けで、ル―ク・ファン・デン・ホヴ氏は取締役会議長(いわゆる会長)に、パトリック・ヴァンデナメーレ氏は4代目のCEOにそれぞれ就任する予定である。

  • 会見にて今後のimecの方向性などを説明したimec CEOのルーク・ファン・デン・ホヴ氏とCOO(次期CEOに就任予定)のパトリック・ヴァンデナメーレ氏

    会見にて今後のimecの方向性などを説明したimec CEOのルーク・ファン・デン・ホヴ氏(左)とCOO(次期CEOに就任予定)のパトリック・ヴァンデナメーレ氏(右) (著者撮影)

今年65歳を迎えたリーク・ファン・デン・ホヴは、記者会見にて今回の交代劇について「imecは、41年前にルーベンカトリック大学(KUL)からスピンオフする形で創設されたが、その際にKULからプロセスエンジニアとして移籍した。その後、半導体プロセス開発部門長を経て2009年から17年にわたりCEOを務めてきた。imecは今、人工知能(AI)とシステム技術が業界の未来を決定づける重要な局面を迎えていると認識している。新しいリーダーシップ体制への移行は、過去2年間にわたって綿密に検討した結果で、imecと大切なパートナーコミュニティとの連携の継続性を維持しながら、シームレスで安定した引き継ぎを実現しようと思って進めてきた取り組みである」と述べた。

また同氏は、ヴァンデナメーレ氏を次期CEOに選んだ理由について「パトリックは、imecを前進させるために必要な適切なスキル、適切な姿勢、適切な価値観、そして確かな経歴を備えていると確信している。彼の技術的ビジョンとリーダーシップは、まさにこの新たな時代を迎えるimecに必要なものであり、パトリックを後継者として承認できることを誇りに思うとともに、会長という新たな役割を通じて、彼とimecのチーム全体を支えていくことを楽しみにしている」とも語っている。

さらに、この会長という職務については、「国内外におけるパ-トナーの経営幹部のステークホルダー管理に注力するのと同時に、急速に変化し、ますます複雑化する世界の中で、パトリックが舵取りをできるようサポートしていく存在」と述べている。

目指すのはコア技術のスケーリングを革新し続けること

今回の記者会見は、これまで表舞台に出てこなかったヴァンデナメーレ氏の紹介を含むものといえる。同氏は、自己紹介を交える形で「KULで工学博士号を取得後、1996年に無線通信の研究者としてimecに入社。その後はimecの技術を生かした起業家として独立し、約20年間にわたって働いてきた期間の約50%をスタートアップで、残りの50%をそれらのスタートアップを買収した多国籍企業で過ごしてきた。2017年にimecに復帰し、2021年以降は、ルークを助ける形で研究開発戦略立案を担当してきたが、新たなリーダーに任命されたことを光栄に思っている。今後、ナノエレクトロニクスとデジタル技術の世界的リーダーとして、そして真のグローバルイノベーションの触媒として国際的に認められている組織を率いていくことを楽しみにしている。ルークの指導と取締役会の判断に感謝するとともに、才能豊かなチームとパートナーと共に、imecの強みをさらに発展させ、卓越した伝統を継承していくことに尽力していく。AIと先進ハードウェアの融合には計り知れない可能性が秘められており、共に未来を形作る中で、imecを率いていくことを大変嬉しく思う」と抱負を語っている。

CEOへの就任まで、残り半年ほどだが、その間については、「CEOとしての新たな役割に向けてさらなる準備を進め、パートナーとの連携を強化していく。また、チームと共に大学との連携を強化。特に、imecの長期戦略に不可欠な早期イノベーションへの注力を強化していく連携を強化していく」と、今後のimecの成長に向けた準備を進めていくことを強調する。

また、imecの抱えている課題について、ルーク・ファン・デン・ホヴ氏は「imecだけでなく半導体業界全体が大きな課題に直面している。それは、コンピューティング需要の増大と多様化に対応する次世代コンピューティングシステムへの準備の必要性だ。これらの将来のコンピューティングシステムを実現するために必要なコア技術はますます複雑になっている。高度な3D集積技術、垂直積層型の次世代トランジスタアーキテクチャ、あるいは3次元へと移行するメモリ技術など解決すべき課題はたくさんある。imecにとっては、コア技術のスケーリングを革新し続けることが鍵となる。そして、それを効率的に行うために求められる業務効率の向上、プラットフォーム化のさらなる推進、AIベースの仮想学習の導入、大学との連携の強化、関連するテストベークルによる産業界の支援など、業務の最適化を可能にする幅広いスキルが必要となる。さらに、コンピューティングアプリケーションのニーズの驚異的な成長と多様化に対応するために、適切なソリューションに注力する必要がある」と説明した。

日本の装置・材料メーカーとの協業をさらに強化

さらに同氏は、imecが今後さらなる発展を遂げるためには日本の半導体製造装置メーカーならびに半導体材料メーカーとの協力が非常に重要だとして、今後、日本のそうした企業との協業により注力していくことを強調した。

imecは、EU主導のnanoICプロジェクトの一環として、同社本社キャンパス内に2nm以降のプロセスに向けたパイロットラインを構築することになっており、その実現には日本の半導体製造装置や半導体材料メーカーの協力が強く期待されるとしている。

なお、imecは2023年5月に、日本に研究施設を設立する計画を発表していたが、この件については今回言及はなかった。imec関係者の話では、この話は立ち消えになったわけではないが、経済産業省と研究施設設置のための補助金について協議に時間を要しているとのことである。10年ほど前にもimecと産業総合研究所が日本に共同研究所を設置する計画が進行していたが、経済産業省と補助金の額に関して折り合わず計画が立ち消えたことがあった。

ファン・デン・ホヴ氏がCadenceの取締役に就任

2026年にimecの会長に就任する予定のファン・デン・ホヴ氏だが、Cadence Design Systemsが2026年1月1日付で同社の取締役会メンバーに同氏を任命することを発表している

Cadenceの取締役会会長であるML・クラカウア氏は同氏の就任に対して「ファン・デン・ホヴ氏を取締役会に迎えることができ、大変光栄である。AIが半導体およびシステム設計のあり方を大きく変革し続ける中、当社のAI主導設計ソリューションは、顧客が驚異的なブレークスルーを達成できるよう支援している。ファン・デン・ホヴ氏の深い技術的専門知識、信頼できるエコシステムとの連携、そして幅広い業界視点は、当社が戦略を推し進め、イノベーションを加速させ、株主の皆様に永続的な価値を提供していく上で、非常に貴重な洞察をもたらしてくれる」と述べている。

なお、ファン・デン・ホヴ氏は、imecのCEO(2026年4月1日付で取締役会議長に就任)のほか、今回のCadenceだけでなく、ベルギー・ブリュッセルに本拠を置く、同国最大の政府系電気通信事業者であるProximusの取締役も務めている。