サカセ・アドテック、日鉄ケミカル&マテリアル、アクセルスペースの3社は11月20日、アクセルスペースとサカセ・アドテックが共同開発した人工衛星用軌道離脱装置「膜面展開型デオービット機構(D-SAIL)に、日鉄ケミカル&マテリアルが開発した「原子状酸素耐性ポリイミドフィルム(BSF-30)」を採用することを発表した。

デブリ問題を改善する装置に耐久性を付与する共同開発

宇宙空間、特に地球低軌道(LEO)には数千から数万もの人工衛星が存在すると言われており、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の増加が深刻な課題となっている。アクセルスペースはこうした背景から、サステナビリティを考慮した衛星の開発・運用を行うためのガイドラインとして「Green Spacecraft Standard」を策定。その具体的な取り組みのひとつとして、軌道上と環境の保全のため、運用を終えた衛星を軌道上から速やかに離脱させるD-SAILをサカセ・アドテックと共同開発していた。なお同装置の開発においては、膜面展開構造系システムの設計・製造をサカセ・アドテックが、主に電気設計と製品全体の性能設計をアクセルスペースがそれぞれ担当したという。

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    膜面展開型デオービット機構(D-SAIL)の写真(左)と人工衛星「GRUS-3」での膜面展開時のイメージ画像(右)(出所:アクセルスペース)

D-SAILは、衛星の運用終了時にこぶし大のサイズに折りたたまれていた約2m2の膜面を展開し、膜がLEOに存在するわずかな大気による抵抗を受けることで、徐々に衛星の高度を低下させるとのこと。これにより、衛星の軌道離脱に必要な期間を数年程度まで短縮させるとともに、他の衛星や破片との衝突によるスペースデブリ増加を防ぐ効果も期待できるとする。

そして今般両社は、D-SAILの膜面に、日鉄ケミカル&マテリアルが開発したBSF-30を採用することを決定。LEOの厳しい環境下でも膜面の劣化を抑え、装置の耐久性と信頼性を向上させることを期待しているという。

LEOでは、大気中の酸素分子が太陽からの紫外線を受けて分解されることで、原子状酸素(AO)が発生する。このAOは、衛星外表面の部材に参加を引き起こし、性能劣化や寿命短縮の要因となるもの。それに対しBSF-30は、AOへの耐性を有するシロキサン変性ポリイミド樹脂であり、LEOに展開されたD-SAILの膜面に二酸化ケイ素(SiO2)皮膜を形成することで、AOによる膜面の劣化を防ぐとした。

  • SiO2皮膜によるAO耐性付与のメカニズム概要図

    SiO2被膜によるAO耐性付与のメカニズム概要図(出所:アクセルスペース)

今回の発表に際し、サカセ・アドテック、アクセルスペース、日鉄ケミカル&マテリアルの3社は、こうした取り組みを通してスペースデブリの増加を防ぎ、宇宙空間のサステナビリティ向上に貢献するとしている。