CEOとしてAlteraの改革を推進

ということで、ここからQ&Aパートとなる。なおインタビューにはSam Rogan氏(General Manager, APJ Sales, Altera、President,Altera Japan)も同席されており、一部の返事はRogan氏から頂いている。

  • Raghib Hussain氏

    左がSam Rogan氏、右がRaghib Hussain氏

Q:Marvellから移ってきて7か月ほどとなります(2025年5月にCEOに就任)。ただ、Marvellというかその前のCaviumの時代に、あなたはFPGAを利用する立場だったと思います。それが今では供給する側に回られたわけですが、いかがですか?

Hussain氏:私は元々FPGAを利用するためにRTLを学んだ。1992年から1993年頃だが、エミュレーションのためにFPGAを使っていたからだ。なので我々は、FPGAの課題を熟知している。

ユーザーであったがために、製品がどうあるべきかというアイディアを与えてくれる。例えば私がAlteraに来て最初に(Alteraのチームに)訊ねたのは、「最新のAI技術を活用してツールを改善し、より使いやすくするに、我々は何をすべきか」だった。そして顧客が製品の市場投入を迅速に行うために(助けとなる)、最高のSoft IPをどうやって提供するべきか。これは私にとって、顧客に最高の体験(Experience)と製品をもたらす機会だと考えている。

Q:9月の米EETimesのインタビューの中であなたは“Altera has lost the trust in its excellence, quality, and schedule.”"と説明されておられました。この中で私がちょっと気になった点があるのですが、そのscheduleの遅延というのは何に起因するものと考えておられ、そしてそれを解決するためにどうするおつもりでしょう?

Hussain氏:スケジュールの遅延は、主にAltera社内の運営方法に起因していたと考えている。

まずエンジニアリング部門は非常に大規模な企業スタイルで運営されており、問題解決に官僚的な仕組みを採用していた。それと顧客とエンジニアリング部門の間には複数の階層が存在しており、結果としてエンジニアリング部門は顧客から非常に離れた場所に位置していた。私が赴任した際に「なぜこうなっているのか?」と尋ねると、「エンジニアを保護するためです」という返事が返ってきた。そこで「エンジニアを保護するとはどういう意味か? エンジニアは顧客と直接連携し、問題を理解し、最適な解決策を導くべきだ」と指摘した。

元々Alteraは、顧客と接する担当者が新たな要求や機能を追加し続ける状況が発生していた。これはエンジニアリング部門が、真に必要な製品を理解していなかったためだ。このため優先順位が頻繁に変わり、意思決定プロセスが非常に遅くなった。何ヶ月も何ヶ月もただ進み続けるだけで、決定が下されない状態が続いたわけだ。

この結果がどうなったかといえば、開発期間が長引く事で当初定義した製品は当時のニーズには合っていたものの、時間の経過に伴い製品定義自体が陳腐化してしまった。すると現場から「いやいや、これが必要だって分かってるんだ」とフィードバックが戻ってくる。するとエンジニアリング部門は最初からやり直さねばならず、これが常態化した問題だ。つまり長いサイクルが根本的な遅延要因となっていた。

そこで私が最初に行ったのは組織の平坦化だ。エンジニアリングを顧客に極限まで近づけた。顧客とエンジニアリングの間に多重な階層を一切排除したのだ。つまり社内に存在するチームは2つだけだ。1つは営業とサポート、つまり営業とFAE(Field Application Engineer)、もう1つはエンジニアリング部門だ。その間に何層もの中間層など全く必要ない。中間層を設けるとどうなるかと言うと、プログラムマネージャーがあまり詳しくないのに延々と話し続ける事になる。あの人と話し、この人と話し、あちらと話していると、伝達過程で情報が失われてしまい、メッセージが正確に伝わらないことが多すぎる。

なので私は、顧客と直接向き合い、要求を直接聞くべきだと考えた。なぜこんなに多くの人間を間に挟む必要があるのか? そこで私が導入した施策の1つが、組織構造の変更だ。目標達成、つまり顧客への最善のサービス提供に合致させるためだ。これが第一の重要な点だ。

2つ目は「徹底的な責任感」という文化を根付かせた事だ。大企業では「自分の仕事さえ終われば良し」という概念が蔓延している。「それは彼がやっていないのが理由で、自分の問題ではない」という訳だ。しかし私が望む文化とは「すべての問題は全員の問題」だ。何故なら私たちの目標はただ1つ、顧客に最高の体験と製品を提供することだからだ。

例えば営業担当に私はこう言う。「チップを配送中のトラックが高速道路で故障したら、それはあなたの問題だ。チップを必要とする顧客にサービスを提供できなかったからだ。運送会社の責任にできない。彼らができなかったのなら、それはあなたの問題だ。解決策を考えなさい」と。どうすべきか? 自分で運転して製品を届ける事になるかもしれない。これは社内でも同じである。組織全体の目標は、最速で最高の製品を生み出すことだ。だから自分の仕事を終えたら、他の人も仕事を終えているか確認すべきだ。そうだろう? 全体のスケジュールを改善する必要があれば、追加作業が必要なら追加作業をするべきだ。目標は団結して最高の製品と最高のスケジュールを達成することだからだ。

こうした事により、組織全体の構造が変化した。要するに多くの遅延は、大企業特有の焦点欠如現象に起因していたと私は考えている。

Rogan氏:私がAlteraに着任したのは、Raghib(Hussain)が着任する数か月前だった。そこで見て取れたのは、仕事の遂行上のさまざまな問題だった。ところがRaghibが新しいチームを率いて導入したものの1つが、設計プロセスへの新たな方法論と規律だった。

私が若くてハンサムなエンジニアだった(*2)ずっと昔の頃は、Revision A/B/C/Dと複数のSiliconが製造されてテストされる、という進み方が珍しくなかった。しかし今ではMaskの製造コストと市場投入までの時間が大きな問題になっている。Memory InterfaceやProcessor Subsystemの設定など、Raghibが着任以前に使われていた手法では見落とされていた多くの要素が、現在では十分に理解されている。だからこそ、Raghibが新たな規律を導入したことで、以前直面していた問題の多くを回避できるようになったと理解している。

筆者注:(*2) そもそもAMD時代から一度もエンジニアだった事は無かった気がするのだが……

Hussain氏:あと私が先に言及しなかったことだが、私の直属スタッフの大半は新規採用だ。何故なら私の目標は、まず第一に組織全体がトップから完全に一体となって連携することだったからだ。そして各領域のリーダーには、適切な能力と知識を備えた分野の専門家であってほしい。だからすべての領域を見直し、より優れた専門家が必要だと感じた領域では交代させた。つまり、リーダー層の一部はAltera在籍者だが、多くは新規採用だ。いずれもAlteraに勤務するのは初めてだが、私は20年以上前から彼らを知っており、各領域の業界専門家だ。

Q:やはりEETimesのインタビューであなたはAlteraに根付いたIntelの文化を変えてゆきたいと語っておられました。しかし過去10年の間に多くの有能な人材がAlteraというかPSG(Intelのプログラマブル・ソリューション・グループ)から流出し、それを普通のIntelの社員が埋めた格好になっています。こうした方々に新しいAlteraの文化は馴染むのでしょうか?

Hussain氏:Intel出身なのかAlteraに元々いたのか、あるいは外部企業出身かといった事は全く関係ない。重要なのはMindsetだ。適切な成長Mindsetを持ち、顧客に高品質な製品を提供したいという情熱を持つ人材を必要としている。そうした人材であれば、どこから来たのかは問題ではない。

だから私が言いたい事は、ここにいて顧客に価値を提供したいと思っている人たちは全員、Alteraに残ってほしいという事だ。給料をもらうためだけにここにいるような人は、ここにいなくても構わない。実際、そのMindsetを身につけた人は沢山居た。

その一方で、そうしようとしなかった人もたくさん居た。だから、そう、彼らは去った。それでいい。つまり、良い価値を提供するために努力しようとしない人々を私は望んでいない。だからそれでいいのだ。そして、私たちが今後採用するすべての人には、この成長志向のMindsetを確実に持ってもらいたいと考えている。

使いやすいFPGAとしてツールとIPの拡充を重視{#ID6}

Q:次にCustomer Focusの話です。あなたは使いやすいSoft IPについて言及されましたが、具体的にどのようなツールセットやミドルウェア、Soft IPを考えておられるのでしょう? またAlteraは広範な市場をターゲットにしているので、各分野の特定用途向けIPを同時に提供することは不可能だと思うのですが、何か優先順位などがあるのでしょうか?

Hussain氏:まずツールについて言えば、9月にリリースした「Visual Design Studio」がある。これはSoftware Interfaceを使いやすくするための第一歩だ。Visual Design Studioで、顧客が適切なFPGAを容易に選択できるようになった。そして適切なSoft IPを選ぶと、自動的にそれを利用できるRTLを生成してくれるので、ユーザーが手作業でこうした作業を行う必要がなくなる。これが最初のステップだ。今後はAIを利用して、顧客のニーズに基づいたRTLコードを生成できるようにしてゆく計画だ。つまりこのツールの開発はエンドマーケットには依存しないから、どんなマーケット向けであっても、要件に基づいてコードを生成できるようになる。

2つ目に、すべてのマーケットに対して我々単独でSoft IPを提供している訳ではない。実際には多くのエコシステムパートナーと協力しており、ここには300以上のSoft IP Providerが参加している。具体的には我々が要件を提示し、Soft IP Providerがそれらを実現する事を支援している。目標は可能な限り多くのSoft IP Solutionを提供する事だ。

ただFundamentalなSoft IPに関してはまた話が異なる。例えばPCIeやEthernet MAC、RDMA、あるいは低LatencyなMemory Transactionといったものだ。こうしたAlteraの自社開発のSoft IPは現在230種類ほどあるが、今後もこうしたFundamental IPの提供に注力してゆく。

幅広い製品ポートフォリオを展開する中で、チップの開発にはどうしても時間がかかる。完全な製品の量産までには1~2年、あるいは2~3年を要するかもしれない。こうしたチップの開発と並行して、FundamentalなSoft IPのチームは、それらの製品の市場投入の際に必要となるIPを開発する事になる。つまり新製品の投入に当たっては、HardwareとSoftwareの両方をまとめて提供するのが当社の計画だ。

  • Raghib Hussain氏

Q:ツールの話で言えば、例えばXilinx(現AMD)のVitisとかLattice SemiconductorのPropelの様なソリューションを現在Alteraは提供できていないと思うのですが?

Hussain氏:現在当社には旧製品であるArriaやCyclone、Maxシリーズがある。もちろんこれらは少し古い物であり、製品をアップグレードする予定だ。実のところ当社はLatticeを競合とは見ていない。真の競合相手はXilinxだと考えている。元々LatticeのアーキテクチャはローエンドのCPLD(のReplacement)にフォーカスしており、大規模FPGAへのスケーラビリティに欠けている。AlteraとLatticeは1983年、Xilinxは1984年に創業しており、いずれも40年以上の歴史がある訳だが、LatticeがハイエンドでAlteraやXilinxと競合できなかった理由は、そのアーキテクチャが常にローコスト、ローパワーのローエンド向けに設計されていたためだ。なのでAlteraやXilinxと競合するためには、より高い性能を発揮でき、かつ数百万LUTまで拡張できる新しいアーキテクチャが必要であり、その開発には多額の投資が必要だと私は理解している。なのでLatticeに関しては全く懸想していない。真の競合はXilinxであり、これは歴史的に見ても明らかだ。かつてはほぼ50:50の競合関係にあった。

ただIntel傘下の時代、IntelはAlteraをx86のOffloadと位置づけ、なのでx86のOffload用途が必要な用途向けにのみ投資した。ただ独立した現在、我々にそうした制約はなくなっている。なので我々は(FPGAがアドレス可能な)マーケット全体に向けての投資を行える。

非公開企業である利点の1つは、投資家による出資が確約されている事だ。つまり売上高の一定の割合以上に投資できないといった公開企業が抱える市場の制約を受けることが無い。実際、長期計画において、戦略的に意味があるのであれば、いくらでも投資可能である。これにより、通常のシェアを超える規模で投資する機会が生まれることになる。

ローエンドは狙わない

Q:ちょっと確認させてください。10年前、つまりIntel買収直前のAlteraはLatticeの10倍の売り上げがありましたが、Intel時代末期には3倍程度に縮まっていました。

Hussain氏:非公開企業なので詳細は公開していないが、現在は4倍以上ある。

Q:なるほど。で、ご存じの様に、現在ローエンドのマーケットが急成長中です。TIは最近CPLDを新たに発表しましたし、ルネサス エレクトロニクスもForgeFPGAをラインナップしました。ADIはFlexLogicを買収後、まだ新製品を発売していませんが、彼らの新しいIDEはeFPGAをサポートする事を明らかにしています。

Hussain氏:そう、ローエンドはまさにそうだ。LatticeやMicrosemi(現Microchip、元はActel)、ADI、TI、ルネサス。あと中国には恐らく20以上のメーカーがある。ただ我々はそこでは競合しない。

Q:そうした小さいマーケットはAlteraは志向しない、と? MAX 10が最小構成という理解でいいのですか?

Hussain氏:その通り。我々はGlue Logicの様な、言い換えればCommodityなマーケットには参入しない。最低でも25K LUT以上ということになる。

Rogan氏:35年前、私がまだAMDに居た頃に、Alteraは(最初の)MAXを発表した。その後、30年に渡って(MAXは)販売されていたんだ。別の言い方をしよう。x86のマーケットは、ハイエンドプロセッサに向けて投資される。なぜなら時間が経過すると、その製品はミドルレンジから最後にはローエンド向けに移って行くからだ。しかしFPGAのマーケットでは、ハイエンドとミドルレンジ、ローエンドでは全く機能が異なる(から、時間が経過してもハイエンドがローエンドに落ちてくることは無い)。Intelの時代、彼らは一部の領域への投資は行っていたが、この移行構造を理解していなかった。なので我々は、各レベルに向けたFPGAに対して均衡の取れた投資を行っている。

日本市場をどう攻めるか?

Q:次に日本市場について。Intelによる買収前、日本では多くのユーザーがAlteraを利用しており、特にCycloneやArria、MAXシリーズは非常に広範に利用されており、一部のユーザーはStratixも利用していました。Intel PSGの時代にいくらかのユーザーはStratixからVirtexにシフトしましたが、まだCycloneやArria、MAXを利用し続けているユーザーは、あなたが説明された500社の中に多く存在します。ただ彼らは引き続きCycloneやArriaを利用しており、Agilexに移行したいと思っている訳ではない事が多いわけです。こうしたユーザーをどうお考えでしょう?

Hussain氏:まず既存のCycloneやMAXは、2040年までの長期サポートを行う事をすでに発表している。それに、最近の要件や新しいI/O、それと最新のセキュリティアルゴリズムなどを搭載し、従来と同様の市場に対応できる新製品の開発を進めている。ただAgilex 3も非常に優れた製品だ。現状では処理要件が以前よりも増えており、Cycloneでは実現できない事も出て来ているが、そうした事もAgilex 3では可能になる。

簡単な例を示したい。以前マザーボードにI/O Bridgeが必要だった時、それは非常にシンプルなチップで実現出来た。ところが今ではRoot of Trustや認証機能、暗号/復号化、その他の様々な処理が必要になってきており、これを低い消費電力で実現しなければならない。Agilex 3ならこれが容易に実装できる。

同種の問題は、他の多くのアプリケーションでも見られる。以前は単にI/O Bridgeで済んでいたものが、今やそれ以上の機能が必要になってきている。特にフィジカルAIの分野では、多くの製品が高速なローカルでの推論能力を必要としている。ところがCycloneやMAXにはそうした能力を持ち合わせていない一方、Agilex 3はこうした能力を提供できる。

  • Hussain氏

Q:MAXシリーズは別にして、CycloneとかArriaに関して言えば、確かに一部のモデルはAgilex 3への移行が容易ですが、そのままでは移行できないものもありますよね?

Hussain氏:その通り。一部のアプリケーションについてはAgilex 3の世代でMigrate出来るが、その他のものについては現在開発中の次世代製品で対応する事になるだろう。この次世代製品で包括的な製品ラインナップを展開する。

注目する防衛市場に対する戦略

Q:その次世代製品というのはAgilexという名称ですか?

Hussain氏:AgilexになるかAgilex+になるか、あるいは別の名前になるかは現在検討中だ。

Q:ただしAgilexのアーキテクチャ(Hyperflex Architecture)をベースとする?

Hussain氏:ハイエンド製品はAgilexのアーキテクチャが最適だろう。ただローエンド向けには別種の最適化が必要になるため、何らかのバリエーションになるかもしれない。

Q:もう1つ質問です。Rogan氏は日本の防衛ビジネスを有望視しておられる。ご存じの通り日本の防衛ビジネスの日本以外への販売が解禁されたのはここ数年の話で、長らく日本の防衛ビジネスは非常に閉鎖的で、市場規模も小さかった。こうした傾向は今も引き継がれており、市場規模の拡大率は非常に遅い。私が思うにAlteraそのものが日本の防衛ビジネスに参画する事そのものはかなり難しいと思う。この辺りは米国や欧州と事情が異なると思いますが、Alteraは単独で参画されるのか、それともどこかのメーカーとパートナーを組むのか? また参入に要する期間をどの程度と見積もっておられるのか?

Hussain氏:日本市場に関してはSam(Rogan)にコメントして貰うが、最初に説明しておきたい。我々は防衛ビジネスを統合された市場と捉えている。米国、欧州、日本のアプリケーションは類似している。現在、世界的に各国が装備の自国生産を拡大する傾向にある。欧州諸国はもちろん、日本も防衛分野への設備投資を増やしている。ただ当然ながら、自国で生産するか、米国や欧州からモジュールを購入するかは各国の判断に委ねられている。なのでこれは日本固有の問題ではなく、グローバルな動向と捉えている。なので、もし仮に日本が海外調達を選択した場合は、我々は海外市場での競争に勝ちたいと考えている。そうなれば非常に有利な立場に立てるだろう。一方で日本が国産化を進める場合、その一翼を担いたいと考えている。

さて、防衛市場は長期投資が必要となる。これはよく知られている通り、収益がピークに達するまでには5~7年かかる、つまり長期市場だと理解している。先に述べたように、我々は長期的な視点で参入している。私たちは今後数十年に渡り、この会社を成長させてゆきたい。短期的利益を得て撤退するつもりはなく、FPGAに注力してゆく。FPGAが広範な市場で利用され、長期的な取り組みを要すると理解しているから、今後数十年にわたり継続的に関与するつもりだ。

Rogan氏:では私から補足を。防衛に関する話題は常にセンシティブなモノであり、慎重に対応する必要がある。ただその前提を踏まえた上での話だが、私が過去に(所属していたXilinxで)通信市場や無線市場に参入する際、私たちは大手ハードウェアプロバイダーと協議したり、通信事業者とも協議を行った。同様に防衛産業に関しても、日本のハードウェアメーカーとも話を行っているし、その顧客ともお話している。それと、米国と日本の国家レベルでの戦略的関係ゆえに、日本への当社ソリューション導入に対する抵抗は今のところ一切感じていない。顧客だけでなく顧客の顧客からもである。

その点を踏まえて、顧客(やその顧客)が検討している分野はどこか? もちろん軍事関連で言えば武器弾薬など様々な要素があるが、現在ドローン対策とかレーダー、軍事向け秘匿通信といった分野で大きな関心が集まっている。通信向けではAgilex 7が、ドローン対策ではData Converter内蔵タイプのAgilex 9が相当する。

Q:Agilex 9?

Rogan氏:そう。私の意見ではAgilex 9が最もスマートなSolutionだ。ドローン対策において重要なのは全Spectrum、あるいは可能な限り広いSpectrumをスキャンできることだ。他社のMid-Band Converter FPGA Solutionでは、帯域の一部しかスキャン出来ない。だから、他社のSolutionではSpectrum Scanningしても、ドローンが周波数ホッピングを実施すると見逃す可能性がある。しかしAgilex 9なら全Spectrumを走査する能力があるから、周波数ホッピングで補足されない様にするのは非常に困難だ。

これは受信側の話だが、他に識別とかデコイ、攻撃など様々な対策が要求される。日本は無線技術に非常に強く、そしてドローン対策には無線技術が鍵となる。我々は最高のData ConverterをAgilex 9に搭載している。これが我々をユニークな立場に置いていると考えて居る。

日本でも期待されるAI推論でのFPGA活用

Q:なるほど。ところでRogan氏に以前伺ったのですが、AlteraはeASICの既存のビジネスは引き続きサポートするものの、新しいビジネスを展開する予定は無いという話でした。

Hussain氏:その通り。eASICはコンセプトこそ興味深いが、利用するのは非常に大変だ。なのでAlteraとして分社前にIntel自身がそのビジネスの継続を断念していた。なので既存顧客へのサポートは継続するが、将来的なeASIC製品の展開の予定は無い。

Q:ただ例えばMarvellはDesign Serviceを提供していましたよね。顧客は例えばFPGAでプロトタイプを作り、それを基にMarvellがASICを製造するといった形で。ただこうしたデザインサービスは結構高価なので、大口顧客は兎も角SMB(Small Medium Business)ユーザーにはちょっと敷居が高く、こうしたユーザーにeASICは適切なソリューションだったと思うのですが?

Hussain氏:Marvellの時代には私がDesign Serviceの面倒を見ていたからそれは知っている。BroadcomとMarvellは最先端の、最高性能の製品を提供するサービスを行っていた。そしてこれには数億ドルのコストが掛かるため、広範な市場向けに開発するのは採算が合わない。だからこそFPGAを超えたSolutionが求められている。どんなSolutionがこうしたマーケットに適しているのかを現在も検討している(が、少なくともeFPGAではない)。

Q:先程、日本は戦略的なマーケットだというお話をされていましたが、現在のAlteraの中で、Region別で言えば日本はどの程度の売り上げを占めているのでしょうか? それと、今後の日本市場での成長にあたってRogan氏に何を求めてゆくのか教えてください。

Hussain氏:まず最初の質問について。ビジネスを構築するにあたり、TAMとSAMに焦点を当てている。Sam(Rogan)の方じゃなくてね(笑)。その意味では、米国と欧州、日本、中国が半導体業界を牽引する4つの主要な市場セグメントと言える。日本におけるTAMは500億ドルくらい。ここからメモリなどを除いたロジック半導体は200億ドル程度。このうちFPGAは6億ドル程度を占めている。ただ私自身は2つの(FPGAマーケットの)成長ドライバがあると考えている。1つはAIだ。現行のシステムにAIを組み込むデマンドが成長ドライバになる。もう1つがASICのコスト高騰だ。これによりますますASICからFPGAへの移行が進むだろう。現在は6億ドル程度だが、今後20~30億ドル規模になると想定している。これが、私が日本を戦略的なマーケットと位置付ける理由だ。過去のAlteraはx86のCo-processorの用途向けのみに投入されていた。この位置付けを基に判断を下しても正しい判断とはならない。なので現在の収益ではなく、市場の成長性と規模に基づいた戦略的判断を下している。

Rogan氏:先に私は日本が無線分野で強いと説明したが、実はImage Captureの分野でも非常に強い。そして今、我々は現在AI TrainingからInferenceに移行しつつある段階だ。なので、このImage CaptureをベースにしたInferenceのマーケットはまだ存在しないが、今後は多くの日本の顧客が参入し、結果としてマーケットが市場は成長すると予想している。顧客もまずどの方向に進むべきか手探り段階なので、AlteraのFPGAを使って色々実装を試すことになると思う。我々は彼らと共に成長してゆきたいと考えて居る。

インタビューを終えて

ということで、1時間程Hussain氏にお時間を戴けたことをまずは感謝したい。Cycloneのラインの新製品も色々考えている、という話は興味深いものがあった。とはいえ、Intelの買収前にはそれこそXilinxと50:50だったAlteraの売り上げは、今では大分落ちてしまっている。まずはこれをXilinxと互角になるところまで持って行かなければならない。多分同社にとって痛かったのは、5G基地局ビジネスを(Stratix 10の出荷の遅れで)Xilinxに全部持っていかれてしまった事だろう。現在5G Advanced(5.5G)の基地局ビジネスが立ち上がり始めているが、5GでVirtexとかVersalなどを使ったシステムが納入されているところにAgilex 9を持ち込んでも、そうそう簡単に採用されるとは思えない。このビジネスの穴を他でどう補うのか、がまずはHussain CEOの上での見せ所となりそうだ。