新生Alteraを率いるエンジニア出身のCEO

2025年11月10日にAlteraのCEOであるRaghib Hussain(ラギーブ・フセイン)氏が来日されて記者説明会が開催されたが、これとは別に同氏に個別にインタビューをする機会に恵まれたので、その内容をご紹介したいと思う。まずHussain氏から簡単な説明があったので、これをご紹介してからQ&Aの内容をご紹介したい。

  • Raghib Hussain

    AlteraのRaghib Hussain CEO

Hussain氏は元々Cavium NetworksというMIPS64ベースのNetwork Processorの会社の創業者兼CTO(のちにCOOも兼任)として、同社のOCTEONシリーズプロセッサの開発に携わった。

Hussain氏曰く「DECのEV5(Alpha)の開発チームが居たので、社名を覚えておられるだろう」(*1)。2000年に創業し、2007年にIPOを果たすが、その後2018年にMarvellに買収された。その後はMarvellでPresident of Products and Technologiesというポジションに就くものの、「IntelがAlteraをSpin outさせるのを見て、再び世界最大の独立系FPGA企業を作る絶好の機会だと考えた」という事でAlteraに加わったという。

筆者注:(*1) 冒頭の挨拶が「一度どこかでお目にかかった覚えがあるんですが。Hot Chipsだったか、それともMicroProcessor Forumだったか?」という問いに、「ああ、それは多分MicroProcessor Forumの方だよ。」との回答。多分2004年のFall Processor Forum 2004のあたりではないかと思う。

顧客中心のビジネスで成長を目指す

そんなHussain氏によるAlteraのOperating Modelは顧客を中心に据えたものとなる(Photo01)。

  • Intel時代に出来ていなかった

    Photo01:これがIntel時代に出来ていなかった、ということが問題といえば問題だった訳だが… (資料提供:Altera、以下すべて同様)

顧客と緊密に連携し、問題を理解し、FPGAの革新を通じて解決策を提供するのを目的とし、

  • 官僚主義や大規模なプログラム管理を排除した、いわばスタートアップ的な意思決定スタイルを導入することで問題解決に集中する。
  • 品質とスケジュールを通じて卓越性を追求し、製品を迅速に生産に移し、顧客が新技術に素早くアクセスできるようにする。
  • 同時に品質の水準を引き上げる。
  • 最新のAIをツールに活用し、顧客が使いやすいツールを提供する。

といった形で、顧客との連携を緊密とし、問題を解決し、顧客にとってもAlteraにとっても有益な価値を共に創造することを目標とするとしている。

戦略的に重要市場に位置づけられる日本

そんなAlteraにとって日本は戦略的に重要なマーケットだとする(Photo02)。

  • 30億ドルというのはあくまでもTAM

    Photo02:この30億ドルというのはあくまでもTAMであって、そのTAMの何割をAlteraが(Xilinxに打ち勝って)獲得できるか、というのがSam Rogan氏の腕の見せ所になる訳だ

理由として、

  • 日本には多くの技術と産業が存在し、歴史的に見ても、日本はイノベーションと技術におけるリーダーシップにおいて重要な役割を果たしてきた。そしてAlteraは過去35年間、日本へのコミットメントを続けてきた。
  • この35年間、Alteraは多くの産業分野に渡って日本の顧客と非常に信頼できる関係を築いてきた。現在日本には500社以上の顧客がおり、通信から医療、防衛、産業オートメーションに至るまで、あらゆる分野のアプリケーションをカバーしている。
  • Alteraは2030年までに、日本のFPGA市場が30億ドル規模に成長すると予測している。その背景には複数の要因があるが、
  1. 産業分野におけるPhysical AI自動化が変革期を迎えているため、新たな機能が必要とされている。
  2. 防衛装備への投資が自立化のために大幅に増加しており、ここにビジネスチャンスがある。
  3. より重要な点として、FPGAの適用範囲全体が拡大しつつある。これはASICの開発コストがさらに高騰しているためである。現在ASIC開発を正当化するには、年間支出が5億ドル以上必要で、1億ドルや2億ドル程度の用途ではASICは採用できない。なのでこれに代わるHardwareベースのSolutionが必要であり、FPGAが最適な選択肢である。

の3つの要因がFPGAのTAM拡大を牽引すると確信しているとする。

Alteraが重視するInnovation

現在、Alteraで頻繁に用いるキーワードは“Innovation”なのだそうだ(Photo03)。

  • 冒頭の説明はSam Rogan氏のもの

    Photo03:この冒頭の説明はSam Rogan氏のもので、「うん、同じ話をXilinx時代にも聞いたね」と突っ込みを入れざるを得なかった。そこで「そう、FPGAのビジネスというのはそういうもんだ」と切り返してきた辺りも流石だが

Sam Rogan氏(General Manager, APJ Sales, Altera、President,Altera Japan)曰く「例えば日立とか三菱といった大企業のエンジニアが仮にアイデアを持っていたとする。しかしそのアイディアを実現するのにASICを構築する必要がある場合、若手エンジニアが2億ドルのNRE承認を得るなんて事はあり得ないだろう? でもFPGAなら承認される可能性が高い。つまり若手エンジニアは皆アイデアを持っている。成功する案もあれば失敗する案もある。それがInnovationの源泉になる」という訳だ。

  • Sam Rogan

    Sam Rogan氏(General Manager, APJ Sales, Altera、President,Altera Japan)

ただFPGAの適用範囲は非常に広いが、すべての企業が大規模なエンジニアリングチームを保持している訳ではない。なのでAlteraは「開発者第一主義」と呼ぶ目標を掲げた。つまり開発者にとってFPGAの導入を非常に容易にすることが目標であり、そのために最高のSiliconだけでなく、非常に使いやすいSoftware ToolやIPを提供すると共に、FPGAの注文・入手プロセスを簡素化するため、強固な流通ネットワークを構築中だとする。

同社は現在マクニカがDistribution Partnerとなっているが、今後はさらに密接に協力して多様なApplicationやSolutionを提供する予定だとしている。また最適なSolutionを実現するため、多数のIP Providerとも協業を進める予定だそうだ。

Alteraの現在の主力製品は「Agilexシリーズ」な訳だが、Hussain氏曰く「これは最高のFabricを実装しており、実際、Xilinx(AMD)を上回るFmaxを達成し、さらに自社Toolを利用してFabricの利用率90%以上を実現可能である他、DDR5-5600の対応やPQCを含む最新セキュリティアルゴリズムを搭載。DSP同様にAI ProcessorがFabric内に実装され、現時点でTensorFlowをそのまま処理できる唯一のFPGAである」としている。これにより、Physical AIの実装が極めて容易(Photo04)という形で実例を示したうえで、最後に改めて、

  • クラス最高のFPGA体験を提供する。これには高品質なSiliconと最高のSoftware toolなどを含んだものとなる。
  • 堅牢で冗長性のあるサプライチェーンを確保する。具体的には複数のFoundryや複数のOSATを世界中のあらゆる地域で利用可能にする。
  • AlteraはAIに全面的に注力している。AI Application向けSolutionを提供するだけでなく、AIを活用して顧客のFPGAの導入をより容易にする取り組みも行ってゆく。 という同社の目標が語られた(Photo05)。
  • Roboticsの分野でのFPGA活用イメージ

    Photo04:Roboticsの分野では、Sense→Plan→Actのフィードバックを迅速かつ効率良く高精度で行う事が重要であり、こうした用途にはFPGAが最適解であるとしている

  • AgilexはIntel Foundryでしか製造が出来ていない

    Photo05:ただ現状、AgilexはIntel Foundryでしか製造が出来ていないのが大問題な訳だが、流石にこれを是正するには相当な時間が掛かりそうだ