北京大がRRAMベースの高精度演算可能なアナログ半導体を開発
北京大学 集積回路学部人工知能研究所の研究チームによる「Precise and scalable analogue matrix equation solving using resistive random-access memory chips(RRAMチップを用いた精密でスケーラブルなアナログ行列方程式解法)」と題する論文がオンラインジャーナル「Nature Electronics」に10月13日付けで掲載された。新たなコンピューティング・アーキテクチャにおける大きな進歩が中国から発表されたとして話題になっている。
論文によると研究チームは3ビットRRAM(抵抗変化型ランダムアクセスメモリ)をベースとした高精度かつスケーラブルなアナログマトリックスコンピューティングチップの開発に成功したという。この半導体チップは、従来のアナログコンピューティングの精度と比較して5桁向上させることに成功。デジタルシステムに匹敵するアナログ演算精度を達成したとする。
GPUと比べても高い性能を実現
研究では、既存ファウンドリの商用40nm CMOSプロセスを用いて、TaOXベースのRRAMチップとして、HP-MVM(高精度行列ベクトル乗数)操作を実行するための1MビットRRAMチップと、8×8アナログINV回路でLP-INV(低精度逆行列)演算を行うRRAMアレイを開発したという。メモリセルは1T1Rセル構造を採用したとする。
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TaOXベースのRRAMチップ。左がHP-MVM操作を実行するための1MビットRRAMチップ、中央上が8×8アナログINV回路でLP-INV演算を行うRRAMアレイ。中央下はメモリセルで1T1Rセル構造が採用されている。右は書き込み検証法で確認された8つのコンダクタンス状態の累積分布関数プロット。十分な読み出しマージンが見て取れる (出所:Nature Electronics)
研究チームによるパフォーマンス評価によれば、大規模なMIMO(Multi-Input and Multi-Output)信号検出やその他の重要な科学的問題を解決する場合、このチップの計算スループットとエネルギー効率は、現在のトップクラスのデジタルプロセッサ(GPU)と比べても数百~数千倍ほど高いことが示されたという。
そのため、この成果はアナログコンピューティングという100年来の課題を克服しようとする取り組みにおいて重要な節目となるものであり、ポスト・ムーア時代におけるコンピューティングのパラダイムシフトにおける進歩を表すものとなり、AIや人工知能や6G通信といった分野において増大するコンピューティング需要の対応に向けた道を切り開くものとなる可能性があると指摘している。
具体的には、例えば6G通信システムでは、基地局が低消費電力で膨大なアンテナ信号をリアルタイムに処理することを可能にし、ネットワーク容量とエネルギー効率を向上させる可能性があるとするほか、AI分野では、大規模モデルのトレーニングにおける二次最適化アルゴリズムを加速し、トレーニング効率を向上させることが期待されるとしている。なお、研究チームでは今回の成果のもっとも重要な点は、低消費電力特性により、複雑な信号処理とAIトレーニングと推論の統合をエンドデバイス上で直接実行できるようになることであるとしており、これによりクラウドへの依存を低減し、エッジコンピューティングを新たな発展段階へと押し上げる可能性につながるとしている。