Samsung Electronicsの元幹部と研究者3名が10月1日に18nm DRAMの中核技術を中国CXMTに流出させた疑いで起訴・拘留されたと韓国メディアが伝えたが、Samsungはこの技術流出により2024年だけで約5兆ウォン規模の売上損失を被ったと推定されている。

SamsungのDRAM製造用の超臨界流体洗浄乾燥技術やNAND製造用の枚葉リン酸エッチング技術も中国に流出させたとして別の容疑者が逮捕されているが、半導体以外にも10月7日にソウル警察の産業技術保安捜査隊が、一部の従業員が有機EL技術を中国に流出させたとして韓国・牙山市のSamsung Displayの拠点を家宅捜索している。

SK hynixの技術も中国に漏洩

韓国ではSK hynixも技術流出に悩まされている。2016年に同社に入社し、2018~2022年にかけて中国の販売子会社に勤務していた容疑者はその後、Huawei子会社のHiSiliconに転職したが、その間、SK hynixから合計186ページの資料を持ち出したとされ、その中には先端パッケージ技術であるハイブリッドボンディングに関する情報も含まれていたという。また、同容疑者は2022年2~7月の間に170件の先端技術と企業秘密、そして約5900ページの機密データを漏洩させた疑いもあるという。

韓国では2024年1月に産業技術保護法が改正。政府指定の半導体などの核心技術の海外流出には最大18年の懲役、一般産業技術の海外流出でも最大15年の懲役が科されることとなったほか、核心技術の漏洩に対する罰金も従来の最大15億ウォンから65億ウォンへと引き上げられた。2022年9月に韓国最高検察庁科学捜査部傘下に「技術流出犯罪捜査支援センター」が設置されてからの3年間で226人が立件され、うち73人が拘束起訴されたという。

TEL子会社元社員によるTSMCの2nm製造技術漏洩のその後

台湾の高等検察庁は8月、国家中核技術の機密を不正流用したとしてTSMCのエンジニア2人と東京エレクトロン(TEL)台湾子会社の半導体装置マーケティング担当者(懲戒解雇、元TSMC技術者)を起訴した

このTEL元社員には、TSMCから競合であるLam Research製エッチング装置に関する情報を違法に入手し、TELのエッチング装置の性能改善を図り、TSMCの納入・認証テストの合格に向けてTSMCの技術陣と情報共有をした疑いがある。台湾捜査当局は「関連する法人や個人が刑事責任を負うか否かについて、引き続き3人の起訴とは別の事件として分離して捜査を進めている」と説明している。

TELは河合利樹 社長兼CEOが9月に2度、台湾のTSMCを訪問して謝罪。1度目の訪問では、TEL台湾の経営幹部の懲戒処分への言及がなかったため、TSMCのC.C.Wei会長が激怒し短時間で決裂したが、2度目の訪問にて、TEL台湾のエッチング装置担当の日本人幹部を含む経営幹部の懲戒処分に加えて、装置の納入迅速化、直接調達による割引、高度なプロセストレーニングのサポートなどの履行で暫定合意がなされた模様であると台湾メディアが伝えている。TSMCが今後も先端プロセスに邁進していく中、TELも関係性の維持を重要視しており、TSMCへの補償は相当額におよぶと台湾半導体関係者は見ている。

なお、台湾高等検察署はこのTSMCの技術流出事件を捜査する過程で、同様の事案が他にも7~8件あることを示唆。その中には日韓の半導体関連企業も関与している可能性があるとし、捜査を進めていくとしている。