今や経済安全保障の要として、国会のさまざまな政策と切っては切れなくなった半導体産業。そのけん引役であるAIを筆頭に、自動車、産業機器、PC、スマートフォンとなければ生活に支障が出るものばかりに必ずと言ってよいほど搭載されている。
本稿では、市場の成長が続く半導体産業について、注目すべきニュースや技術トレンド、研究成果などをタイムリーにお届けしていく。
今回は、2025年10月4日~10月10日にかけて弊誌TECH+にて注目された半導体関連のトピックスをいくつか紹介する。電気自動車を中心に次世代パワー半導体として活用が期待されるSiC。6インチ(150mm)から8インチ(200mm)へとウェハサイズの大口径化を各社が進めているが、ここにきて中国勢がさらなる大口径化として300mm化の実現に向けた動きを見せている。また、米国の大手半導体製造装置メーカーのApplied Materials(AMAT)が2nm以降のロジック/メモリの製造に向けた3種類の製造装置を発表したほか、Intelが2nmプロセス相当となるIntel 18Aを採用したPanther Lakeの概要を公開した。
中国勢がSiCの300mm化に意欲
SiCパワー半導体のウェハサイズは、TrendForceの2024年10月時点の調査によれば、当時はWolfspeedのモホークバレー工場のみ8インチ SiCパワー半導体ウェハに対応していたが、2025年に入ると2月にInfineon Technologiesが8インチベースのSiCパワー半導体の供給開始を発表したほか、三菱電機も10月に熊本県菊池市の新工場の竣工式を開催し、11月より数量を絞った形ながら8インチSiCベースでの生産を開始することを明らかにするなど、各社が徐々に8インチでの生産を開始している。
ウェハサイズが大きくなると、ダイサイズが同じ場合、面積に応じて取れ数が増えるため、200mmから300mmへインチアップした場合、2.25倍に増加することとなる。そうなると一気に市場に流通する量が増加し、デバイスのコストダウンを図ることができるようになるというメリットがある。
ただし、シリコンでも同様だが結晶を均一にウェハ全面に成長させる技術を確立する必要があり、口径が大きくなればなるほど、その技術的難易度が増していくこととなる。
そうした中、中国最大のSiCウェハサプライヤであるSICC(山東天岳先進材料)が高純度半絶縁性、P型、N型の300mm SiCウェハをSemicon China 2025で紹介したことが話題になったほか、浙江晶盛機電(Jingsheng)の子会社である晶瑞電子(Jingrui SuperSiC)は2025年9月に300mm SiCウェハパイロットラインの立ち上げを発表するなど、SiCの300mm化に向けた動きを活発化している。
ただし、いずれも商用生産までには時間がかかると見られており、今後、どのタイミングで300mm SiCウェハが商用レベルに達するのかが注目される。
Intel 18Aの量産が開始、AMATは2nm以降を見据えた製造装置を発表
中国勢がSiCの300mm化に意欲を見せる一方、先端プロセスをけん引してきた1社である米国の大手半導体製造装置メーカーApplied Materials(AMAT)が、2nmプロセス以降の半導体製造に向けた3種類の半導体製造装置を発表した。
先端パッケージの進化を支援するDie-to-Waferハイブリッドボンディング装置「Kinex」、GAAトランジスタの高性能化を可能とするエピタキシャル成膜装置「Centura Xtera Epi」、3Dチップの歩留まり改善に向けた電子ビーム(Eビーム)を活用した計測装置「PROVision 10」の3種類で、いずれもすでに大手ロジックならびにメモリメーカーにて採用済みであるという。
また、同じく米国の動きとしてはIntelが10月9日(米国時間)、Intel 18Aプロセスを採用したプロセッサ「Core Ultra Processor(Series3)」(開発コード名:Panther Lake)の概要を公開。2025年末までに一部製品の出荷を開始する予定であることを発表した。
Intel 18Aは、他社の2nmプロセス相当の微細技術で、Intelでは、Intel 3プロセスと比べてワット当たりパフォーマンスを最大15%、チップ密度を30%向上したと説明している。
現在、Core Ultra Series3に加え、次世代Xeon「Xeon 6+」(開発コード名:Clearwater Forest)もIntel 18Aを採用して製造される。このほか、Intelでは今後、少なくとも3世代のクライアント/サーバ製品の基盤として活用していく予定だとしている。
TSMCも2nmプロセスの生産を2025年下半期より開始しており、2026年には各社の2nmプロセス(Intel 18A含む)を採用した製品が次々に登場し、市場を賑わすことが予想される。




