今や経済安全保障の要として、国会のさまざまな政策と切っては切れなくなった半導体産業。そのけん引役であるAIを筆頭に、自動車、産業機器、PC、スマートフォンとなければ生活に支障が出るものばかりに必ずと言ってよいほど搭載されている。
本稿では、市場の成長が続く半導体産業について、注目すべきニュースや技術トレンド、研究成果などをタイムリーにお届けしていく。
今回は、2025年9月27日~10月3日にかけて弊誌TECH+にて注目された半導体関連のトピックスをいくつか紹介する。Intelの米国での製造拠点建設の遅れに対して、共和党の米国上院議員のBernie Moreno氏が現在の状況確認を求める書簡を送ったことが報じられた。
当初は2025年末の稼働を計画していたオハイオ州の新ファブ
オハイオ州での新工場建設計画は、Intelの前CEOであるPat Gelsinger氏が2022年に打ち出したもので、2022年後半より建設を開始し、当初の計画では2025年末には稼働する予定であった。
採用予定のプロセスは1.8nm相当の「Intel 18A」だが、Intelは2025年2月に、新工場の稼働を当初計画の5年後ろ倒しとなる2030年以降に延期することを社員向けに通達したことが報じられた。
Intel 18Aを採用した製品としては、自社製品としてはCPU「Panther Lake(開発コード名)」があるものの、有力な外部顧客の獲得には至っていないと言われている。延期を決めた際も、顧客の需要があれば作業を加速させ、運用を開始できる柔軟性を持たせつつ、ペースを落として建設を進めていくといった形の説明を行っており、生産ラインを埋めるだけの受注を獲得できていないことが示唆された。
2025年3月に同社のCEOに就任したLip-Bu Tan氏は現在、ファウンドリ事業の需要に見合わない投資の見直しを進めているほか、次世代プロセスである1.4nmプロセス相当の「Intel 14A」に対しても、顧客が付かなければ投資を見直すことも示唆している。
一方で、この2か月ほどで同社は米国政府からの出資をはじめ、ソフトバンクも出資を決定。NVIDIAと製品開発で提携をし、AMDからの製造委託の獲得に向けて動く可能性もうわさされるなど、取り巻く環境が激変している。
先端プロセスに話題が集中しがちなIntelだが、実は先端パッケージング技術でも高い技術力を有しており、ある市場調査では2022年の先端パッケージングの半導体メーカー別シェアではTSMCの16%を抑えて、Intelが20%でトップに立っている。現在の高性能半導体は、チップレットをはじめとする別々のプロセスで製造されたダイ/チップを組み合わせて1チップ化する先端パッケージング技術の進化が支えるようになってきている。同社の持つEMIBやFoverosという先端パッケージング技術、特にFoverosはTSMCのCoWoSを設計変更を行わずに移植することに成功したとも言われており、そうした先端パッケージング分野の技術進化を含め、引き続き、IntelがNVIDIAと並んで業界の話題の中心に位置していきそうである。
- 参考記事:インテルが米オハイオ州で進める半導体製造工場の延期に米上院議員が圧力
- 参考記事:Intel、オハイオ新工場の稼働開始を5年以上延期することを決定
- 参考記事:Intelが米オハイオ州に1.8nm対応ファブ2棟の建設を発表、2兆円超の投資を実施へ
- 参考記事:米政府がインテル株の10%取得を検討、半導体法補助金を株式に転換
- 参考記事:ソフトバンクGが米Intelに20億ドル出資、米国での半導体への投資強化
- 参考記事:NVIDIAとIntelが半導体開発で提携、Intel Foundryへの製造委託には慎重な姿勢
半導体製造の要となる露光プロセス、ArFとEUVで日本企業に動き
Intelをはじめとする半導体メーカーの進化を支える製造プロセスでも、要ともされるのが露光プロセスである。この分野で先週、今週と日本企業を中心とする動きが見られた。
まずは9月25日、露光装置大手3社の1社であるニコンが1時間あたり300枚以上のスループットを実現したArF露光装置「NSR-S333F」の受注を10月より開始することを発表した。
露光装置は、プロセスに応じて波長をi線/g線、KrF、ArF、ArF液浸、EUVと短くしてきた。基本的に半導体製造(前工程)向け露光装置は日本勢のニコンとキヤノン、そしてオランダのASMLの3社で占められてきたが、キヤノンはArF液浸の開発で脱落。ニコンはArF液浸露光装置は事業化できたが、さらに微細なプロセスを可能とするEUVからは撤退。事実上、EUV露光装置はASMLの1社独占提供状態となっている。
液浸でもないドライのArFの露光装置を今さらニコンが開発し、受注を開発したことを不思議に思う人もいるかもしれないが、半導体デバイス製造、特に配線層は現在は10層以上で形成されているが、トランジスタ素子に近いクリティカルレイヤはEUV露光装置による超微細加工などが求められるが、上層に行くとプロセスルールが緩くなるため、高価なEUVではなくArFなどの別の波長を用いた露光装置が活用され、その場合はスループットが重要になってくる。また、常にすべてのデバイスが先端プロセスを必要としているわけではなく、パワー半導体やアナログ半導体、イメージセンサなどはEUVやArF液浸などを用いないで製造されているものが多いこともあり、そうしたニーズにも合致できる露光装置となることが期待される。
その後、9月30日にはSCREENセミコンダクターソリューションズとIBMが、次世代EUVリソグラフィに向けた洗浄プロセスの開発に向けた協業を発表した。
2nmプロセス以降の超微細プロセスでは、これまで以上にウェハ上の微小な異物や傷に対応する必要がある。しかし、プロセスの微細化は素子をはじめとするさまざまな構成部位が微細になることを意味するほか、トレンチ(孔)のアスペクト比が高くなるなどの問題から、従来の洗浄手法をそのまま適用しても、洗浄しきれないこともあり、洗浄技術の重要性が増してきているとされる。
両社の取り組みも、そうした課題を踏まえたもので、これまでのナノシートデバイス技術を可能にした洗浄プロセスに関する共同開発の成果を基盤として、高NA EUVリソグラフィで求められる洗浄ニーズに対応し、高い歩留まりを実現できる堅牢なソリューションの構築を目指す模様である。