長年ライバル関係にあったNVIDIとIntel(インテル)が9月18日、複数世代にわたるx86製品を共同開発すると発表した。NVIDIAはIntel株を1株23.28ドルで50億ドル(日本円換算で約7400億円)分を取得する。

今回の製品には、コンシューマー向けゲーミングPC市場向けに、Intelのx86 CPUとNVIDIAのRTX GPUチップレットを密結合した「Intel x86 RTX SoC」が含まれる。また、NVIDIAはインテルに対し、自社のAI製品向けにカスタムx86データセンターCPUの製造を委託する計画だ。

さらに、NVIDIAはインテルの普通株を1株23.28ドルで50億ドル分取得することで、インテル株の約5%を保有することになる(インテル株は発表前の時間外取引で33%上昇した)。米政府も最近、インテルに100億ドルを投資し、9.9%の株式を取得している。SoftBankも20億ドルを出資した。これらの資金は、インテルがTSMCに対抗するための巨額投資を維持するうえで重要だ。

NVIDIAによると、両社のパートナーシップは初期段階にあり、製品のリリース時期や仕様は後日発表される予定だ。新しいプロセッサの開発には通常長いリードタイムが必要なため、製品化まで少なくとも1年以上は要するとみられる。

共同開発製品について複数世代のロードマップを策定

NVIDIAは、共同開発製品について複数世代にわたるロードマップを策定しており、x86エコシステムへのコミットメントを示しているようだ。

しかし、同社はArmベースの「GB10 Grace Blackwell」プロセッサやデータセンター向け「Grace CPU」、次世代「Vera CPU」など、既存のロードマップやアーキテクチャへの取り組みも継続する方針だ。今回のインテルとの協業は、既存計画に追加される形になる。

製造については、NVIDIAがインテルのファウンドリを利用するかどうかは未定。インテルは一部製品でTSMCを利用しているが、高性能製品の大半を自社工場に戻す方針を掲げている。実際、インテルの現行データセンタープロセッサ「Granite Rapids」はIntel 3ノードを採用し、次世代「Clearwater Forest Xeon」はインテルの18Aプロセスを使用する予定だ。

そのため、NVIDIA向けカスタムx86シリコンの一部はインテルのプロセスで製造される可能性が高い。一方で、インテルはクライアント向けx86プロセッサの多くをTSMCで製造しており、RTX GPUチップレットを含む製品の製造先は正式発表を待つ必要がありそうだ。

NVIDIAは2022年からインテルのファウンドリ利用を検討しており、試作チップを製造した実績もある。さらに、米国防総省のRAMP-Cプロジェクトでインテルと協力し、同プロジェクトではNVIDIAがインテルの18Aプロセスでチップを製造している。

これまで両社は一部市場で激しい競争を繰り広げてきたが、クライアントからデータセンターまで、ハードウェアとソフトウェアの相互運用性を確保するために協力してきたという経緯もある。

従来はPCIeインターフェースでIntel CPUとNVIDIA GPUを接続していたが、新たなパートナーシップでは、CPUとGPU間の通信にNVLinkを採用し、PCIeの14倍の帯域幅と低レイテンシを実現することで、GPUと組み合わせた際に高いレベルの性能を引き出せる戦略的優位性を得ることになる模様だ。

データセンター向けx86 CPUとPCゲーミング市場向け「Intel x86 RTX SoC」

インテルはNVIDIA向けにカスタムx86データセンターCPUを製造し、NVIDIAはこれを自社ブランドで販売。詳細は不明だが、NVLinkを採用することから、NVIDIAの新技術「NVLink Fusion」に対応し、GPUとの高速通信を実現する可能性があるようだ。

インテルは過去にカスタムのXeonを提供してきたが、近年はAMDの攻勢でシェアを失っており、今回の協業はインテルにとっても重要な意味を持つ。

一方、PC市場向けのIntel x86 RTX SoCは、x86 CPUチップレットとNVIDIA RTX GPUチップレットをNVLinkで密結合した構成となる。外観は標準的なCPUに近いが、CPUとGPUを1パッケージに統合することで、AMDのAPUに対抗する製品となる。

これらの統合により、外付けGPUなしで高いゲーミング性能を実現し、省電力性と省スペース性を確保。主なターゲットは薄型軽量ゲーミングノートや小型PCで、AMDのAPUと同様の市場を狙う。ただし、将来的には複数のラインアップを揃え、インテルの製品ラインに広がる可能性もあるという。

インテルは過去にAMDと似た取り組みを行っており、2017年には「Kaby Lake-G」を投入。同製品はIntel CPUとAMD Radeon GPUを同一パッケージに収めていたが、GPUとの接続はPCIeで、専用メモリをGPU専用に搭載していた。今回のNVIDIA/インテル製品は、NVLinkで接続し、CPUとGPUが同一メモリプールにアクセスできるUMA構成を採用する。

Kaby Lake-Gは2019年に打ち切られ、ドライバサポートの問題も発生したが、今回はインテルとNVIDIAがそれぞれのドライバを担当する。コンシューマー向けプロセッサの製造と販売はインテルが担う。Intelの新x86 RTX CPUは、AMDのAPUと直接競合する。インテルはノートPC向けCPUで約79%のシェアを持ち、NVIDIAはゲーミングGPUで92%を占めるため、AMDにとっては強力な競争相手となる。

なお、一連の内容は両社のプレスリリースと9月18日付のTom's Hardwareの報道を引用している。