MIXIはこのほど、エンジニア・デザイナー向けのカジュアルなミートアップイベント「MIXI MEETUP!ーTECH & DESIGN DAYー」を開催した。本稿では同社の開発・デザイン・セキュリティ部門をそれぞれ率いる経営層が登壇した基調講演より、AIの登場によって変化する仕事と未来の職業についてレポートする。
基調講演のステージに登場したのは、CTO 開発本部長の吉野純平氏、CDO デザイン本部長の横山義之氏、CISO セキュリティ室長の亀山直生氏の3人。デザイン本部 ブランドデザイン室 室長の安井聡史氏が聞き手を務めた。
MIXIにおける生成AI利用の基準は?
MIXIにおける2023年4月以降のAI活用は大きく3つのフェーズに分けられる。まずは2023年にChatGPT Plus利用の補助から開始し、同年9月にGitHub Copilotの利用がスタート。この第1フェーズは社内各所で手探りでのAI活用が始まった時期だという。
2024年4月以降の第2フェーズでは、開発本部の中に相談窓口となるAI DXを設立し、社内のAI活用全体の整理を開始した。6月には生成AI利用ガイドラインを全面改訂した。
2024年12月以降は第3フェーズに位置付けられ、AIイノベーション・戦略委員会(AI委員会)が発足。2025年2月にGemini for Google Workspace、3月にNotebookLMをそれぞれ利用を開始、4月にはChatGPT Enterpriseを全社導入した。これらの取り組みに付随して、各現場での勉強会も実施しているという。
デザイン部門を担当する横山氏はAIツール選定の基準について「AIによる生成の品質」と、「AIが何を学習しているのか / 学習しないのか」の2点にあると説明した。また、ツールへの課金の基準は「セキュアになること」「機能が充実すること」「早く機能を試せること」の3点とのことだ。
MIXIが目指す、これからのAI活用の方向性
亀山氏はセキュリティ領域における今後のAI活用について、システム台帳を用いたツールの管理やリスク分析を継続するとともに、AI特有のリスクにも注視する方針であると説明した。
例えばプロンプトインジェクションなどが、AI特有のリスクに該当する。プロンプトインジェクションとは、生成AIに悪意のあるプロンプトを入力することで、意図的に誤作動や不適切な情報を出力させる攻撃手法だ。
吉野氏は今後の開発におけるAI活用について、「AIの登場によって世の中のものづくりが加速する。その際に大切なのは早いサイクルで開発を進めること。それから、UX(User Experience:ユーザー体験)やブランド、安心感などが参入障壁となるはず。より良いものを早く開発するためにAIを活用していく」と説明した。
これに対し横山氏は、「従来のデザインは、ラフを作ってワイヤーフレームを作り、複数人がディスカッションしながら少しずつ目線を合わせて作業を進めてきた。一方で、AIは最初から完成されたように見えるアウトプットを出力できる。これでは人間の方が目線を合わせる段階に至るの時間がないので、人間の感覚がボトルネックになるのではないか」と、AI活用の加速に対する不安を訴えた。
他方で、生成AIが多くのアウトプットを迅速に出力できる特徴を挙げて、「デザイナーはAIの方がうまい作業を手放した方がいい。たくさんのデザインの中から、そのブランドらしいデザインを選ぶのは人間が得意だと思うので、AIを活用しながらデザイナーの新たな活路を見つけたい」とも語っていた。
AIにより変化するこれからの仕事、生き残る人の特徴とは
続いて、AIの登場によってデザイナーの仕事がどのように変化するのかを聞かれた横山氏は、「デザインによる明確な付加価値はどんどんなくなっていく。そのデザイナーやディレクターにしか出せない価値が重要になるはず」と回答した。
同様に開発部門における仕事の変化について、吉野氏は「ブルドーザーのように周囲を巻き込みながら、方向性を示して仕事を進められる人は生き残れるだろう」とコメントしていた。
亀山氏の見立てによると、今後は単純なシステムオペレーションなどはAIにより代替され得る業務だという。また、AIを使えるものの思考のプロセスやアウトプットの意味を説明できない場合も、仕事を失う要因となり得るそうだ。
反対に、これからも残ると考えられる仕事について「多角的な視点で物事をとらえ、目標に対して高い視座でオペレーションを組み立てられて実行できる人は、今後も重宝される」とコメントした。




