AI時代の測定課題に対応したオシロスコープが登場
テクトロニクスは9月16日(米国時間)、AI時代の電子機器開発ニーズに対応することを目的に開発されたハイエンドオシロスコープ「7シリーズDPO(デジタル・フォスファ・オシロスコープ)」を発表した。
7シリーズについて、同社日本法人の代表取締役である瀬賀幸一氏は、「オシロスコープの概念を変えるような画期的な製品」と説明する。また、そうした製品の開発に至った背景には、さまざまな電子機器のデジタル化および電子化の進展がある。特に、AIデータセンターにおける消費電力の増大は、今後、1ラックあたり1MWに達するとも言われており、AIデータセンター全体で省電力化が求められる状況となっている。データのやり取りそのものについても、データをなるべく移動させずに処理を行うことはもとより、移動させる際にも高速化しつつ、信号そのものは多値変調ながら小さい振幅とするといったことが求められることとなるが、その際に高い対ノイズ性能を持った計測器でなければ、信号なのかノイズなのかの見極めが難しいという状況となってきているとする。
また、信号の高速化に伴い、信号品質やパワーインテグリティにも性能が求められるようになり、その正確な測定のためには高い垂直分解能やサンプリングレートが求められることとなるともする。
さらに、ロジック半導体やメモリ、受動部品などが搭載される基板についても、AIへの対応という高性能化・複雑化が求められながらもシステムサイズの制約などから小型化も同時に求められるようになり、測定ポイントをどのように確保するか。従来、そうした測定点移動はシミュレーションが活用されてきたが、外部のシミュレーションを用いる場合は複雑な構成となり、結果を出すまで時間がかかるという課題があったともする。
そして、こうした複雑なシステムをいかに効率よく計測するかという問題もあったとする。従来のオシロスコープでは、取得した信号のデバッグを機体内部で行おうとすると、処理性能の問題から解析中は信号を取り込めなず、計測が進まないという課題があったほか、長時間測定を行いたいという際に重要となる自動計測についても、エンジニアにとって使いやすい作りにする必要が生じているという。
測定しながら10GbイーサとHSIでPCにデータを高速転送が可能
こうした課題解決を目指して開発された同シリーズの主なポイントは、以下の通り。
- 低ノイズ:≦1.18mVrms @ 25GHz
- 10ビットADC、有効ビット(ENOB)≧6.5ビット@25GHz
- 4チャンネルすべてで最大サンプルレート125GS/s
- 周波数帯域:8GHz/10GHz/13GHz/16GHz/20GHz/25GHz(ユーザーアップグレード可能)
- 10GbイーサネットLAN SFP+ポートと高速インタフェース(HSI)フレームワークによるPCとのデータ転送の高速化


7シリーズの特長と主な仕様。ENOBについては≧6.8ビット@25GHz(125GSps)と記載されているが、データシート上には6.5ビットと記載されているため、本文ではそちらを優先している(8GHzで7.5ビットについてはどちらの表記も同じであった)
特に、SFP+ポートとHSIを活用したPCへの高速転送を実現したことで、従来のDPO70000SXシリーズと比べて最大5倍の測定スループットを実現したとする。また、この高速転送が可能になったことで、オシロスコープ側は測定を行いつつ、PCにデータを送信し、PC側で解析を行うといったことも可能となった。
AMDのCPU+NVIDIAのGPU+カスタムASICで高性能を実現
この高速かつ高精度な測定を実現できたのはハードウェアの進化がある。まずCPUにはAMD EPYC Embedded 3351 (最大動作周波数3GHz、12コア)を採用したほか、DRAM容量も96GBを搭載しており、この大容量DRAMに波形データを蓄えつつ、PCに送ることで、オシロスコープ上での処理時間による稼働停止が生じることなく、高速に測定することを可能としたとする。
また、GPUとしてNVIDIA T1000も採用。CUDAコアを採用しているため、AI処理も可能だが、発売時点では、波形の表示処理といった活用が中心としている。ただし、同社は3か月に1回の頻度でファームウェアのアップデートを行っており、今後、T1000のAI処理性能を活用したAIソフトウェアなどが実装される可能性はある模様のほか、ユーザー側でAIベースのソフトを活用して計測アルゴリズムを作ると言ったことも可能になるとしている。
このほか、測定関連についても、新開発のプリアンプ「TEK85」および、その後段にも新開発となる10ビットA/Dコンバータ(ADC)「TEK79」をそれぞれ2つずつ搭載、その後段のFPGAとつなげることで、10ビット分解能ながら125GSpsの測定を実現したとする。
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波形処理の基板。コネクタから低ノイズのプリアンプ「TEK85」がつながり、それを経て10ビットADC「TEK79」にデータが送られ、その後、FPGAで処理が行われる(FPGAについてはデータシートにも記載がないが、パッケージの特徴からするとAltera/IntelのStratix 10ではないかと思われる) (出所:テクトロニクス)
瀬賀氏は「従来のオシロスコープの進化というと周波数やビット数の向上であった。7シリーズは、それに加えて、エンジニアが抱える課題や悩みを解決するべく、顧客からの声を取り入れて開発されたもの。AIの活用が幅広い分野で進む現在、次世代のスタンダードになると思っている」とその性能と使い勝手に自信をのぞかせる。
なお、7シリーズの第1弾となる「DPO714AX」(周波数8GHz/10GHz/13GHz/16GHz/20GHz/25GHzの6モデルを用意)については、すでに受注を開始しており、9月後半より出荷を開始する予定だという。参考価格は2660万円~としている。
7 Series DPO Highlights




