京都大学(京大)と岐阜大学の両者は9月5日、フィリピンで1962年から続く世界最長の長期連用水稲栽培試験のデータにAIを適用し、1968年から2017年までの50年間、年間三期作の計150作にわたる連続栽培データを解析した結果、水稲収量を持続させる要因として、窒素施肥の管理と日射量が鍵である一方、その効果は作期ごとに大きく異なることを明らかにしたと共同で発表した。
加えて、乾季作では生殖成長期・登熟期の夜間気温、前期雨季作では栄養成長期の気温、後期雨季作では病害リスクや同一品種の連続作付けがそれぞれ収量変動に大きく寄与していたこと、また、1970~1980年代に収量が低下した際は、窒素不足に加え、夜間の気温上昇も原因だったことが新たに判明したことも併せて発表された。
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50年間、150作にわたる連続栽培データをAIに学習させ、収量変動の要因を抽出。日射量や窒素施肥量が共通要因として特定された一方で、作期特有の要因も存在することが解明された(出所:岐阜大プレスリリースPDF)
同成果は、京大大学院 農学研究科の桂圭佑教授、岐阜大 応用生物科学部の山口友亮助教らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、農業や農作物を扱う学術誌「Field Crops Research」に掲載された。
50年のデータをXAIが学習 - 新たな収量変動要因を解明
ここのところ、備蓄米の放出により若干価格は下がったものの、日本では生産量の問題でコメが高騰して大きな社会問題となったままだ。これは日本に限った話ではなく、コメはアジア圏の主食であることから、人口増加と気候変動が進行する中、その安定生産が喫緊の課題となっている。
そうした中、フィリピンの国際稲研究所においては1962年から現在まで、三期作のイネを多様な肥培管理で栽培する長期連続栽培試験が実施されている。これは、作物生産の持続性を検証する貴重な圃場試験とのこと。なお、東南アジアでコメの二期作や三期作が可能なのは、国際稲研究所が品種改良によって生育期間の短い品種を開発したことによるものだという。
しかし、50年以上に及ぶ大規模なデータを従来の解析手法だけで完全に活用し、複雑な気候・施肥・品種の相互作用を解明するには限界があった。そこで研究チームは今回、AI分野における最新手法である「説明可能なAI」に着目したとする。
“XAI”とも呼ばれる説明可能なAIは、AIが出力した結果について、その根拠をユーザーが理解できる形で説明する技術や手法である。AIは、なぜそのような結果を出力したのかが不明なブラックボックスとなることが問題視されて久しい。説明可能なAIは、この問題の解決を目指した技術だ。
今回の研究では、気温や日射量といった気象要因に加え、窒素施肥量、品種交代の頻度、病害の発生リスクなど、さまざまな要素と収量の関係が、全データと各作期(乾季作・前期雨季作・後期雨季作)に分けて解析が行われた。その結果、窒素施肥や品種更新、日射量が収量維持に重要であること、そして作期によって収量を左右する要因が異なること、さらに1970~1980年代に収量が低下した際には、窒素不足に加え、夜間の高温が隠れた要因だったことなどが解明された。これにより、従来の統計手法では見えなかった長期的かつ複雑な要因が初めて整理されたとした。
今回の研究結果から、乾季作には高温耐性品種の育成、雨季作には高湿度・低日射耐性品種の開発、頻繁な品種更新の必要性が示唆された。研究チームはこれらの知見について、アジア全域の灌漑稲作地帯での持続的生産に貢献するものとしており、今後はこの成果を気候変動下での地域別適応戦略の設計に応用する見通しを示している。