東京大学(東大)は9月2日、NASA(米国航空宇宙局) General Coordinates Network(GCN)と、東大 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設のスーパーカミオカンデ研究チームが、天の川銀河近傍で起こる超新星爆発から放出されるニュートリノを捉えた際に発信する「超新星アラート」の方式を刷新し、より即時配信できる形式で提供を開始したことを発表した。

“超新星ニュートリノ”の即時確認を可能に

超新星爆発は、白色矮星が伴星からガスを吸い込み、質量が限界を超えて発生する「Ia型」(熱核暴走型)と、太陽質量の8倍以上の大質量星が生涯の最期に起こす重力崩壊型(Ib型、Ic型、II型)の2種類に大別される。重力崩壊型では、大量のニュートリノが放出されることが特徴だ。

そして、ニュートリノは光よりも先に地球に到達する。これは、ニュートリノが物質とほぼ相互作用しないため、星の中心からほぼ光速で飛び出すためだ。一方、光を生み出す衝撃波は星の外層を光速の約1/30と、ニュートリノよりゆっくりと進む。この衝撃波が表面に到達することで、はじめて光が放たれるのである。つまり、超新星ニュートリノを捉えたら即座に光学望遠鏡をその飛来方向に向けることで、超新星爆発の最初の光を観測できる可能性がある。

さらにニュートリノは地球を貫通するため、たとえば日本の光学望遠鏡では観測できない南天側からのものであっても、スーパーカミオカンデなら検出可能だ。この特徴から、スーパーカミオカンデは超新星アラートを発信し、世界中の望遠鏡に緊急観測を促すことができるのである。

実は、これまでもスーパーカミオカンデからの超新星アラートは行われていた。しかしこれまでの「GCN Classic」形式では、世界中の望遠鏡に情報が発信されるまでに1分ほどの時間を要していた。それに対し、今回からはより柔軟で標準的な「JSON」形式が追加された。これにより、インターネット上でデータを自動的に処理するストリーミング配信の基盤システム「Kafka」への直接通知が可能となり、即時配信が実現した。

  • 新しくなったスーパーカミオカンデの超新星アラートの配信の概要イメージ

    今回新しくなったスーパーカミオカンデの超新星アラートの配信の概要イメージ(出所:東大 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設Webサイト)

1分ほどの遅延は許容できると思われがちだが、いつどこで起こるかわからない超新星爆発のような突発現象ではそうではない。ニュートリノ到達から超新星が輝き出すまでの時間に余裕はなく、わずか1分という時間が、爆発の最初の光を観測できるかどうかの明暗を分ける可能性がある。これはまさに“秒”の戦いであり、今回の即時配信が可能になったことの意義は極めて大きい。

なお今回の新しい通知では、従来の超新星ニュートリノ検出時刻、事象数、超新星推定方向などの情報に加え、以下のデータも追加され、それらのより詳細な情報により、アラートを受け取った各天文台の研究者はより迅速な判断が可能となる。

  • スーパーカミオカンデで検出された逆ベータ崩壊(IBD)反応の事象数
  • 使用された解析方法の情報
  • データ全体を使用したか、速報のための一部だけのデータを使用したか

今回の新たな超新星アラートは、世界中の望遠鏡で、研究者が迅速に追観測を開始できるよう設計されている。また、実際の超新星爆発に備え、毎月定期的なテストアラートも配信する予定だ。この取り組みにより、観測ネットワークがさらに強化され、可視光だけでなく、X線やガンマ線など幅広い波長での追観測が期待される。スーパーカミオカンデによる新たな超新星アラートは、世界的な連携による超新星爆発の「マルチメッセンジャー天文学」実現において、極めて重要な役割を担うという。

天の川銀河では、超新星爆発は50年から100年に1回の頻度で起きると見積もられている。しかし、地球から観測された天の川銀河内の超新星爆発は、西暦1604年の「SN 1604」(通称「ケプラーの超新星」)以降、400年以上も観測例がない。400年ぶりに天の川銀河内で発生した超新星爆発の速報が配信され、その最初の光の観測が実現されることを期待したい。