街中には道路を走行するバッテリー駆動の車両が増え続けています。家庭では、ハンディタイプの電動工具から芝刈り機まで、あらゆる電動機器がコードレスになっており、建設現場では、ハンマードリル、インパクトレンチ、丸鋸、ネイルガンなどの工具がバッテリー電源で動作します。倉庫では、フォークリフト、パレットトラック、無人搬送車といったマテリアルハンドリング機器のすべてにおいて、バッテリー性能の向上が活かされています。
バッテリー駆動機器の普及が進む中、その利便性を確保するには急速充電が不可欠です。本稿では、効率的なバッテリー充電システムの設計時に考慮すべき基準を解説し、主要なトポロジーを紹介するとともに、オンセミのパワー半導体を用いて高性能ソリューションをどのように実現するかを説明したいと思います。
バッテリー充電システム
バッテリー充電システムは、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など、さまざまな種類の電池に対応しており、最近のバッテリー駆動機器のほとんどが12Vから120Vのリチウムイオン電池またはリン酸鉄リチウム電池を使用しています。
バッテリー充電器は、アプリケーションの要件と動作環境に合わせて設計する必要があります。ハンディタイプの電動工具は小型・軽量で、強制冷却なしで動作できなければなりません。このような小型・高効率充電器に要求される高いエネルギー密度を実現するには、電力損失の低減とヒートシンクの小型化が必要であり、また急速充電の実現には高周波充電器が不可欠です。
産業用アプリケーションでは、充電器は堅牢で、過酷な屋内および屋外の環境に耐えることができ、AC 120~277VあるいはAC 480V電源からの給電が必要になる場合もあります。
したがって設計者は、エンドアプリケーションに最適なトポロジーを慎重に選定し、求められる価格性能比を達成するために、コンポーネントの選定を最適化する必要があります。
バッテリー充電トポロジー
図1に代表的なバッテリー充電システムのブロック図を示します。フロントエンドでは、主電源からの入力電圧がフィルターされた後、力率補正(PFC)回路でDC電圧に変換されます。システムの第2ステージは、定電圧および定電流制御を備えたDC-DC変換で構成され、必要な充電出力を供給します。
多くの設計では、さまざまなバッテリー電圧および電流容量に対応するために、マイクロコントローラーを使用して充電器がプログラムされます。
アプリケーションに最適なトポロジーの選択
次に、これらのトポロジーのいくつかを取り上げ、さまざまなバッテリー駆動アプリケーションに対する適合性について考察します。
1. PFCトポロジー
連続導通モード昇圧トポロジー(図2)は、最もシンプルで低コストのPFCトポロジーであり、入力EMIフィルター、ブリッジ整流器、昇圧インダクター、昇圧FET、昇圧ダイオードで構成されています。
オンセミのNCP1654やNCP1655 CCM PFCコントローラーなどの固定周波数平均モードコントローラーを使用することで、より高いPFCと低い全高調波歪み(THD)レベルを達成できます。これらのデバイスは、入力電源暴走クランプ回路など、いくつかの安全機能を統合しながら、PFCの実装を簡素化し、外付け部品点数を最小限に抑えることができます。
より高電力のアプリケーションには、オンセミのFAN9672およびFAN9673 PFCコントローラーが選択肢となります。SiCは、低いスイッチング損失や高い動作周波数など、充電アプリケーションに対して重要な利点をもたらします。したがって、PFC設計にはSiC昇圧ダイオードが推奨されます。2KW~6.6KWの高電力アプリケーションでは、入力ブリッジの損失が大きくなりますが、ダイオードをSi MOSFETやSiC MOSFETなどのアクティブスイッチに置き換えることで、それを低減できます。
その他の一般的なトポロジーには、ブリッジ整流器を不要にして損失を低減するセミブリッジレスPFCやトーテムポールPFC(TPFC)があります。TPFC(図3)は、EMIフィルター、昇圧インダクター、高周波ハーフブリッジ、低周波ハーフブリッジ、2チャネルゲートドライバー、および固定周波数TPFCコントローラーで構成されています。
TPFC回路の高周波レグでは、パワースイッチに組み込まれたダイオードの逆回復時間を短くする必要があり、現時点ではSiCとGaNのどちらのパワースイッチもこの用途に適しています。オンセミは、600W~1.2KWの電力レベルにはゲートドライバーを集積したGaNを、1.5KW~6.6KWのアプリケーションにはSiC FETを推奨しています。SiCダイオードを集積したIGBTは、より高い周波数の20~40KHzアプリケーションに使用できます。回路の低周波レグでは、低RDS(on)のスーパージャンクションMOSFETまたは低VCE(SAT)のIGBTを使用できます。より高電力(4.0KW~6.6KW)の場合、設計者はインターリーブTPFCトポロジーを検討する必要があります。
オンセミの650V EliteSiC MOSFETは、TPFC設計の高周波レグ向けにさまざまな選択肢を提供しています。3.0kWのアプリケーションにはNTH4L032N65M3Sを、6.6kWまでのアプリケーションの場合はNTH4L015N65M2およびNTH4L023N065M3Sを用意して対応しています。またTPFC回路の低周波レグには、NTHL017N60S5も提供しています。
絶縁型DC-DCコンバーター
絶縁型DC-DC変換には、アプリケーションの電力レベルに応じて、幅広いトポロジーの適用が可能です。
二次側に同期ブリッジ整流器を備えたハーフブリッジLLCトポロジー(図4)は、600W~3.0KWの充電器アプリケーションに最適です。電力レベルに応じて、GaNパワースイッチ(NCP58921)(600W~1.0KW)またはSiC MOSFET(2KWおよび3.0KW)のいずれかを使用できます。4.0KW~6.6KWのより高い電力レベルの場合、設計者はフルブリッジLLC(図5)またはインターリーブLLCトポロジーのいずれかを検討する必要があります。
設計者は、一次側ハーフブリッジにNTBL032N65M3SまたはNTBL023N065M3S EliteSiC MOSFETを、二次側同期整流器にはNTBL0D8N08XやNTBL4D0N15MCといった80-150V PowerTrench MOSFETを選択できます。
乗用芝刈り機、フォークリフト、電動バイクなどのアプリケーションでは、6.6KW~11.0KWの電力レベルにおいて、デュアルアクティブブリッジ(DAB)充電ソリューションが必要になる場合があります。デュアルアクティブブリッジトポロジー(図6)は、6.0KW~30.0KWのアプリケーションに適しており、複数の6.0KW充電器を並列に接続して12.0KW~30KWのアプリケーションをサポートできます。
アプリケーションの具体的な要件に応じて、デュアルアクティブブリッジトポロジーのバリエーションを採用することができます。単相AC入力電圧が120~347Vの産業用充電器には、シングルステージのデュアルアクティブブリッジトポロジー(図7)が適している一方、4.0KW~11.0KWの電力レベルでは、一次側トポロジーに双方向ACスイッチ、二次側にフルブリッジを備えた三相デュアルアクティブブリッジが必要になります。
オンセミのポートフォリオには、双方向スイッチアプリケーションに適した650-750V Elite SiC MOSFETおよびiGaN HEMTデバイスが含まれています。一次側の双方向スイッチングには、NTBL032N65M3SおよびNTBL023N65M3S EliteSiC MOSFETが推奨されるほか、iGaNテクノロジーも適しています。
トポロジーの最適化とコンポーネントの選択
電動工具や機器の利便性は、バッテリー充電の速度と効率によって大きく左右されます。バッテリー充電ソリューションの設計者は、必要な電力レベルと動作電圧を考慮し、最適なトポロジーを慎重に選定しなければなりません。さらに、アプリケーションの性能要件を満たすコンポーネントを設計に使用する必要があります。
オンセミの製品ポートフォリオは、ダイオード、MOSFET、IGBTなどのシリコンベースの素子を含む、低、中、高電圧のパワーディスクリートデバイスを幅広く取り揃えています。SiCベースのスイッチングデバイスは、より高速なスイッチング速度と優れた低損失動作を可能にし、性能を損なうことなく電力密度を向上させるため、一般的な選択肢となっています。
本記事はonsemiが「Bodo’s Power Systems」(2025年6月号)に寄稿した記事「Mastering Topology Selection: Optimizing Battery-Powered Equipment Design」を翻訳・改編したものとなります







