京都大学(京大)は8月22日、水素やヘリウム、炭素、酸素などの外層から中層までの大半を失い、鉄の中心核のすぐ上にあるシリコンや硫黄に富んだ層がむき出しになったと考えられる大質量星が爆発した超新星を世界で初めて発見したと発表した。

同成果は、日本からは京大 基礎物理学研究所の武井勇樹特定研究員、京大 理学研究科の前田啓一教授らが参加する、約50名の研究者からなる国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

  • 超新星SN 2021yfjを起こした大質量星の爆発直前の想像図

    超新星SN 2021yfjを起こした大質量星の爆発直前の想像図。外層の大部分が放出され、シリコンや硫黄を含む中心部がむき出しになった様子が描かれている。(c) W. M. Keck Observatory / Adam Makarenko(出所:京大Webサイト)

多くの研究者も驚く激しい質量放出を観測

恒星は、その生涯の大部分で水素を燃料とする核融合を行い、中心部にヘリウムを生成する。太陽程度の小型星では、水素が乏しくなった終盤にヘリウムの核融合が始まり、炭素や酸素までが合成される。一方、太陽質量の8倍以上の大質量星では、さらに重い元素の合成が進む。酸素にヘリウム4原子核が融合してネオンが合成され、その後も新たに生成された元素にヘリウム4原子核が融合することで、原子番号が偶数の元素が次々と作られていく。この過程で最終的に核融合が停止する鉄の中心核ができあがり、その外側をシリコンや硫黄の層が直接取り囲む構造となる。

こうして恒星の内部は、中心に向かうほど重い元素が存在する玉ねぎ状の層構造が形成される(なお超新星爆発は、鉄の核が重力崩壊することで発生する)。しかしこの玉ねぎ状層構造に関して、これまで観測で確かめられていたのは、大規模な「恒星風」で水素などの軽い元素の外層を自ら吹き飛ばした超新星爆発直前の段階にある恒星で、ヘリウム、炭素、酸素の層までであった。これより深い層は未知の領域であり、観測で中心部近くを直接確認できた例はなかったのである。

そうした中で2021年9月7日、約22億光年先お銀河で特別な超新星「SN 2021yfj」が観測されたことで、大きく状況が変化することになる。そして研究チームは今回、この超新星に含まれる元素の種類などの情報を得るため、分光観測を実施し、そのスペクトルを詳しく分析したという。

これまで、外層が剥がされた大質量星が起こした超新星爆発では、ヘリウム、炭素、酸素などが観測されていた。しかし、SN 2021yfjは異なり、原子番号14のシリコンや同16の硫黄といったより重い元素が放出する強い光が含まれていることが判明した。これらの重元素の発見により、大質量星の玉ねぎ状層構造に関する予測がより深くまで正しいことが示された。

超新星爆発では、恒星が爆発直前に放出した「星周物質」の痕跡が、強い光に照らされた爆発直後のスペクトルに観測されることがある。SN 2021yfjの爆発直後のスペクトルからは、シリコンや硫黄に加え、原子番号18のアルゴンなどの重元素が大量に存在することも明らかにされた。これは、超新星爆発を起こした大質量星が、その生涯の最後に鉄の核を取り囲むシリコン・硫黄を含んだ層を形成しつつ、激しい質量放出によりその中心核がむき出しにされていたことを意味するとした。

次に、武井特定研究員らが開発したオープンソースコード「CHIPS」を用い、SN 2021yfjのシミュレーションが行われた。その結果、爆発前に剥がされた外層が形成した星周物質と、超新星爆発で放出された物質の衝突により、SN 2021yfjから放出される光の時間的な変化を再現することに成功。この成果は、大質量星が爆発直前に外層のほぼすべてを失ったとするシナリオを、さらに裏付けるものとなった。

今回、大質量星の進化に伴う玉ねぎ状層構造は、より深部まで観測的に正しいことが確認された一方で、外層の大部分が剥がれ、中心部近くまでがむき出しになるほどの激しい質量放出は、研究者たちにとっても予想外の事象だったとする。その発生機構や過程は、今回の研究では解明できなかったとのこと。一般的な恒星風では、せいぜいヘリウム層までしか剥ぎ取れないと考えられており、より下層を剥がすための極端な仕組みを考える必要があるとしている。

中心部近くの層まで剥がされた大質量星による超新星は、短期間で暗くなるため、トランジェント探索での発見が困難だった。しかし、広視野と高感度を兼ね備え、宇宙の同一領域を毎日定期的に探索する計画が次々と始まっている。そのため、今後はSN 2021yfjと同タイプの超新星の発見報告が増加することが期待されるといい、これにより、爆発前の大質量星が中心部近くまでが剥き出しにされるような進化経路がどれくらい珍しいのか、そして、どのような物理過程で起こるのかといった謎が、統計的な視点から解明される可能性があるとしている。