国立天文台初の大型巡回企画展「ポケモン天文台」が11月から約3年にわたり、全国の博物館などで開催決定。国立天文台とポケモンの両者が8月7日に共同発表した。

  • (左から)記者会見に登壇した国立天文台の土居守天文台長、ほしぞらピカチュウ、ポケモンの宇都宮崇人COO、ポケモン天文台の展示内容などを説明した国立天文台の平松正顕講師

報道関係者向けの記者会見には、国立天文台の土居守天文台長、同・平松正顕講師、ポケモンの宇都宮崇人COOに加え、今回の企画展オリジナルのイメージキャラクターである「ほしぞらピカチュウ」も登場した。

  • 「ポケモン天文台」オリジナル衣装に身を包んだ「ほしぞらピカチュウ」。中世の学者のようなローブと、肩がけの小さな望遠鏡(単眼鏡)が特徴だ。開催される各博物館では、このぬいぐるみの発売が決定している。国立天文台の土居天文台長“推し”のポケモンだという

誰でも一度は「宇宙人っているの?」、「ブラックホールって吸い込まれたらどうなるの?」などと、宇宙にまつわる謎について考えたことがあるのではないだろうか。大雑把にいえば、天文学は、人類が数千年前からそうした謎を追究してきた学問である。日本では、若者の理科離れが叫ばれて久しいが、宇宙や天文は、今でも子どもから大人まで強い人気を誇る分野である。

そしてポケモンは、シリーズ初のゲームソフトが1996年に発売され、来年で30周年を迎える、日本だけでなく世界中で人気を誇るメガコンテンツだ。30代以下であれば一度はゲームを遊んだり、アニメを視聴したりしたことがあるだろう。自分ではゲームを遊んだりアニメを観たりしたことはなくても、自分の子どもが大好きだったという親世代も多いはず。中には、子どもたちが楽しんでいるのを見て、思わずゲームにハマってしまったという人も珍しくないようだ。

  • 「ポケモン天文台」ロゴ入りアート。ほしぞらピカチュウの上に浮いているのは、せいうんポケモン「コスモッグ」。国立天文台の平松講師は原始星の研究などをしている関係で、このコスモッグが“推し”だという
    (C)Pokémon.
    (C)Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.
    ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
    (出所:ポケモン天文台広報資料)

ポケモンは長い歴史の中で種類が増え続け、今では1,000種類以上も存在する。主人公のサトシとピカチュウ、そしてカスミやタケシといった仲間たちの冒険を描いた初期のアニメしか知らない世代にとっては、驚きの数だろう。

このポケモンたち、生態が謎に包まれているという設定のものも多い。つまり、天文学と同じくポケモンも謎が多く、両者は親和性が高い。同じく巡回企画展「ポケモン化石博物館」が海外進出を果たしたように、宇都宮COOは「ポケモンと科学は相性がいい」と述べる。今回の企画は、ポケモン側から国立天文台へと提案されたものだという。

ポケモン天文台のメインコンセプトは、「不思議な生き物ポケモンと不思議な宇宙の謎に迫る」というものだ。多様なポケモンの不思議な生態と照らし合わせながらパネルを用いることで、宇宙のさまざまな不思議を楽しく学べる内容になっている。宇宙に関するポケモンだけでなく、一見すると宇宙とは関係がなさそうなポケモンも含めて50種類以上が登場し、それぞれが天体や天文現象などを、子どもたちが興味を持てるようにやさしく説明する。

ポケモン天文台に登場する宇宙関連のポケモンには、ほしぞらピカチュウに次ぐ“準主役級”として、せいうんポケモン「コスモッグ」がいる。コスモッグは、はかないガス状の身体を持ち、大気中の塵を集めながらゆっくりと成長し、げんしせいポケモン「コスモウム」に進化する。そのコスモウムは、大気中の塵を激しく吸い込んで進化のエネルギーを作り出し、にちりんポケモン「ソルガレオ」もしくはがちりんポケモン「ルナアーラ」へと進化する。

これは、星が分子雲から原始星になり、主系列星へと進化する一生がモチーフとなっている(原始星が月に進化するのは、原始惑星系円盤から惑星や衛星などが生まれるイメージと思われる)。このように、コスモッグ、コスモウム、ソルガレオ、ルナアーラなどが、星の一生を紹介する。

  • 「ポケモン天文台」に登場するポケモンたち。左側の白いライオンのようなポケモンが「ソルガレオ」、上側の青いコウモリのようなポケモンが「ルナアーラ」。どちらもコスモッグが進化を重ねた最終形態だ
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    (出所:ポケモン天文台広報資料)

また、ポケモンの生態を用いた、宇宙の不思議に触れる体験展示も用意される予定だ。現在決定しているのは、磁力を持つポケモンであるレアコイルやジバコイルを持って、太陽の磁力(磁場)を体験するという内容である。

地球はN極とS極が1極ずつというシンプルな構造であり、方位磁針は大半の場所で北を指すのは周知の事実だ。しかし、太陽ではこの常識は通用しない。太陽はきわめて複雑な磁場構造を持つため、仮に太陽表面に立って方位磁針を使っても、北を指すことはほとんどない。子どもたちは、レアコイルやジバコイルを通して、身近な太陽の、地球にはない不思議さを学べるというわけだ。このように小学生やそれ以下の子どもたちが、ポケモンの世界へ冒険に出るように、宇宙への探究心を育む展示をめざしているとのこと。

展示構成は章立てとなっており、プロローグの「ポケモン天文台へようこそ」から始まって、「1章 天文台から宇宙へ」、「2章 身近な宇宙に迫る」、「3章 見えない宇宙を観る」、「4章 生命の星 地球」、「5章 未知なる謎に挑む」というプロローグ+全5章と、第3章と第4章の間にある「メテノトンネル」を含む全7つのエリアで構成される。10種類程度の伝説や幻のポケモン模型も展示される予定だ。

現在、ポケモン天文台の巡回会場として決定しているのは、神奈川県の相模原市立博物館、愛知県の豊橋市自然史博物館、長崎県の長崎歴史文化博物館の3館で、このうち相模原市立博物館は開催日程まで決まっている。また2026年の春から夏にかけて、東北地方での開催も予定されている。展示内容は基本的に同じだが、開催館によって一部変更となる可能性もあるとしている。

  • 2025年11月1日〜2026年1月12日
    相模原市立博物館(神奈川県)
  • 2026年秋
    豊橋市自然史博物館(愛知県)
  • 2026年冬
    長崎歴史文化博物館(長崎県)

開催はまだ先だが、ポケモンたちがどのような形で天文の世界を紹介してくれるのか、楽しみに待ちたい。

  • (左)ポケモンの展示パネルのイメージ。画像はてまねきポケモン「サマヨール」。大赤斑のような赤い目、身体全体の横縞模様などが木星に似ている。(右)宇宙に関する展示パネルのイメージ。画像は、サマヨールが似ている木星。パネルの解説は、日英2種類が用意される
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