Rapidus(ラピダス)は7月18日、北海道千歳市に位置する最先端半導体の開発・生産拠点「IIM-1」において、2nmノードのゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタの試作を開始し、動作を確認したことを発表した。

またラピダスは同日に千歳市内にて、取引先やパートナー企業などに向けてIIM-1立ち上げの進捗状況を報告するカスタマーイベントを開催。同イベントに併せて開催された記者会見では、ラピダスの東哲郎取締役会長や小池淳義代表取締役社長兼CEOらが登壇し、IIM-1にて製造され動作が確認された“第1号ウェハ”を公開した。

  • 記者会見の様子

    記者会見に登壇したラピダスの東哲郎代表取締役会長、小池淳義代表取締役社長兼CEO、北海道の鈴木直道知事、千歳市の横田隆一市長

  • 動作が確認された2nm GAAトランジスタの試作ウェハ

    今回公開された2nm GAAトランジスタの試作ウェハは「魂のロット」呼ばれているという

“異例の速度での立ち上げ”が進むIIM-1

世界最先端のロジック半導体の開発・製造を目指し2022年に設立されたラピダスは、設計からウェハ工程、3Dパッケージなどのサイクルタイムを短縮したサービスの開発および提供を目指している。同社は2023年9月より、最先端半導体の開発・製造拠点となるIIM-1(IIM:Innovative Integration for Manufacturing)の立ち上げに着手。同拠点では、すべての製造工程において枚葉プロセスを導入し、新たなファウンドリサービス「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)の構築を進めているという。

  • 「IIM-1」外観

    Rapidusの開発・製造拠点「IIM-1」(提供:Rapidus)

そんなIIM-1については、2024年12月にクリーンルームの環境が整ったことを受け、2nmプロセスのリソグラフィ工程を担う半導体製造装置として、量産にも対応したASML製のEUV露光装置を導入したことが発表されていた。また装置搬入から約3か月後の2025年4月には、同装置を用いたパターンの露光・現像に成功したことを明かしている。

ラピダスの東会長は、IIM-1の特徴として“立ち上げ速度”を挙げ、「異例のスピードでの製造ライン立ち上げが進んでいることに対して、世界中からの注目が日に日に高まっていると感じる」と語る。

また同社によれば、2025年6月までに、200台以上の最先端の枚葉式半導体製造装置が、新たな搬送システムにより接続されたとのこと。そして今般、2nm GAAトランジスタの試作を開始し、その動作が確認されたことが発表された。

ラピダスの小池社長兼CEOは、2nmノードのGAAトランジスタについて、IIM-1の着工から2年足らずで動作を確認するに至ったことについて「考えられない速度」と表現し、特に2024年12月25日に搬入を行ったASMLのEUV装置を3か月足らずで稼働させたことに「大きな価値がある」と説明する。また短期間での達成を後押しした要因については、「北海道や千歳市から多大な支援を受けたこともあるが、我々の社員が本気になって取り組んだことで実現できた、大きな価値のある成果だと考えている」と、社員への感謝を口にした。

  • ラピダスの小池淳義代表取締役社長兼CEO

    ラピダス 代表取締役社長兼CEOの小池淳義氏

なお同社は併行して、IIM-1の2nmプロセスに対応したPDK(Process Development Kit)の開発についても進捗を報告。今年度中に先行顧客向けにリリースし、顧客によるプロトタイピングを開始できる環境を整えるとしている。

また今後について小池社長兼CEOは、「歩留まりの改善をはじめこれから取り組んでいくべき課題は多くあるが、2027年を予定する量産開始を見据えて一歩ずつ着実に進歩を続けながら、量産や顧客への提供に向けた準備を進めていきたい」と語った。

  • 登壇者たちが「魂のウェハ」をのぞき込む場面も

    会見では登壇者たちが「魂のウェハ」をのぞき込む場面も見られた